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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】紅霧異編
12/65

Ep.12 蚊帳の外

 思いの外、フランは鋭かった。


 まあ、いつも静かな紅魔館から物音というか騒音というか爆発音というか、とりあえずにぎやかだったら誰でも変に思うか・・・。




 紅霧が幻想郷中に広がってから、俺は大慌てで支度をした。


 戦闘能力のない自分がうろついていては足手まといだ、というより、そもそも身が危険だ。

 皆は知らないところではあるが、実は八雲紫の刺客は博麗霊夢だけではない。霧雨魔理沙もだ。

 ・・・いや、正確には八雲紫の刺客ではないが。


 彼女たちがいかほどのものなのか、正確にはわからない。少なくとも俺は、結果を知ってしまっているが故、行く先を案じる必要はない。


 でも、あのわがままで、「プライド+カリスマ=私」という考えのレミリアがわざわざ俺にフランを頼んだのだ。

 たとえ、無駄だとわかっていても、せめて彼女の意思を尊重してフランドール・スカーレットを守る「ふりをする」ことが、無能の俺にできるただ唯一のことだと思った。




 上が騒がしくなって、少しするとフランがそわそわしだした。気づき始めたのだろう。


「なんか、上が騒がしいわね。お姉さまたち何かしてるのかしら?あなたはしらない?」


 さて、どう切り返したものか。



 ここで正直に話してしまえば、私も一緒に戦う!といって見事、部屋から飛び出してしまいそうな気がする。


 だとすると、逆に、嘘をついてしまうか?いや、それも中々にリスクがある。

 例えば、大掃除中だと言うとしよう。わりと勘の鋭いフランの事だ。多分すぐにばれて、逆効果だ。

 もし、うまく嘘をついてこの場を逃れられたとしても後々ばれて、殺される。・・・何てことは多分ないと信じたいが、俺とフランの関係が少なくとも悪くなるのは確実だ。


 どうしたものか?



 俺は気づいた。

 そういえば、このときのフランはスペルカードシステムを「知らない」のだった。


 もしかしたら、これが突破口かもしれない。だとするとー



「実は半年前から、こういうことがありましてー」


 正直に話した。


 半年前、八雲紫という人物から持ちかけられたゲームについて、今レミリアが何をしているかについて、そして、レミリアからフランを任されたことについて。


 フランが終始興味深そうに耳を傾けていたのは、少しばかり意外だった。


 一通り話し終えた後、フランは「やはり」質問をしてきた。


「・・・どうして、お姉さまは私にも手伝わせてくれなかったのかな?」


 悲しそうな目をしていた。


 姉思いのフランとしては、レミリアの敵は自分の敵であるのと同じだ。だとすれば、自他共に認める規格外の強さを行使して、霊夢たちをぶったおしたくなるのは当たり前だ。

 そういうことについては、この半年間で重々理解したつもりだ。


 しかし、ここでひきさがることはできない。


「フランお嬢様は、かつてレミリアお嬢様がこの幻想郷で権力争いをなさっていたことは、ご存知でしょうか?」

「うん、随分前だったけれど、そんなことがあったのは話に聞いてるわ。

それにあの時はお姉さまったら、ぼろぼろの格好で私の部屋に来て泣いてたものね。」

「・・・。」


 まさか、こんなところでレミリアのカリスマブレイクの話を聞けるとは思わなかった。


 でも、フランの心配そうな顔から、笑う気にはなれない。


「そうならなおさらでしょう。もし負けたとしても、フランお嬢様は傷つかないですし、八雲紫からの何らかの制裁も受けずにすみます。

 レミリア様は妹様の泣く姿は見たくないのでしょう。」

「私は・・・、それでも、頼って欲しかった。」


 うつむくフランはどんな顔をしているのだろう。

 もう、俺から言えることはない。



「・・・少し外に出てみませんか?」

「え?なんで?」



「ちょっとした気分転換でございます。」



 この気分転換というのはあながち嘘ではない。正確には、フランドールが近々このゲームに参加するための訓練といったところだろうか?

 今のレミリアのような戦いとしてのゲームではなく、純粋に遊びとしてのゲームを教えにいくのだ。

 霊夢たちとの関係づくりのために、いや、ゆくゆくはレミリアと遊ぶために。


 といっても俺が直々に教えるわけではない。そもそも、俺は戦う能力がない。



 だから、あいつらと、遊んでもらうのだ。

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