Ep.11 リベンジ・オブ・レミリア
やわらかな晴天の元、紅い館は物々しい雰囲気に包まれていた。
玉座に鎮座している当主レミリア・スカーレットはともに暮らしている者たちを前にして険しい顔になる。
「紅魔の友よ、私は今非常に機嫌が悪い。」
「半年前、八雲紫と約束したゲームを始める時が来た。」
いつも優しそうな美鈴でさえ、真面目な顔をしている。
「私は、ゲームには、負けたことがない。故にこの度も負けるつもりはない。」
ゲームには、と強調しているのは、かつて吸血鬼の権力争いにおいて結果八雲紫に鎮圧された異変のことを思い起こしているためだろう。
「負けるつもりはない。つまり、お前たちがやることはわかっているな?」
真紅の瞳で俺達を睨み付ける。
「「はい!」」
緊張と奮起混じりの返事だった。
「相手は博麗の小娘だ。全力で叩き潰せ。倒した後の始末は任せる。」
もう倒したつもりであるのだろうか?
いや、レミリアは必死なのだ。
かつて負けた相手からの刺客に対する、不安と焦り。彼女は意地っ張りで非常に高いプライドを誇示している。そのため、二度もそのプライドを傷つけられる訳にはいかない。
そう、これはリベンジマッチだ。
そのことをこの場にいる皆は理解している。だから、美鈴さえも真剣になるのだ。
「それと、あんたー。」
レミリアは俺の方をすがるように見つめる。
「フランを、私の妹を頼むわね。」
初めての「お願い」だった。
このゲームでは、死ぬことはない。でも、それでも、妹には怪我をさせたくないのだ。
それだけ彼女の妹への愛は格別だ。
「いよいよですね。」
集まりが終わりそれぞれが準備に入った後、美鈴に声をかけられた。
「どんな気持ちですか、美鈴さん?」
「紅魔館のプライドにかけて、負けられない!といいたいところですが・・・、正直、望み薄ではあると思います。」
「また、美鈴さんにしてはネガティブですね。」
「執事さんは知らないかもしれませんが、前来た八雲紫という妖怪に私たちは一度負けているんですよ、完膚なきまでにね。」
やはり、先程の推測は正しかったようだ。
「それに今回の相手である博麗の巫女というのは、噂によれば、人や妖怪も食らうバケモノと聞きます。」
哀れなり、博麗霊夢。とんでもない噂が流れているのだな。
「それは怖いですね。」
「怖いですよ。こっちも食べちゃうぞ!って気でいかないと本当に食べられます。」
「は、はあ・・・。」
やはり、美鈴も妖怪。そういうことを言うのだな。
優しいイメージの美鈴が、少しだけ遠くなっていったような心地がした。
さて、自分は自分の仕事をしないとな。
とりあえず、フランが退屈しないよう、本と紅茶とお菓子を用意して・・・。ああ、そうだ!しっかり地下室の施錠をしておこう。
ふと気がつくと、外に異様な紅い霧がかかっているのが見えた。
いよいよレミリアが動きだしたのだ。