焼かれる村
「な、んだ、これ?」
村が燃え、人が逃げ惑う気配が伝わってくる。強い魔物、人、燃える、血、叫び声、鳴き声。
なんだこれは?一体なんなんだ?何故こんなのが察知できる?
《マスター。現状報告、村が強い魔物に襲われています。そこに二人を感知しました。おそらく戦っているのではないかと。しかし、苦戦しているようです》
っ!
僕は何をしている!早く戻らないと!
ーーーメニュー!
僕は自分のスキルの名を呼び、
ーーーステータスをスピード重視で強化!割り振りは任せる!
今まで知らず知らずのうちに貯め続けたステータスポイントを振り分ける。
ーーー《了解しました。ステータスを強化します》
その瞬間身体が熱くなり、力がみなぎる。景色が線となって流れていく。
「ぐっ!」
木の枝が避けきれずに頬を掠る。
自分のスピードが急に速くなりすぎたため制御できない。それでも、身体中に傷跡をつくりながらも村に帰ってきた。いや、村があった場所に帰ってきた。
「うあああああ!」
「くっそ!エクスプロ…ぐはっ!」
「ダブルスラッシュ!効かない!?」
ほんの数時間前には頑丈そうな壁があり、畑が広がっていたところは、血に染まり、地面はえぐれ、燃えている。
「ウオオオオオオオオォォ」
元凶が見えた。身体は真っ黒で所々赤く染まっている大きな狼のような魔獣。それを見た瞬間僕は駆け出していた。
「死ね!」
腰からナイフを流れるように抜き、狼の目玉に突き刺す。
「グオオオ!?」
不意をつかれた狼は僕に気づかずに攻撃を受ける。
「ボルトオオォ!」
突き刺したナイフは特別製で、電気をよく通すように作った。電気がナイフから目玉に伝わり、脳を焼く。どんなに強力な生物でも脳が機能しなくなれば、死ぬだろう。
狼の魔獣は「グウ……」とだけ言い、倒れた。
「ルナ!親ーーー」
二人を探そうと思い、声を上げようとした瞬間身体が吹き飛ばされる。
「ぐっ、ガッ!あがぁ!」
地面をバウンドし、木にぶつかってようやく止まる。
「グルルルゥ…」
「は、はは」
そこには先ほど倒した狼よりも一回り大きな魔獣がいた。漆黒の体毛に4本の尻尾。紅く染まった鋭い瞳。 しかもなんだか怒っているようだ。家族だったのか?息子を殺されて怒っているとか。
はは、理不尽だろ。
「ぺっ」
血反吐を吐き出してなんとか立ち上がる。しかし、立っているのもやっとだ。
《思考速度加速》
引き伸ばされた思考の中で考える。スキルポイントをどうやって振り分けるかを。
どうする?剣術スキルを伸ばすか?いや、剣が保たない。なら、魔法方面?どの属性を伸ばす?そもそも魔法が当たるのか?効くのか?だったら身体強化系?この身体じゃ持たないし、攻撃方法がない。回復するのを優先するか?回復させてくれるはずがないだろ!じゃあ、デバフ?一番ダメだろ。相手に効くのかわからないし、効いたところで少しステータスを下げるくらいだ。倒しきれない。そもそも今スキルポイントはどのくらいある?
なんて考えている間にも尻尾が僕を貫こうと迫っていた。僕はそれに気づかずに考え続けた。考え続けてしまった。その結果がーーー
「ガ、ハハ。どうやら間に合ったようだな」
親父が僕の前に立っていた。腹を貫かれて…。