僕の妹がマジ天使
訓練を始めて一カ月が経った。
村の人達と仲良くなった。皆んな優しいし、悪い人はいなかった。ほとんどの人の名前は覚えた。
一番嬉しいのはルナが、だんだん懐いてくれた事だった。最初は急に兄弟ができてよそよそしかった。けど
やっぱり兄弟が欲しいのは本当だったみたいで割と早く懐いてくれた。今は本当の兄弟みたいだ。いや、本当の兄弟がどんなのかは知らないけども。
戦闘力はあまり成長した実感がない。一応短剣の扱い方や身体の動かし方は大体掴めたけど、未だに初心者に毛が生えた程度だと思う。この程度じゃゴブリンにすら負けるらしい。
あとは、文字魔法が早く書けるようになったくらいだ。
今日も朝から夕方まで特訓していたが、明らかに手加減されていた。
さらに、3カ月が経った。
辛い。二カ月前くらいからだんだん訓練が辛くなった。
最初は、体力作りの為にひたすら走らされた。『ステータスに変化がないなら意味がないんじゃ?』と言ったら、『体力はつかなくても、身体の効率の良い動かし方や呼吸を安定させるやり方とか学べるだろ』と言われた。
それでも、成長した実感がない。何もしていないんじゃないかと思ってしまう。
「はぁ」
訓練の合間。お昼ご飯休憩の最中、自室でため息をつく。
嫌んなっちゃうよも〜。
「はぁー」
今日も疲れた。少し、、、横になろう。
☆★☆★☆★☆★
「あっはっはっは」
誰かが笑っている。
「雑魚が調子に乗ってんじゃねえ!」
そう言いながら誰かが蹴ってくる。
「地球にいた頃から気に入らなかったんだよ!あいつと仲良くしやがって!」
あぁ、こいつは僕のクラスメイトだ。
「そうだ!カスのくせに!」
こいつも魔法をぶつけてくる。
痛い、やめてくれ。
「ははは、ざまぁ」
『あっはははは』
皆んなが嗤う。
僕が何をした。何もしていないじゃないか。僕のせいじゃない。何でこんな事するんだ。僕がーーー
「皆んな止めるんだ。酷いだろう」
誰だ?とにかく助けてくれたんだ。礼を言わないと。
「あ、ありが「君も悔しいと思わないのか。悔しかったら何かしようと思わないのか?」
僕が、、、何も、、してない?
「僕だって努力してる」
「フン」
それを彼は鼻で嗤い、、、
「みっともない嘘をつくんじゃない。努力しているのなら形になっているはずだろう」
違う。努力はしているんだ、頑張ってるんだ。なのに、なのに、、、
、、、これじゃあ何もしていないのと同じじゃないか。それなら、もう、、、
☆★☆★☆★☆★
「ーーーさん」
う、、、ん?さっきのは、、、夢か。
「兄さん」
いつの間にか寝ちゃってたのか。、、、やべ!?どれくらい寝てた?お昼休憩過ぎたか?
「兄さん!」
「うん?」
上半身だけ起こすとルナが僕を呼びかけてたみたいだ。あぁ、そりゃそうか。起きないと。でも、、、
「兄さん。お昼もうできてるよ」
「うん。、、、ごめん、今日はいい」
「え?」
聞こえなかったんだろうか?
「ご飯はいらない」
「な、何で?」
「、、、食欲がない」
「そんな事言わずに食べてよ。今日は自信作なんだから」
「、、、いい」
「何で?いつも美味しいって言ってたじゃん。毎日食べたいって言ってたじゃん!」
「いらないって言ってるだろ!」
何を怒鳴ってるんだ。寝起きで機嫌が悪いのか?
「ど、どうしたの兄さん」
「、、、別に」
何で、、、
「何かあったの?」
何で怒鳴ってしまったのにこんな風に、、、
「相談ならのるよ?」
優しくしてくれるんだろう。
「嫌な夢でも見た?」
「、、、ははは、子供じゃないんだから」
それはきっとルナはとても優しい子だからだろう。
「兄さん?」
「、、、あぁ、ごめん。そうだな、嫌な夢か。確かに見たな。、、、皆んなが僕の事を嗤ってくるんだ」
「、、、」
「お前が気に入らない。それに努力もしていないって」
「、、、」
「努力はしてるつもりなんだよ。でも、形にならないんだよ。ステータスは上がらないし、技術は身につかない。
何もしていないのと同じじゃないか」
「、、、」
「だったらさ、やってもやらなくても同じじゃないか。努力しても意味がないじゃないかって思えて」
「、、、」
「だから、その、ついイライラしちゃってルナに当たっちゃって、、、ごめん」
ルナは口を挟まずに最後まで黙って聞いてくれた。呆れてるんだろうか。怒ってるんだろうか。
「あのね、兄さん。兄さんはちゃんと努力してる。それは、私や村の皆んなが見てる。皆んないつも言ってるよ、タイガはすごいねって。いつよ頑張ってるねって。
形になってないかもしれない。なかなか成長しないかもしれない。
でもね兄さん頑張ってる兄さんはとてもカッコいいって私は思うよ」
「っ!!」
初めて、、、初めて自分をハッキリ認めてもらえた気がした。
城ではカスだのゴミの言われていて、村に来てから自分は何の役には立てずに、自分でもゴミだと思っていた。努力しても意味はなくただ、カッコ悪いと思っていた。
でも、こんな風に思ってくれてたなんて思わなかった。
自分を見てくれて認めてくれただけでこんなにも嬉しいなんて思わなかった。
「それに兄さん。苦しかったらたまには休んでもいいし、悩みがあったら相談に乗るよ」
「あぁ、ありがとう。もう大丈夫だ。はは、かっこ悪いところ見せちゃったな、お兄ちゃんなのに」
「ううん、それより本当に大丈夫?」
「うん。それよりお腹がすいたな。早く食べよ」
「うん!」