ゆっくりしたいしたいです
「はい!これでギルドへの登録は完了しました!」
「ありがとうございました」
「ではなんの依頼をしますか!?」
「いえ今日はもうゆっくりしようかと。何故かとても精神的に疲れましたし」
「そうですか!ではごゆっくりしてくださいねっ」
…なんだろう。ちょっと嫌味を言ったつもりなのに全く反応しない。それに何故かは知らんけどやけに元気がいいな…。一応脅しというか試験中にちょっかい出したつもりだったんだけど……。
少し気味悪く思いながらギルドを出る。
「兄さん、都会を見て回りたい」
「おおーそうだな!美味いものとかあるだろうし、もしかしたら魔法の本とかあるかもしれないぞ」
「!!行こっ!早くっ!」
「待て待て引っ張るなっ!」
魔法関連のことでテンションの上がったルナに手を引かれて広い通りを歩く。通りには色々な店が見える。わかりやすいのは剣の看板や盾の看板、服の看板などが付いていてその店が何を取り扱っているのか分かる。
逆にわかりにくいのだとおっさんの顔がデカデカと貼り付けられており、字は……汚くて読めない。進んで入ろうとは思えない店だね。
「魔法書?を売っている店ってないのか?」
「全然見つかんないよぉ…」
ガッカリするルナも可愛い…。
けど本当に見つからないな。でもないとしたらどうやって魔法を覚えたりするんだ?
「あの、すいません。魔法の本とかを扱っている店ってないんですか?」
「ああん?そんなもん貴族しか買わねえんだからもっと立派な店に行きな」
「そうですか。ありがとうございます」
適当に入った雑貨屋の店員に聞いて見たけど此処じゃ売ってないらしい。立派な店ねぇ、どこにあるのかわからない。しかも貴族が買うということは高いんだろうなぁ。ラノベの知識に頼りすぎるのもダメだけど、大抵そうだし。
「やっぱり高いんですか?」
「魔法書か?そりゃそうだろう。上質な紙にインクを大量に使って知識を詰め込んでるんだからよう。中には本当に魔法みてぇな物もあるらしいぜ」
「どこに売ってるんですか?」
「ん?嬢ちゃん魔法に興味があるのかい。そうだなぁ…そこの通りをまっすぐ……いや、地図を描いてやるからちょっと待ってな」
そう言って店員の青年は店の奥に入って行き、しばらくすると一枚の紙を持ってきた。受け取ってみるとどうやらここら辺一帯の簡単な地図で、目的地に丸が打ってある。
「ありがとうこざいます。お兄さん!」
「お、おう。また来いよ、安くしておいてやるからよ…」
「いいんですか?また来ます。ありがとうこざいました」
「い、いいってことよ。へ、へへ…」
ぜってえこねえぞこんなトコ。
くっ!ルナが可愛すぎるのも考えものだ……。クソガキの顔を見れば一瞬でわかる。あの真っ赤に染まった耳にほんのりと赤い頰。ニマニマと笑う口にルナを見るあの目!!
先に潰しておくか…?いや、それだと犯罪になってしまう。ルナの教育にも悪そう。今更な気もするけど。
まあいい。少しでも手を出した瞬間に地獄を見せてやる……!
「兄さん?」
「さて、じゃあそのお店とやらに行ってみようか!」
「う、うん」
強引に話を逸らし、店を出る。ちっ、あいつ角を曲がるまでルナのことを凝視してやがった…!ギルティ?ギルティでいいですか?
もらった地図を見ながら目的地へと向かう。近づいていくにつれて道並みが豪華になっていく。そして着いたのが白を主としていて、清潔感があふれ出るような店だった。
入り口だけを見ると洋風のお城みたいだ。
俺たちは扉を開き店内に入る。チラッと見るだけでも高価そうな服を着た如何にも貴族っぽい貴婦人が見える。ひどく場違いな気がして落ち着かない。
視線を感じながら店の中を見てみると薬品やなんかよくわからない道具が置いてある。お、本みっけ。
「これか……高っ!」
丸がたくさん……。とても買えそうにない。銀かなんかじゃなくて金貨が数十枚いるんじゃないか?
「もう一回売る?」
もう一回売るということはミスリルのことだろう。でもなぁ…。
「うーん、この辺じゃまた手に入らなさそうだし出来るだけ売ったりするのはやめとこう。ギルドに加入したんだし、ちゃんとお金を稼いでおこう」
「そうだね。私も働いてみたいし我慢する」
「おー偉いぞールナ」
そう言いながらルナの頭を撫でる。
「子供扱いしないでっ!」
手を叩かれてしまった。ショックだ……。
「周りの人も見てるし……」
あー本当だ。店員さんとか貴婦人が微笑ましいものを見てるような……そんな視線を感じる。
「周りの人が見てなかったらいいのか?」
「…別にいいけど……」
お、おお!予想外の返事だ!『バカっ!』とか顔を赤くしながら言ってくるかと思ったけど顔を赤くしながらこう言われるのもすごく良い!
「んじゃご飯食べてもう寝るか。明日はがっぽり稼ぐぞー!」