文字詠唱魔法と谷の底
文字魔法を見つけて、ティアにも誰にも内緒で、文字魔法を使った訓練を始めて、3週間が過ぎた。練習し試行錯誤を重ねてやっと形になってきた。ふふふ。みんなの驚く顔が目に浮かぶぜ、、、!
とりあえず、この世界に召喚されてからずっと魔法の練習をして、だいぶ上達したと思う。魔力操作のレベルは、あと2、3ヶ月位あれば、ティアに追いつけるらしい。ティアは、才能があると言っていたけれど、教え方が良すぎるんだと思う。才能があれば、スキルに出てるしね。
剣や体術については、完全に見捨てられた。ティアが教えてくれる人を見つけてくれるけど、全員に、
『才能が無いからあきらめな、、、』って言われた。悔しい。
え、ステータス?ふ、あれから見てないよ。どーせ変わってないし!
夜ティアに魔法を教えてもらっていると、
「、、、タイガ。しばらく会えなくなるかもしれません」
「え?なんで、、、?」
「国の大臣達から提案されて、召喚された勇者達を各地にいる剣聖や、賢者のもとに向かわせ、強くしてもらおうという案がでました。」
「へぇー。いいんじゃない?それって僕も行くんだよねぇ?どこ行くの?」
「それが、、、分からないんです。」
「え?ティアが決めるんじゃないの?」
「いえ、国の大臣や騎士団の方達が訓練の様子を見て決めるそうです。」
うん。ダメだこれ。厄介者扱いされている僕はきっとろくなところに行かせてもらえないだろう。容易に想像出来てしまう。けど、ティアと仲のいい者を簡単に殺すだろうか?とか、勇者を殺すのか?と、いろいろ問題がありそうだけど。
、、、やるね、殺られるね。何回かあった事がある。ティアが大臣と呼んでいた奴らを。あれはやっちゃう感じの顔だった。
「だから、安心して下さい!きっと個々人のレベルに合った師匠を付けてくるはずです!」
「、、、そうだね。なら安心かな。」
やっベー。どうしようかな〜。
「あっ、ちなみに明後日からです」
「早い!!?」
★☆★☆★☆
というわけで、マイルームにいるわけですが、不安だよね、うん。
ティアはああ言うけど、保険はかけておこう。
そう思い、自分の武器防具に文字魔法を書いておく。
、、、やっと終わった。めっちゃ大変だった。すごい時間がかかるし、文字も多いし、、、文字魔法が嫌われてる理由がよく分かった。まぁ、一応やれる事はやったし、後はもう知らん。なるようになれ。
おやすみー
★☆★☆★☆
で!ナウ。今、馬車の中に居ます。最初は良かったんだよ、最初は。旅行みたいな感じで。ワクワクしてたし。外の景色も綺麗で楽しめた。けど、今。お尻が痛い。めっちゃ痛い。割れる。もう、外の景色も飽きたし。凄く暇。あー暇だー。
「あの、すいません。僕は何処に行くんですか?」
「、、、、、、、」
あれ、聞こえなかったかな。
「あの、すいません。僕はーーー」
「ちっ。知らん。」
っんだよ。それくらい教えてくれてもいいのに、、、。はぁ。
「おい。着いたぞ。」
んあ?おお、いつの間にか寝ていたみたいだな。
目をしぱしぱしながら、馬車を降りる。
「おぉ、、、」
そこには、見事な絶景が広がっていた。
どうやら僕は崖の上に居るようで、下の方には森林が何処までも続いていた。
「えと、それで僕の師匠は何処ですか?」
「ハア。おい、あっちを見ろ。」
そう言われて、彼が指差す森の方を見る。別に何もないが、、、。
「盾技『シールドバッシュ』」
え?と思ったのと同時に後ろから衝撃。つまり、崖から落ちる。落とされる。
最初になんで?と思った。その時、
『なんで俺らがこんな事、、、』
『しょーがないだろう。命令なんだから。それより早く戻ろう。ここに居たら、、、』
『あ、あぁ。そうだな。早く戻って一杯や、、、う』
『お、、、そ、、、、だ、、、』
そんな会話が聞こえてくる。まるで、ゴミを捨てるかの様な感覚。
悔しかった。何で、、、という感情が出てくるが、地面が迫ってくる。
「安らぎの風よ!【ウインド】!」
初歩の風の魔法を使うが、そんな事では止まらない。僕は躊躇わずにストックしておいた文字魔法の最後の一文字を埋める。
ウィンド二回分の風が吹く。しかし、少し勢いが弱まるだけだった。くそ!もっと良いやつつけとくんだった!だが、諦めずに詠唱をし続ける。
MPが尽きかけて、意識が朦朧とする。
バサバサバサ ドン!
「ぐっ!か、ゲホ、ゴホ!」
木の葉っぱがクッションになっていくらか衝撃を和らげてくれた様だ。地面に腐葉土が積もっていたのもあるだろう。
「生きてる、、、」
信じられない。上を見上げる。木々で空が見えないが、あんなに滞空時間が長いのだからかなり高いところから落ちたんだろう。
「うぅ。身体中が痛い。」
けど、痛いのは生きている証拠だ。
「あぁ。生きてるって素晴らしい、、、」
さてと、これからどうしようか。崖は登れそうにないし、、、
「進むしかないか、、、」
森の方を見ると、太陽の光が遮られ薄暗い
、、、ガサ
ビク!!!
ふう。なんだ、風か、、、おどろかせるなよ。
ガサガサ
ビクビク!!!
、、、なんだゴブリンか。驚かせるなよ。
、、、、、、ゴブリン!?
「グギャ、、、」
ゴブリンが仲間になりたそうにこちらを見ている。
違う。そんなわけない。完全に獲物を見る目だ。
「ギャッギャッギャッ」
今笑わなかった?くそう。ゴブリンにまで舐められてたまるか。ゴブリンなんてスライムの次に弱い雑魚の代名詞だろ?返り討ちにしてやる。
「グ?」
武器を構える。長剣だと重くて扱いきれないので、短剣である。今まで戦った事なんてないので、本に書いてあった通りに構える。
「うおおお!」
僕だって魔法の訓練ばかりでなく一応自主練だってした。ゴブリンくらいなんでもないだろう。そう思っていた。
ある程度の距離があった。だから近ずいて攻撃しようと思った。なのに、僕が三歩目を出そうとした瞬間、ゴブリンが目の前に現れ、剣を振り上げていた。
「うわ!」
とっさに手を頭上に掲げる。すると、上手いこと短剣で攻撃を受け止めた様だ。やった!と思った瞬間、
「ぐふっ!!」
お腹に蹴りを食らわされた。
「おえぇぇぇぇ、、、」
本当にお腹に衝撃があると吐くのか、と思った。痛い。痛い、痛い、痛い。左のガントレットに書いてある文字魔法の最後の一文字を埋め、劣化エクストラヒールを使う。すると、身体中の痛みが和らいだ。
「すげ」
改めて魔法の凄さを感じる。けど、どうしようか。この状況。ゴブリンってこんなに強いのか。
、、、よし。逃げよう。
右手のガントレットの文字魔法を使おうとする。しかし、ゴブリンは黙っていてくれなかった。
「ぐっ!」
今度は、距離もあったためギリギリ見えた。顔を殴りかかってきたので、腕をクロスしてガードする。が、そのまま吹っ飛ばされる。転がってしまうが、急いで立ち上がる。顔を上げるとゴブリンがこちらを見てニヤニヤしていた。くそ、舐めやがって!今度こそ、文字魔法を使おうと思い、腕を見ると左腕のガントレットにヒビが入っていた。右腕を上にしてたら文字魔法が使えなくなっていた。
あぶね、と思いながら文字魔法を使う。出てくるのは、劣化ファイアランス。劣化ファイアランスがゴブリンに飛んで行く。やった!と思ったら。
「おまえゴブリンが魔法切るとかやめろよ、、、」
なんと、ゴブリンが魔法を切りやがった。あれはもうゴブリンじゃない、、、。
「ギャッギャッギャッ。ギャ!」
「ぐふっ!!」
また、お腹に衝撃が走る。速すぎて見えなかった。なんで、、、。
「おえぇぇぇぇ、、、」
「ギャッギャッギャッ!」
あぁ、そうかこいつは楽しんでるんだ。
そう思った瞬間今まで忘れていた、恐怖がこみ上げてくる。剣と魔法のファンタジーだと思って浮かれていたが、死を前にして足が震える。
「く、来るな!来るなぁ!」
「ギャッギャッギャッ」
ゴブリンが近づいてくる。逃げなきゃ、、、そう思っても足に力が入らない。人間は恐怖に支配されるとこんなにも、動けないものなのか、、、
とうとうゴブリンが目の前に来て、剣を振り上げる。死ぬ、、、と思い思わず目を閉じる。
どうしてだろう。なかなか痛みが来ない。
目を開けると、さっきまでゴブリンがいた場所には、一匹の黒い狼と、血の跡、そして剣を握りしめたままのゴブリンの腕があった。きっと、こいつがゴブリンを殺したんだろう。狼がこちらを見て口をあける。
今度こそ死んだ。っと思ったがまたも痛みが来ない。今度は目を開けたままだった。しかし、何が起こったかまったくわからなかった。狼がいた場所に次はクマがいた。鋭い牙と爪。こいつも魔物だろう。
クマは仕留めた狼を食べていた。そして気づく、こちらを見ていない事に。
そうだ、逃げなきゃ。
立ち上がる。身体中が痛いが、そんな事言ってられない。そろり、そろりと後ずさる。
ある程度離れたら、全力ではしりだす。
「ハア、ハア、ハア、、、」
どれ位走っただろうか。もう、来た道なんかわからないくらい走った。
「ここまで、これば、大丈ーーー」
大丈夫、そう言おうとしたところで止まる。何故ならーーー
「なんで、、、あんなに走ったのに、、、」
目の前にクマがいた。しかも、ゴブリンと同じ目をしながら。
「くそ!」
今度はベルトに書いてある文字魔法を使う。とっておきだ。
「くらえ!!」
劣化エクスプロージョン。ベルト長いのでまあまあ強力なものが出来た。けど、こんなので倒せるだなんて思っていない。そんな希望は、ゴブリンで捨てた。ゴブリンであれだもん。ゴブリンより強い狼より強い熊に効くわけない。
そう思い、走り出す。エクスプロージョンで少しは時間を稼げるだろう。そう思っていたのに、、、
「え、、、」
目の前にクマがいた。そりゃそうだろ。こいつが食事をしている間全力で逃げたのに追いついて来るんだ。
少しの時間を稼いだところで意味がない。
「う、あ、、、」
逃げなきゃ。速く!そう思った瞬間、
「っぐは!!!」
殴られる。ハエでもはたくように。ただ腕を振っただけで、吹き飛ばされた。ただ腕を振っただけで、骨が折られた。防具が粉砕された。
「ぐっ」
落下の衝撃でダメージが通る。ボールのように跳ね、転がり落ちる。その先は丁度小さな崖になっていたようだ。
「きゃあ!人が飛んできた!?」
「んあ?」
転がり落ちた先は、道になっていた。どうやら人がいたようだ。三十代くらいの男性と、少女がいた。
「た、たす、、、」
助けを求めようとして止める。きっと道連れにしてしまう、僕のせいで犠牲者を増やしてしまう。
「に、げて、、、化け物が、くる、、、」
「え?ど、どういう事ですか?」
「落ち着けガキ。言っている事がわからん。」
「速く逃げ、、、」
「グァァァァ」
くそ!もう来たのか!
「速く、、、逃げて下さい!」
「お前は、どうするんだ?」
「、、、足止めをします」
「だがなぁ、それ「グァァァァ!」
覚悟を決めろ。こうなったら逃げられない。状況を整理しろ。最優先するのはこの人達の命。僕に注意を引き付けないと。最悪僕が食べられている最中に逃げれるかもしれ無い。けど僕だって死にたくない。こんなところで死んでたまるか!そうだ、、、だったら!
「殺す。」
思い出せ。今まで訓練した事を。
思い出せ。勝手に召喚され、そして今殺されかけている理不尽。クラスのみんなの目線。国の奴らの自分勝手な行為を!
気に入らない。何で、、、なんでこんな目にあっている。
湧き上がってくる、今まで忘れていた怒り。
それを殺意に変える。そしてそれを熊にぶつける。
「ぶっ殺してやる!!」
「ガアァ!」
今まで訓練していた事を実戦で試す。大丈夫出来る!
「水よ敵を蹴散らせ【ウォーターボム】」
今使ったのは中級魔法のウォーターボム。適正のない僕には、発動出来ないが文字魔法を空中に描き文字魔法の半分を詠唱で短縮する。そうする事で、文字魔法の発動するまでの時間を短縮し、適正が無くてもある程度の魔法を使えるようになる。これが訓練していた事だ。ただ、中級魔法までだけど。
名付けて、『文字詠唱魔法』といったところか。
だが、この程度じゃ死ぬ訳ない。
僕はすぐにウォーターボムで出来た水たまりに短剣を刺し、短剣にストックしてある文字魔法【フリーズ】を使う。
すると水たまりが凍る。
「水よ来れ【ウォーター】」
「グォオ!?」
これでさらに立ちづらくなっただろう。油断しているからこうなるんだ。
「土塊よ、弾丸となりて、敵を撃ちぬけ【ストーンバレット】」
これも中級魔法だ。
さらに、レガースにある文字魔法、【メガウィンド】を使いストーンバレットの勢いを増す。ストーンバレットも常に一ヶ所を狙い続ける。まともに立てない熊は何もできない。これが僕の考えた黄金コンボ。一つ予想外だったのが、MP切れで吐き気がする。これで倒せなかったら負ける。
「ググア、グア、グアアアァ!」
くっそ!殺しきれなかった!こうなったら直接短剣で、、、
そう思い歩き出そうとすると、、、
「ガキ。もう十分だ」
「な!?なんでまだ居るんだ!?」
「ルナ」
そう言うと女の子がこちらに歩いてきた。速く逃げろ!そう言おうとしたが、
「【雷龍】」
少女が呪文を詠唱無しで唱える。すると空から、巨大な雷が落ちてきて、熊をのみ込む。
「は?」
思わず間抜けかな声が出てしまう。え?これ僕最初からいらなくね?
そう思いながら僕は意識を失った。
★☆★☆★☆★☆
知らない天井だ。
冗談無しにそう思った。
「えと、ここは、、、僕は確か」
そうだった。騎士に落とされて化け物共に襲われて、、、
「化け物以上に化け物みたいな人にあったんだっけ」
「化け物じゃないもん、、、」
「のわぁ!?」
「えと、おはようございます」
「あっ、おはようございます」
「ルナ、目が覚めたのか?」
「うん、たった今」
「そうか。ガキ、体はどうだ?」
「え?」
そう言われてみると、吐き気やめまいはあるけど痛みは少ない。なんでだ?
「大丈夫、、、、です」
「そうか。ルナのおかげだな」
「ルナって、そちらの、、?」
「あぁ、そうだったな。まだ、自己紹介をしていなかったな。俺の名前はノルド。で、こっちが娘のーー」
「ルナです。よろしく」
「こ、こちらこそよろしくです。それで、ルナさんが傷を、、、?」
「うん。魔法は、得意だから」
「えと、その、あ、ありがとうございます。」
「い、いえ。そんな当たり前の事ですし、、、」
「ふむ、、、。そういえば、ルナお前、兄弟が欲しいと言っていたな。」
「え?でも父さんそれはもう、、、。うん。言ってたよ」
「そうか」
この人マイペースだなー。もうちょっとこっちに集中して。
「それでガキ。お前は?お前はどうしてあんなところにいた?」
あ、そうだった。
「え、あー、えと僕の名前はムツトシ・タイガで、タイガが名前です。出身はーーー」
そうして、僕は僕のことを話した。特に隠す理由もないので、自分が勇者だという事も、出来損ないだという事も、スキルもステータスも、才能も無いらしいことも全部話した。
「ーーーそれで、先生、、、師匠?に会うために来たんですが、急に崖から落とされてしまい、魔物から逃げてたんです。それで、ノルドさん達に会ったんです。」
「うぅ。ぐす、そんな、ぐず、大変な事が、、、」
な、泣くほどの事だろうか?
「そうだったのか」
「はい」
さて、これからどうしようか。ここが何処かも分からない。
「タイガ」
「あ、はい」
「俺がお前の師匠になってやってもいい」
「え?」
「腕なら心配いらねえ。自分で言うのも何だが、そんじょそこらのやつには負けねえ」
そりゃそうだろ。こんなところまで歩いて来れるんだから。
「いや、悪いですよそんな。僕才能無いらしいですし」
「それは別にいい。むしろ2、3週間で上達するようなもんじゃねえからな。」
「いや、でもいいんですか?」
「あぁ。だが、条件がある。」
「条件とは、、、?」
「お前、ルナの兄弟になってくれ」
ナニヲイッテルンダロウ?
いや、分かってる。弟子になるという事は、部屋も借りるし、食事だっていただくだろう。だから僕が気にしない様にする為に、『家族』、そういう事だろう。
「分かりました。じゃあよろしくお願いします!」
「あぁ。それと、家族なんだ。敬語なんて必要ねえぞ」
「わかりま、、、わかった。」
正直初めてあった人と家族になって急にタメ口というのはすごくおかしいと思う。けれど、ここまでしていてくれているのに断るのは少し失礼なんじゃ?と思った。
「よし。ルナ、ようやくお前の欲しがっていた兄弟が出来たぞ」
ノルドさんが微笑みながら言う。あぁ、そうかノルドさんは親馬鹿なんだ。
「えぇ!こんな風に兄弟ってできるものなの?!」
「それじゃあ、これからよろしく、えと、なんて呼べばいい?」
「あ、こちらこそ。ルナでいいよ。お兄さん?弟?」
「あ、僕は14歳。ルナは?」
「私は、13歳だから、お兄ちゃんだね。」
う、お、おぉぉぉ、、、何だろう。この気持ちは。お兄ちゃん、素晴らしい響きである。
「ねえ、恥ずかしいから、兄さんでいい?」
「え、あ、うん。もちろん」
ま、まあ兄さんでもいいよね。
「うし、自己紹介もしたしもういいだろう。タイガも目が覚めただけで、だるいだろう。休んでろ」
実はさっきからすごく瞼が重い。だるいし、今すぐ横になって寝たいくらいだ。
「わかった。お言葉に甘えて。ここのベットってつかってもいいの?」
「ああ。元から空いていたものだ。じゃあ、俺たちはもう行くぞ。もう夜だ、おれも寝る」
「わかった。おやすみ」
「おやすみ。兄さん」
バタン、とドアが閉まる。まだ、疲れが抜けきっていなかったせいか、僕はすぐに眠った。
★☆★☆★☆★☆
「兄さん。起きて」
誰かが僕の体を揺する。
「うーん。あと三十秒、、、。」
五分なら却下されるが、三十秒ならギリギリOKしてもらえる。
「もう、しょうがないなあ」
ほらな。
、、、、、、。
「おわぁ!」
「きゃあ!」
なんだ!誰だ!僕にこんな幸せな朝が訪れるはず無い!
「お、おはよう。兄さん」
兄さん、、、?あぁ、そうだった。昨日妹ができたんだっけ。
「え、だれ?」
ぼくの目の前には、美少女がいた。整った顔に、綺麗な黒髪のロングで、発展途上の胸にほっそいウエスト
うん。それだけ?と思うけど僕に表現する力が無いだけです。食レポの才能とか無いです。ハイ。
「もう、兄さん寝ぼけてるの?」
「もしかしてルナ?え?こんなに可愛かったの、、、?」
「か、可愛、、、!も、もう。早く起きて。ごはんできてるよ。」
「あ、ああ。ありがとう」
そう言って、ルナに連れられリビングに行く。
「おはよう。タイガ。」
そこには、ダンディなイケメンがいた。の、ノルドさんだよな?
「おはよう。ノルドさん」
「早く座れ。冷めるぞ。」
「あ、はい。」
「「いただきます」」
「い、いただきます、、、。」
昨日は、意識がはっきりしていなかったからよくわからなかったけど、二人とも顔が、、、。これ家族で通せるか、、、?僕だけ浮いている、、、!
そう思うながらご飯を食べる。そういえば、いただきますって言うんだな。
「あむ。うま!?」
なんだこれ美味しい!
「そうか。よかったなルナ。」
「え!これルナがつくったの!?お城の料理よりも全然美味しいよ!才能あるよマジで!これが毎日食べられるなんて幸せだよ!」
「え、う、うん。ありがとう、、、」
「ははは、よかったなルナ。顔が赤いぞ」
「も、もう。父さん!」
うまい!今まで食った中で一番かもしれ無い!
「「「こ馳走さま」」」
あ、やっぱりご馳走さまも言うんだな。
「さて、タイガ。これからの話だが、とりあえずこの村を案内しよう。ルナ、すまんが後片付けを頼む」
あ、ここって村なんだ。
「わかった父さん。いってらっしゃい」
★☆★☆★☆★☆
「ーーーで、あそこが、まぁ鍛冶屋のようなところでよくおれたちの武器を作ってるところだ」
「へぇー」
「ここは、他と比べると少し魔物の量が多いからな。よく世話になっている。次はーーー」
とそんな感じで案内してもらっていると、
「ん?おおい!ノルド!その坊主は新入りか?!」
「おう、アルフ。森で襲われていたのを見つけてな」
「ははーまたか。頼もしいぜ!おおーい!みんな!新入りだ!!」
「またか」「つい最近もいたわよね」「悲しいねえ、、、」
な、なんだ。どんどんでてくるぞ!?
「タイガ。自己紹介を」
「え、ああぁ、え〜と。タイガといいます。え〜異世界から来た勇者ですが、捨てられて森で襲われていたのをノルドさん達に助けてもらいました。これから、この村でお世話になると思うので、どうかよろしくお願いします。」
『おー真面目だ!』
「よろしくねぇタイガちゃん」
「あ、はいこちらこそ」
「ふふ、そんなに緊張しなくていいのよぉ」
「坊主!何か武器が欲しかったら俺んとこに来いよ!」
「防具なら俺んとこに来な!」
「は、はい!」
あぁ。こんなに大勢の人に優しくして貰えたのは久しぶりだ、、、。
「じゃあ俺たちはこれで」
「おおう、またな!」
★☆★☆★☆★☆
場所を移動して静かな高台へ。
「いい奴らだろう」
「うん」
「実はここにいる奴らは、お前みたいに捨てられた者達だ。理不尽な事を言われここに落とされた者や、まったく罪の無いのに冤罪をかけられた者。国によっては、髪が黒いというだけで汚い、気持ち悪いと言われ、、、。そんな奴らの集まりだ。」
「え?じゃあルナも、、、?」
「いや、ルナの髪は母親譲りだ。妻は美しい人だった。ルナだって可愛いだろう。ルナの魔法の腕も母親譲りだ。けれど、髪が黒いというだけでここに捨てられてな。俺は冒険者だったから他国から旅をしていたから髪なんて気にならなかった。一目惚れだった。振り向いてもやうために、冒険者ランクを上げた。他にもーーー」
な、なんか始まった、、、!
ノルドさんは話している最中、いかに嫁さんが可愛いか、ルナが可愛いかをアピールしてきた。
そして、なんだかんだあって結婚し、ここに来てやる事やってルナが産まれたとこまできた。
「ーーー毎日が幸せだったよ。けれど、ある日唐突に終わりを告げた。村にとてつもなく強い魔物が襲ってきたんだ。全く歯が立たなかった、というほどでは無いが強かった。その時の村人勢員で戦ってやっと互角というほど強かった。その時にまだ幼いルナを庇って妻は死んでしまってな。それ以来ルナは、あまりわがままを言わなくなったんだ。だから、できる限りルナのわがままを聞いてやりたい。」
そんな事があったのか。
「だからタイガ。ルナを頼む、、、!」
「もちろん。頼りないけど、兄だから」
そしてノルドさん。フラグを建てちゃったと思うんだけど。
☆★☆☆★☆
グットモーニング。
「そんじゃあ、今日から訓練を始める。」
「ハイ!」
ヒャッホウ!テンション上がる!男は何歳になっても、いつになっても、心は少年のままだからね!
「とりあえず、お前の総合的な戦闘力を知りたい。だから今から試合をする」
「いきなり?」
「ああ、魔法も使っていい。どんな手を使っていいぞ。全力で、殺す気でかかってこい」
「わ、分かった」
よっしゃ、どんな手も使っていいんだな。やったるわ。
とりあえず、簡単な文字魔法を刻んでいく。
「よし!行きます!」
ノルドさんが剣を構える。
僕は全速力で走り斬りかかる。
「、、、」
「おわ!」
ノルドさんが半身になって最小限の動きでかわす。思いっきり切りかかっていたのでバランスを崩してしまう。
すぐに体制を直す。それをノルドさんは待っていてくれたようで、余裕がうかがえる。
単純な近接戦闘じゃかないっこないので、文字詠唱魔法でウォーターランスを出して攻撃。それを、ノルドさんは当然のように切る。、、、ちょっと待って、ノルドさんが濡れて無い。剣の風圧だけでしのいだのか?スキル?魔法?やめてほしい。
次は、文字詠唱魔法でストーンバレットを放ちながら近づいていく。ノルドさんは石の弾を避ける中一発をこちらに弾く。
「!!くっ!」
嘘だろおい、弾くにしてもこっちに飛ばせるか?
愚痴を言いながら(思いながら?)なんとか弾く。
「すぅー、ふぅー」
深呼吸。次はどうすればいいか考える。
そして今度は駆け足程度で近づき、急にスピードを上げ、斬りかかる。
ガキン!
「ふん」
「、、、!」
くっそ、余裕で対応された上に片手で受け止められる。
「ふん!はあ!おりゃ!」
キン!キン!キン!
何度も剣を振り下ろす。だが、やはり全て防がれる。
一度離れる。
「ふぅぅ、、、ふっ!」
3度目、いきなり全速力で斬りかかる。
ガキン!
やはりこれも受け止められる。だけど次は魔法を使う。それは、、、
「砂よ!【サモン・サンド】!風よ【ウインド】!」
「っ!」
ノルドさんが息を呑むが分かった。
僕がやったのは、僕の尊敬する駄女神と一緒に異世界へ行ったあの人が得意とする戦法。
斬りかかり、砂を出現させ、風で砂を相手の眼球に捧げる。
素晴らしい。
「よし!」
即座に距離を取り文字詠唱魔法で、
「水弾よ【ウォーターバレット】!」
一応打ち返されないように水の弾丸にする。
勝った!
「っ!おらあぁぁ!」
ガガガガガガ!
「はぁ!?」
なんと全て打ち落とされた。さすがに打ち返されるなんて事はなかったけど、目の見えない状態で撃ち落とすなんてバケモンだよほんと。
「ちぃ!」
思わず舌打ちをする。だって絶対勝ったて思ったのに、、、
文字詠唱魔法、、、
「水よ 敵を蹴散らせ【ウォーターボム】!」
そして、ストックし直しておいた【フリーズ】で水を凍らせ、
「水よ来れ【ウォーター】!」
これで!!!
文字詠唱魔法の劣化【ファイアランス】
「いけ!」
「っ!?」
ドゴォォォンという音とともに、土が舞う。
どうなった?さすがにこれは当たっただろ。
「ふっ!」
「っ!!?」
気づいたらノルドさんが目の前にいて、首筋に剣を当てられていた。
「思ったよりやるじゃねえか。俺にスキルを使わせるなんてな」
はあ!?スキル無しで魔法を何度も切り裂いてたのか!?
「いや、でもあんな事で褒められても、、、。それに初見の奴には効いても、次から対応されるし」
「いや、最後に勝てば、生きていればいい。最後に立っていた奴が正義だ。それに、初見で確実に空いてを殺せばいい。お前にはそれができる。だから、あまり迷わずに進め」
「おぉ、、、なんか思ったよりもちゃんとしたアドバイスだ」
「失礼だな!?」
「はははは」
楽しく特訓ができそうだった。少なくとも国の騎士とやるよりかは。
☆★☆★☆★☆
ルナを出したのは単純に妹キャラが欲しかった作者の願望です(キリッ