テンプレ最高
「ついに来たか……」
僕たちは長い道のりを越え、大きな扉の前にいる。
「ここが……!」
「兄さん此処は魔王城じゃ無いよ」
「雰囲気大事にしてこう」
「……」
ルナが呆れているがテンションの上がっている僕は気付かない。だってギルドだよ!?冒険者ギルド!響きがもう素晴らしい。
僕は大きな扉を開ける。輝かしい未来を期待して。
そして受付に歩いていく。
「???」
「どうしたの?兄さん」
「いや…別に………」
おかしい。テンプレ通りにチンピラが絡んでこない。ルナが居るなら『ゲヘヘ、天使みたいに超可愛い子だなあ!俺と遊ぼうぜゲヘヘ』みたいな感じで出て来ると思ったんだが…。
テンプレ通りに行かないことに若干のショックを受けながら受付へと歩いていく。
「何のご依頼でしょう?」
「あ、いえ。依頼じゃなく、冒険者として登録したいんですけど……」
「……は?」
受付嬢に申し出る。
すると呆気に取られたような声を上げる。表情が少し面白い。
「以来ではなく…?」
「?はい、そうですが」
「はあ……たまにいるんですよね。実力もないのにギルドの恩恵だけを利用しようとする人たちが」
「そうですか。登録お願いします」
「冷やかしは困るんですよねー」
「大変ですね。早く登録して下さい」
「その度におかえりしていただいているんですが……」
「おい早くしろよこのやろう」
「あなたの事ですよ!」
愚痴を喋っていたと思ったら急に怒り出す受付嬢。
「なにこの人面白い」
「こぉんの……!」
「オイオイにいちゃん…。本当にギルドの一員として登録しようってのかい」
思っていたことが口に出ていたようで受付嬢の顔が真っ赤に。やっぱり面白い。
しまったと思ったら後ろから声が。
ち、チンピラの登場か!?テンプレ通りきた!
『ルナちょっとそこに座ってていいよ。【結界】』
足場に結界を発動させて即席で椅子を作る。結界の強度は魔力の込め方によって変わる。今作った結界はクッション並みに柔らかい。そこら辺の木でできた椅子よりいいかと思い、魔法で代用した。
『分かった。早くしてね』
『善処しよう!』
念話での会話を終わらせてムキムキのチンピラ(仮)に集中する。
「そうですが!」
「ふざけたこと抜かしてんじゃ……おい、なぜ目を輝かす?」
「お気になさらず!」
「ま、まあいい。お前みたいなクソ雑魚のガキがギルドに入れるわけがねえだろが!」
「なんでですか?…まさか年齢制限が!?」
「違「違います!実力が足りないと言ってるんです!」
チンピラ(仮)が喋ろうとしてたところに被せてくる受付嬢。
「実力ならあると思いますが」
「ハッ!なら「だったら見せてもらいましょうか!」
おい、ちょっとションボリしてるぞチンピラ(仮)が。
「いいですよ。妹も必要ですか?」
「妹?」
「そこに座ってる天使です」
「てん…?似てないですね」
「はは…」
そりゃそうだよ。
「…もしかして妹も登録するおつもりですか?」
「そうですよ」
「はあ…兄弟揃ってバカときましたか……。付いてきて下さい、試験場があります」
聞こえてるぞおい、僕はともかく妹がバカだとは……こいつ。
「オイオイ!マジで試験すんのかよ!」
「受かるわけねえよ!」
『ギャハハハハ!』
ギルド内勢員の……いや、違うな。4分の3くらいか?の笑い声が響く。
「なら俺が試験官やってやろうか?」
「ハハハ!それはいい名案だな!なら俺もやってやるよ!」
その後俺も俺もと騒ぎ出す。
「それは嬉しいですねぇ。なら全員でお願いします…」
しん…と静まり返る。静かに怒り出すもの、呆気に取られるものそれぞれだ。
「オイオイ…なにを言い出すのかと思えば」
「冗談もいい加減にしろよ?にいちゃん」
「ほ、本気ですか?」
「ハイ、勿論ですよ」
即答する。見た感じ雑魚ばかり。少し強いのも混ざってる居るがまだまだ。多分本当に強い人たちは出払ってるんだろう。
「…はあ、こちらです付いてきて下さい」
言われて付いていく。僕の後ろを冒険者の全員が付いてくる。勿論ルナも一緒だ。
ギルドの裏だろうか。とても広い…コロッセオみたいな感じの広間に出てきた。周りにはおそらく観戦するためであろう座るための段差がある。現代だと野球場みたいな感じだな。
「さて、準備はできたか…?」
そして、試合が始まろうとしていた。