街についた
「おっ!あれ街じゃない!?」
「あっ!ホントだ!」
遠くにやっと大きな壁に囲まれている街のようなものが見えてきた。マップにも人工物が建てられていて、生き物(黄色点)がたくさんあるので街だろう。
「長かったなぁ」
「うん…兄さんがMPを無駄遣いしなければもっと早くついたんだけどね…」
「………」
『やれやれですね』
「うるせえよ!」
最近メティスがひどい。少しずつ毒舌キャラに近づいてる…。
「しっかし、この辺は野生の動物が多すぎないか」
「いいじゃん可愛くて」
そう言いながらルナは今さっき出て来た犬と戯れている。かわゆい、ルナが。
ーーーメティス、撮影。スキルでどうにかして。
『そのようなスキルは存在しません』
ちっ!こんな所でも不親切な世界だよまったく。
そうこうやってるうちに町の門前にやってきた。
大きな門の前には見張りの兵がおり、その兵と少し話したらドンドン人が街の中へ入って行ってる。
少し面倒くさそう。横を見るとまだ人がズラッと並んでいる。あっ、今チラッと見た兵士さんがため息こぼした。
「これを並ぶのか。いっそ飛んでくか?」
「ダメだよ。ちゃんと並ぼう、兄さん」
「真面目だな、ルナは」
よしよしと頭を撫でる。ルナは気持ちよさそうに目を細めた。おおう、可愛い……。
「もう兄さん、人が居るから…」
「ん?人がいない所だったらいいのか?」
「…!知らない!」
「ははは」
ダメッ!って言ってこないあたりほんとはして欲しいんだろうな。かわゆい奴め。よしよし。
「ふぁ…もう…」
色っぽい声を上げるルナにドキッとする。この子の性感帯は頭なのか?
「次の人!」
「あ、はーい!」
意外と早く順番が周り、兵士さんに呼ばれる。
「では、身分を証明するものはあるか?」
あっ、そういえばそんなテンプレもあったな…。そんなものないぞ。
「すいません田舎から来たもので持ってません…」
慌てても仕方がないので正直に打ち明ける。
「なら、代わりに銀貨5枚だ」
銀貨?ルナに目をやってもフルフルと顔を振っている。
「すいません……」
「銀貨も持ってないのか!随分と田舎から来たものだな。なら、代わりに金になるものを出してくれ。少し損をしてもらうが、ここで換金する」
損をしてもらうと言ったが、しょうがないだろう。普通貨幣は持ち合わせてるし。デ○ズニーランドとかに置いてある自販機が高いのと同じ感覚だ。
さて、問題は何を換金してもらうかだが……
「これなんてどうでしょう?」
「ん?おお、アイテムボックス持ちか、羨ましいな。どれどれ……これはミスリルか!?」
んん?この反応を見るに珍しいのか?
大声を出したせいでザワザワと周りが騒ぎ出す。
「静かに!…おい!誰か代わってくれ!……すまないがこちらに来てくれ」
「わかりました」
そうして門の隣にある扉をくぐり、個室に入った。
「オイオイ、こんな物をあんなところで見せびらかすもんじゃないぞまったく……」
「えと、まずかったですか…?」
「当たり前だろう。盗まれるかもしれないんだぞ。最悪殺されるかもしれない。これから気をつけてくれ。
さて、換金の話に戻るが金貨4枚だ。受け取れ」
「あ、ありがとうございます。入る為のお金は?」
「もうとってある。二人分取ってしまったが、問題ないか?」
「はい、ありがとうございます」
「ああ、それと身分証明書がないなら冒険者ギルドに行くといい。実力があれば身分証明書の代わりをくれる」
「実力があればですか?」
「当たり前だろう。ギルドにとって利益にならないのに身分を証明してくれるはずがないだろう?」
それもそうだな。
うん、厳しい。
「ありがとうございました」
「いや、いいさ。あんたのおかげで門番をサボれたんだからな」
「ははは。ちなみに冒険者ギルドって何処ですか?」
「ああ、それならここの通りをまっすぐ行くと大きな建物がある。行けば一目で分かるから行ってみるといい」
「わかりました。じゃあさようなら」
「ああ、頑張れよ」
気のいい門番に別れを告げて街の中に入る。
……ミスリルで金貨5枚か。まだストレージの中にたくさん入ってるんだが…山のように。ミスリルでこれということはオリハルコンなんかどうなるんだろうな。ハハッ。
「兄さん。これからどうする?門番さんの言ってた冒険者ギルドに行く?」
「いや、先ずは今日の宿を探しに行こう。冒険者ギルドは逃げないけど、宿が取れなくなるのは困るからな」
そう言って宿を探し、いい感じの宿を見つけた。綺麗な外見でまあまあ大きい。ドアを開けて受付の方へ行く。
「いらっしゃい。1人部屋銀貨1枚、2人部屋で銀貨1枚と銅貨30枚だよ」
受付のおばちゃんが振り向き、値段を教えてくれた。うーん2人部屋でいいだろう。ルナと同じ部屋なんて今更だし。
「2人部屋で。ご飯は出ますか?」
「なら追加で、銅貨20枚払いな。朝と晩に出るよ」
「ならお願いします」
高いのか安いのかわからないが、2人分払う。
「毎度あり。ちなみに壁は厚いから安心しな」
「な!ななななにを!私と兄さんはそんな関係じゃないです!」
「僕たちは兄弟ですよ」
「そうかい。つまんないね。ほら、これが鍵だよ」
そう言って鍵を投げ渡される。鍵には番号が書いてあった。
「ありがとうございます」
「ほら、ルナ」
「に、兄さん…そんな事しないよね…?」
「して欲しいのか?」
「そそそそそんなわけ!!」
「ならしないよ」
慌てるルナも可愛いが、おばちゃんがニヤニヤしてるので大変不愉快だ。さっさとギルドで身分証明証を貰わなければ。
「むぅ〜」
よし、実力ならあるつもりだ。それにしてもらえなくともストレージの中には大量にアイテムが入ってる。お金に困ることはないだろう。あまり売りたくはないが。
「次は冒険者ギルドだ。暗くならないうちに行くぞ」