鑑定
「さて、最初にどこに行こうか」
最終的な目標はこの世界でのフリーライフだが、ひとまずみんなに会いたい。成長した自分を見てほしいと言う願いや、単純に恋しい。だが、マップに記されていないから飛んでいけないし、転移もできない。
ちなみにマップには、自分が探知できる範囲。大体半径3キロメートルくらいかな。探知スキルのレベルを上げれば広がるけど。
「とりあえず、この谷を出よう」
この地帯は絶壁に囲まれていて、ほとんど脱出は不可能だと思われる。けど、何年か前に抜け道を見つけたらしく、故郷に帰りたい人は帰れるらしい。まあ、ここで修行した人たちは大抵ほとんどの魔法を使えるのでーーー
「飛んでく?」
ーーーなんて言葉が簡単に出てくる。
普通の会話に『飛ぶ』なんて言葉が出てくるところが異世界だなって思う。
「いや、まだ僕のレベルを上げたいから、歩いて行こう」
僕は魔狼を倒して、大幅にレベルが上がったとはいえレベルは低いだろう。自分のステータスはわかるけど、周りのステータスがわからないから自分が高いのか低いのかわからない。
ちなみにルナに聞いて見たところ「私?私はねえ…2150!」と言ってた。ドヤ顔が超可愛いなと思う反面、マジかよって思った。ぼくなんてまだ98だぞ。くそ、せめて魔物のステータスが見たい!
《私に含まれているのでできますよ。【上級鑑定】が統合されています》
マジか。もうちょっと早く言って欲しかった。だが今更遅いし、気にすることでもない。
「兄さん…」
「わかってる」
探知に魔物の、これはゴブリンかな?がひっかかった。ちょうどいい鑑定してみよう。
「【鑑定】」
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ギルガ・サザン・レウス・ゴブリニア
クラス:ザ・ゴブリン
レベル148
HP980
MP678
攻撃力580
守備力572
魔力389
速力612
幸運23
スキル
剣術7
武術5
火魔法2
身体能力超強化2
HP回復速度上昇4
・
・
・
称号
原初の魔
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か、カッコいい…!
ステータスが若干人間と人間と違うし馬鹿みたいに高い。だけどそんなことに気が向かないくらいカッコいい!
まず名前!『ギルガ・サザン・レウス・ゴブリニア』って長いしカッコいい!それに称号が『原初の魔』。
あれだね、一度治りかけた僕の厨二病が再発する。
「グギャッ!」
「うおっと!」
ゴブリンがおそらく縮地を使いながら仕掛けてくる。
あ、あぶね。完全に油断してた。けど、問題なく反応できたな。これがステータスの力か。
「ほっ!」
新たに取得した剣術スキルや武術スキルのおかげで補正が入ってるので、今まで以上に速く上手く動けるようになった。一呼吸で何度も斬りつける。
「よし」
いい調子だな。
ちなみにスキルの効果を上級鑑定で調べてみるとこんな感じだった。
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剣術
所持していると、剣の扱いに補正がかかる。レベル1につき、0.1ずつ増えていく。
また、練習によっては《スラッシュ》などの技能を習得できる。
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つまり、剣の使い方が上手いほど補正がかかる。レベルが10までいくと倍になるのか。凄いな。
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原初の魔
この称号を持たないほとんどの魔物を無条件で屈服させる。また、ステータス成長補正がかかり、全てのステータスを微上昇させる。
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ううわ、チート。
この称号を持った奴が谷の外に出て行ったら簡単に魔王を名乗れるんじゃないか?
「グギャ」
「グギャギャ」
「ググ!」
そうだった。ゴブリンは基本的に群れ、というか数人で固まって部隊を作っている。そうして生き残ってきた。村には『ゴブリンは一匹見かけたら50匹いると思え』という言葉がある。扱いがGと一緒だということに驚いた。
「ハァァ!」
縮地を使いいっきに接近したところを一太刀で首を切る。残りのゴブリンはまだ反応できておらず、僕のいた場所をいまだに睨んでいる。勢いを殺さずに次の標的へ。2匹目を倒したところでやっと気がついたらしい。まあ意味はないけど。ナイフを投げようかと思ったけど、勿体無いのでやめる。フェイントを入れて、ゴブリンを倒した。
『レベルが上がりました』
「うん。慢心するわけじゃないが、余裕だな」
剣を振って軽く血を飛ばす。
「【ウォッシュ】」
ルナが魔法で綺麗にしてくれる。本来は風呂に入れない時とかに使うものだが、こういう使い方もできる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
お礼を言うと、笑顔で返してくれる。もう超可愛い。
「よし、行こう」
そうしてまた、歩き始めた。