アトランタの森 その2
動かなくなった小型恐竜らを観察しながらイカロスは言う
「大胆かつ無駄がない戦闘技術だな。」
小型恐竜を舐めまわすように観察する、驚くのも無理はない
それらは最小限の攻撃でほぼ一撃で倒されている
そのうえ切り口や打撃個所において、大きく形を損なったようなところはない
まさに熟練した狩人のそれである
すぐにイカロスは問おうとしたがそれは無駄なのは自分が、むしろ彼自身が一番疑問に思っていることだろう。イカロスはそのまま観察を続ける
「ざっと目を通しただけであまり資料の怪物について目を通していないんだ、これはいったいどういったものだ?」
「さぁなぁ、全く知らん。」
「!?」
耳を疑うような言葉にレーゲンは驚きを隠せなかった。自分はともかくとしてこの森の、ましてや入り口付近の怪物を全く知らないというのはどういう事なのだ。
「知らんもんは知らんのだ、仕方がないだろう。これは俺も初めて見た」
イカロスにとってとても興味深く映るそれは、気の良いおっさんとは真逆の学者の新しい研究対象を見るような眼だった。
「この森の生態系はとても不安定で、ほんの一か月で深部の怪物が中枢まで出てきていたり、入り口付近の怪物が絶滅していたりとするのはざらな話なのだ。そういう目で見るのなら新種が出てくるのは珍しくもないんだ」
イカロスは三匹のうち二匹の爪や牙などを簡単にはぎ取り
顎の砕けた瀕死状態の小型恐竜を担ぎ上げた
「俺はひとまずこいつを荷馬車まで運んで簡単な解体だけしてくるぜ。さっきの戦いを見てる限り何も心配することはなさそうだしな」
いつもの感じの声に戻った陽気な声でイカロスは言う
「そういう事なら少し辺りを散策してから野営地へ戻りとしよう。明日から本格的な散策という事ならであろうし、せっかくなら何か食料になりそうなものでも狩って戻るとしようか」
「そうだな、この辺りは魔力が薄いから野獣系統の怪物が多い、大型の野獣種の”ファンゴ”でも狩ってきてくれれば、野営食は豪華になりそうだな」
大きな笑い声でいイカロスは返す
”ファンゴ”と言えば2本の牙が異様に発達した猪豚である
その荒々しい毛並みとその巨体は森の戦車と言っても過言ではない大きさである
ファンゴの上質な毛並と雄々しい2本の大きな牙はとても高値で取引されるらしい
そう資料にまとめられていた
「太陽が沈むまでにはそれを担いで野営地まで戻ってくるとしよう。イカロスはあたたかなコーヒーでも入れていてくれ」
「わかった、何かあれば銃を使って信号弾を撃ってくれ、風の如く駆けつける」
ニカッとイカロスは笑う
そしてレーゲンはイカロスとは反対側の
森の中枢部へ足を踏み入れていったのであった