記憶をなくした男 その2
村の名前はフローリン村、きれいな丘の上の花園が有名な綺麗な村なのだが、昔に滅んだ廃城の名残で村が大きいらしい。花園も廃城も観光名所らしく、人々の出入りがある程度あるらしい。比較的国の内陸部にあるため敵が攻めてくるなどという事もなく、いたって平和な街である。特産物はやはり近くに大きな森があるため科動物の毛皮や肉類、それを加工した干し肉等、そして村の中心部から離れたところにある大麦畑から作られるビール等が特産品らしい。
停止した馬車から降りた、ほんの1時間くらいしかたっていないのに体がいたるところ痛い
どうやら荷馬車には乗りなれていないらしい。
ローブを着た少女はというと、イカロスに挨拶をしてすぐさま立ち去った。
「んでお前さんはどうするんだ、この村では見たことねぇし、知り合いが居るってんで来たわけじゃないだろうしな。」
イカロスの言う通りこの村で住んでいるわけでもなく、知り合いが居るわけでもない。つまり今夜寝泊りする場所がない、一文無し、宿も借りれない訳だ。
「それでなんだが、いつも一緒に狩りを手伝ってもらってた昔の同僚が任務でちょいと遠くへ行っていてな、この時期は動物や怪物共が活発になる時期だから人手が欲しいんだ、短刀をしょい込むってこたぁ腕には自信があったんだろうし、住み込みで手伝ってはくれねぇか?もちろん給料もだすぜ。文無しの兄ちゃんからしたらいい話だろう?」
「それは助かるな、ではよろしく頼む。」
「そうか、じゃあこのまま一度家に来てくれ、今日はごちそうだ!」
とはいったが大体イカロスの言動には大方の予想がつく。隣人が不在だとして、この時期の動物や怪物が活発になったとしても月の収入が少々減るだけで、イカロス自信退役した軍人、狩りの知識以外にも臨機応変な対応ができるだろう、言動や行動やしぐさを見ている感じ自分の腕には自信がある。そこから導き出されるのは現村長として村でやや事を起こされ無くするため、村を出るまで自分の監視下に置くという事。同じ立場なら私でも同じことをするだろう、なんせ監視下に置くのは記憶を失った人間、何かの拍子で記憶を思い出し、錯乱して村民を襲いだしたりすると後処理が大変だろうしな。
「よぉし着いたぞ、ここが我が家だ!さぁ入ってくれ。」
歩き出して十数分でイカロスの自宅に着いた、イカロスの自宅は村長らしくかなりでかい。
家の中には勲章やら賞状やらが結構な数飾っている。結婚はしていたらしいがこの村に来るときに母子共々を首都に置いてきたそうだ、というのも息子が首都の名門学校にいるため、向こうにいたほうがいいと話し合ったからだそうだ。
むろん動物の剥製を飾っていたり、動物の毛皮の絨毯等があったりと、一人で住むには大きすぎるのではと思ったが、前の村長が建てる時に数名の使用人がいつでも泊まれる部屋を作ったり、母子などが使っていた部屋があるらしいからだという。
この村の村長は国が決めているんだという。なんせ重要文化財が二つもあるのだから必然的だろう。
大きなテーブルを二人で囲んで食べる夕食ほどさみしいものはないだろう。しかしながらイカロスの作るご飯は非常にうまかった。シンプルな味付けなのだが素材のうま味を最大限に引き出した料理で、定食屋でも開いたらどうだと言わんばかりのうまさだった。