第72話~Out of Blue~
ここは一体どこなのか、見当がつかない。
目を開ければ、真っ暗な闇の中に居た。音もしないし、何も見えない。何の生の香りすら無い。
そうだ、シャリオットに眠らされて、それから・・・・・・どうしたんだっけ?特に移動した覚えも無い。シャリオットも近くには居ないようだ。
そういえば、セレジア達はどうなったのだろうか?そう頭で思い浮かべた瞬間、目の前に映像が現れた。そこにはセレジアと思われるモンスターが勇者達に追いかけられている姿があった。周りの風景にも見覚えがあった。この風景は最初に縛り上げられて連れてこられた、そしてセレジアと出会った街、ラサマだ。
勇者達がみるみるうちにセレジアを囲む。総勢100人程度といったところか。暗がりの中から見ている事しかできないのか。
唇を噛みしめ、ジッと堪えていると、目の前に見覚えのある剣が姿を現した。これは、あのドラゴン退治以来冒険を共にしてきた相棒『サンパリーツ』だ。
剣を抜き、両手で目前に構える。その剣は再びまばゆい光を放ち始める。
いつも希望を切り開いてきたこの剣に、全ての行く末を託す。この暗闇から抜け出し、早くセレジアの所へ駆けつけたい。そして、今まで言えなかった事を、今度こそ話したい。
目に見えぬ速さで駆けた希望の光は、サイジを覆っていた闇を切り裂いた。闇を切り裂き現れたのは、まさに今まで見ていたラサマの光景であった。
剣の衝撃波がセレジアを取り囲んでいた勇者にも伝わったようで、全員その場に腰を地面についてしまった。
「一体何なんだ?」
何が起きているのか理解ガ出来ていない、きょとんとしている勇者が呟く。
「お前ら、寄って集って何やってるんだ!」
サイジは、おもむろにセレジアの前に立ちはだかる。
「勇者なんだから、モンスター倒すのなんて当然だろ?」
「こいつは、仲間なんだ。これ以上攻めないでくれ」
「バカ言ってんじゃねえよ!こっちはインパラジオ協会から話を聞いて来てんだ。お前こそ何だ?モンスターの味方するのか?裏切り者!」
腰を抜かした勇者達も次々と立ち上がり、サイジ達に剣を向ける。
「お前らこそ、何の為にモンスター狩ってるんだよ」
「は?それはみんな元の世界に帰るために決まってるだろ?」
「魔王を倒せば戻れるって話だろ?そんなのインパラジオ協会のでっち上げだろ」
「お前こそ何知ってるんだよ?何処の回しモンだこの野郎!!」
話していた勇者は激昂し、サイジに斬りかかって来た。サイジは『サンパリーツ』で応戦する。
堂々巡りの問答を続けていると、セレジアがサイジに近づいてきた。
「ブ、ブヒー」
ただ、豚になってしまって何を言っているかが全く分からない。
「あー、分かった分かった。ありがとう」
「ブー」
「おい、モンスターと何話してるんだよ。やっぱり内通者か?」
「こいつは元は人間で、インパラジオ協会と魔王にモンスターに変えられたんだよ」
「確かに、俺たちが囲んでも、全く襲ってこなかったからな、この豚・・・・・・」
勇者達も状況を察したのか、次々と剣を収め始める。
「だから、アタシは豚じゃないブヒー!」
いつの間にかセレジアの姿が戻っていた。
「語尾が豚になってるぞ、セレジア」
「そんな事無いブヒ」
何で戻ったかは分からないが、とりあえずセレジアを元の姿に戻す事が出来た。




