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青春18勇者  作者: 天川 榎
最終章
69/75

第69話~彼が服を脱ぐに至ったまでの道程・2~

「一体何のために戦っていたんだ・・・・・・バカみたいだ」

 サイジは膝から崩れ落ち、その場でうなだれてしまった。

「そういうことなんだ。今もインパラジオ協会は勇者を攫ってはモンスターに変え続けている。ただ、ここ数年はその数はだいぶ減っている。我が輩のおかげでね」

「そうなのか?」

 サイジがシャリオットの言葉を聞き、俯いていた顔を彼に向ける。

「インパラジオ協会が世界中に根を張り、クエスト依頼を出し結果を出さない、いわゆる使えない勇者をモンスター化し、淘汰を行っている。異世界から無尽蔵に来る人間達をそうやって選別している」

 シャリオットは不敵な笑みを浮かべる、

「貴様達も全くクエストをこなしていないから、インパラジオ協会から睨まれているぞ。そろそろ追っ手が来てもいい頃だ」

「そうなのか?」

「貴様のダメさ加減を見て尾行を始めて、まさかこんなにもひどいとは・・・・・・」

「悪かったな!真面目に冒険してなくて」

 少し表情が柔らかくなったと思いきや、途端に真顔に戻った。

「このままでは、貴様のメンバーもマズいんじゃないか?」

「・・・・・・そうなのか?」

「今頃、捕まってモンスターにされている頃かもな」

「その話は、本当なのか?」

 サイジは一つ、頭の中に引っかかる事があった。そう、なぜミツキを攫う必要があったのか、だ。別に勇者のことを憎んでいたりするのであれば、勇者に与する仲間などその場で消してしまえばいい話だ。

「そもそもお前が嘘をついていない保証なんて何処にあるんだよ」

「ハハ、それもそうだな。自らの身分を偽って貴様に近づいた非礼はこの場で詫びよう。だが、どれもこれも、貴様の実力を見極めるためだったのだ。貴様が勇者たり得る存在であるかを、この目で見極めるためだ」

「なら、仲間として近づくのでは無く、普通に魔王として近づけば済む話じゃないのか?こんな回りくどいことして、時間の無駄じゃないのか?」

「時間の無駄なんかではない。我が輩は数々の勇者と対峙し、ある結論に辿り着いたのだ」

「結論?」

「そうだ。戦うよりも、話してみることで、勇者の資質を見極める事が出来るのだ。戦闘では只の命のやり取りしかない。それに比べてじっくりその者とこのように会話を幾分か交わせば、どのような者か分かる」

「それが分かってどうする?」

「もちろん、我が輩を倒せるかどうかだ。無駄に戦って命を散らしては、勿体ないからな」

「なら、魔王を辞めたらどうだ?そんなに人を殺したくないなら」

「この魔王という役割は、『呪い』なのだよ。誰かに倒されなければ、我が輩は魔王から解放されることはない。魔王は誰かに譲る事は出来ない。その魔王の役割は、魔王を倒した者に受け継がれるのだ」

「・・・・・・つまり、シャリオットは、前の魔王を殺した?」

「その通り。我が輩は勇者であった。そして魔王を殺し、我が輩自身が魔王に成り代わってしまった。この連鎖は、我が輩で断ち切りたい」

「どうやって断ち切るんだよ」

「インパラジオ協会にモンスターを作らせ、モンスターに殺される。それが我が輩の願いだ。その我が輩を倒しうるモンスターの器となるものを、今まで探していたのだ」

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