第66話~ニンゲンモドキ~
「あたしのことはどう思ってたの?」
ミツキの隣に腰掛けた途端、口を開いた。
「どう思ってたっていってもな・・・・・・まあウザったいぶりっ子くらいには思ってたよ」
「それってほとんど嫌いって言ってるのとイコールじゃん」
「ってか、ミツキってそんな喋り方だったっけ?」
「あ、ああ~そういえばサイジの前じゃ初めてだよね。こういう感じ」
心なしか、ミツキの表情に大人びた憂いが帯びている気がする。
「初めて会った時は、カッコいいなって思った。お世辞無しに」
はにかんだ笑いを見せてくるミツキ。
「その頃はあたしの中には何のとりえも無くて、ただ世界を彷徨ってた。無意味に時間を過ごしてた。でもね、あの日、あなたに会って、あなたのパーティに入って、人生が変わった。今まで落ちこぼれだったあたしに、あなたは生きる意味をくれた。あたしにとってあなたは大切な人なの」
不意に手を握ってきた。その手は少しばかり汗で湿っている。
「た、大切な人って・・・・・・」
「だから、あなたのことが好きなの」
上目遣いでボクに迫る。顔が眼前に迫り、頬を吐息が撫でる。
「今更なんだよ、パーティからも離れて、どの口が言ってるんだよ」
「あたし、本気だよ」
ミツキの瞳は涙で潤んでいるように見える。
「本気って言われてもさ・・・・・・無理だよ」
ボクはミツキから顔をそらし、両手で突き放す。
「なんで?」
「ごめん、それは言えない」
その場を立ち去ろうとしたその時、ミツキに手首を掴まれた。
「ねえ、ちゃんと話してよ。わたしに」
「話してどうなる」
「わたしからもう逃げないで」
ミツキはボクの背後から抱きつき、体を密着させてきた。
「よせよ」
ボクから無理矢理体を引き剥がそうとするが、ミツキは強い力で離れまいと抵抗する。
「もしかして、まだ言ってないの?」
「何を?」
「セレジアにまだ好きって伝えてないんでしょ?」
その言葉を聞いた途端、全身が火を付けたように熱くなった。
「な・・・・・・な、な、何を言ってんだお前は!!!」
「いや、普段の行動見てればバレバレだし」
ミツキはボクの慌てっぷりを見て、ボクの体から離れた。
「好きなんでしょ?セレジアのこと」
「・・・・・・はい」
「なら、早く伝えなきゃ」
「いや、でも」
「でも、じゃない!」
ミツキはボクの両手首を掴み、目の前で叫んだ。
「いつ死ぬか分かんないのに、想いを伝えないでどうするの?わたしだって、勇気振り絞って出来たんだよ。出来ないわけないよ。いつまでも同じところで立ち止まってたら、進むものも進まないって!いい?今度こそ成功させるのよ?分かった?!」
ミツキの唾がボクの顔に掛かるほど力説されたら、動かないわけには行かないだろう。
「ああ、分かったよ」
「よし!そうと決まれば魔王城へレッツゴー!」
「え?ちょ、ま・・・・・・」
ミツキが取り出した睡眠薬を染み込ませた布で、ボクはあっさり意識を失ってしまった。




