第63話~サイケ毛むくじゃら男~
「おまいらなんなんだ!こ・・・・・・殺しに来たのか」
サイケ毛むくじゃら男は懐からナイフを取り出し三人に向けて突き立てる。
「ち、ちょっと待って、落ち着こう。私達は敵じゃない。ほら」
そう言うとサイジは二人に目で合図を送り、三人は手を頭の後ろに当て無抵抗のポーズを取った。
「ほ、ほんとなのか?たしかめていいか?」
震える声でそう言い放つと、サイケ毛むくじゃら男は三人の下へナイフを突き立てたまま近づいてくる。
「ああ、もちろんだとも」
「よし、じゃあまずはおまいから」
呼びかけに反応し、サイケ毛むくじゃら男はサイジの方に向かっていった。ジリジリと二人の距離は近づき、モサモサの髪の毛が肌に触れようとしたその時、サイジ以外の二人が瞬時に戦闘態勢に入り、あっという間に腕を地に着かせ、サイケ毛むくじゃら男を取り押さえた。
「ひ、ひどい~だ、だますなんてひどいんだぞ~!」
「別に騙してないよ、ほら」
そう言うと、サイジはサイケ毛むくじゃら男のパンタロンのポケットを漁り始めた。
「ちょっち~だめ~く、くすぐったい~ふとももやめてぇ」
ポケットを弄る刺激に悶えるサイケ毛むくじゃら男。蛇のようにクネクネと踊り出すが、がっちり二人に押さえつけられているので、逃げることは叶わない。
「気持ち悪い声出さないでもらえますか?ただでさえ見た目で引いているので」
「き、気持ち悪いだと?!これはおいらのアイデンティティだ!!」
「こんな格好してて、良く襲われなかったな・・・・・・」
「おいらには、仲間がいるかんな」
「その、仲間はどこに居るんだ」
「おまいらには言えねぇ。こんな見ず知らずの奴に乱暴する奴なんか信用できるわけないでしょ~」
「まあ、そうだよな」
そう言うと、二人はサイケ毛むくじゃら男を押さえつけていた手を放し、側から離れた。すると解放された事を良いことに、サイケ毛むくじゃら男はすぐさま立ち上がり、セレジアに飛びついてきた。
「おいらはこういうカワイコちゃんがだ~いすきなんだよね~」
サイケ毛むくじゃら男はモジャモジャに生え揃った腕毛をセレジアの頬に擦り当て始めた。
「え、うわーちょっと、口に腕毛が!きもっ、ねえ、見てないで助けてよサイジ!」
「あ~はいはい」
サイジは呆気にとられてその場を動こうとしない。
「何よ!その投げやりな返事は」
「う~む、柔肌セクシー」
当のサイケ毛むくじゃら男は官能に浸っている。もう我慢ならないと、セレジアはムチを取り出し、サイケ毛むくじゃら男の太ももに思いっきりしならせ、喰らわせた。
「は、はひぃ~~~~~」
男は絶叫し、力尽きたように地面に倒れ込んだ。
「とりあえず、私たちは勇者なので、街で何が起きたのか詳しく教えてくれませんか?」
「ああ、わかった。とりあえず今生き残っている村人が住んでいるアジトにお連れしよう」
サイケ毛むくじゃら男は這いつくばったまま、尺取り虫のように動き出し、三人をアジトへと導いてくれることとなった。




