第61話~誰にも負けない、たった一つの才能~
「ネム!!」
セレジアはネムが落下したと思われる地点へ急行した。
「うう」
地面に叩き付けられたはずのネムは、傷一つ無く大地に立っていた。
「嘘?本当に大丈夫?」
「まあ、これがあったからね」
ネムはどうやら電磁バリアで衝撃や攻撃を防いでいたようだ。どこまで用意周到なんだ。
「誰にやられたか分かる?」
セレジアは地面に膝をつき、ネムに問いかける。
「う~ん、少なくとも、魔法では無いんだよな~」
「じゃあ何でやられたっていうのさ」
ネムは上体を起こし、近くの草むらに落ちていた金属の破片を拾い上げた。
「ロケットランチャーだねえ」
「嘘?!どこから撃ってきたんだ・・・・・・」
「ううん、弾道から計算するに、あっちかな」
ネムが指差したのは森の奥にある洞窟であった。そこからロケットランチャーが放たれたのであれば、そこに村の住人が避難しているのであろうか。
「とりあえず行ってみるしかないわね」
ネムも少し休んで元気になり、二人は洞窟へと向かいだしていた。
一方、サイジもネムが打ち上がり撃墜された瞬間を目撃していた。
「うわ・・・・・・嘘」
空でネムが何かで打ち落とされて、そのまま地上へ急降下していった。まあ、きっとネムのことだから自分のメカか何かで助かっているんだろうけど。
私には何もない。セレジアのようなムチなどの武器スキルや、ネムのようなメカニックのスキルも無い。私に唯一あるとすれば、この剣『サンパリーツ』だけだ。でもこの剣も、使える時と使えない時があるから、私が安定してパーティに貢献することは出来ない。残念ながらタダの役立たずなのだ。
セレジアに最近、『サンパリーツ』がタダの剣の時でも使えるようにと剣術を教えて貰った。でも、それも本当に実際の戦闘で発揮出来るかどうかも分からない。実戦経験がほぼ無いに等しいのだ。
ただでさえパーティメンバーをシャリオットに一人掻っ攫われたばかりだ。余計に私が頑張らなければ勝てる戦いも勝てなくなってしまう。そのことを意識して、セレジアは私の態度を見て見限ったのだろう。
・・・・・・私はいざとなった時に、パーティメンバーを守る事ができるのか?こんな山道で勝手にへこたれて、駄々をこねて地面に寝そっべってる奴が、メンバーとして貢献しているといえるのか?ただ怠けて、セレジアやネムに後は任せたみたいな態度になってるんじゃ無いか?
でも、私が出たところで何が出来るんだよって話にならないか?その場にただ居て、戦っている振りみたいな事をして、パーティメンバーと勝利を素直に分かち合えるのか?そうじゃないだろ。
私にパーティで何が出来るか。戦うことはまず向いていない。一撃必殺の『サンパリーツ』の一振りだけしか攻撃は出来ない。それ以外で私の得意分野は無いのか。・・・・・・あるじゃないか、避けるという特技が。誰よりも秀でている才能『回避』が私のアイデンティティだ。戦う才能は無くても、敵の攻撃を避け続けて、囮になることは出来るはずだ。
まだやれる事はあったんだ。ここで寝そべっている場合じゃない。
サイジは再び立ち上がり、目に留まった黒煙の上がっている方と向かいだした。




