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青春18勇者  作者: 天川 榎
第1章:始まりの地 ラサマ
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第06話〜2人のお泊まりはシ・ゲ・キ・テ・キ!〜

 ようやく申請が終わり、その証に手形とバッジを貰った。

 これで私達は正式な『勇者』だ。・・・・・・って、あれ?

「セレジアさんは私が来るまで、『勇者』じゃなかったんですか?」

「え、言って無かったっけ?」

「てっきり手練れの『勇者』かと思ってましたよ」

 その言葉に少し照れくさそうにするセレジア。

「ほんと?」

「お世辞で言っても何も返ってこないですから」

「・・・・・・」

 黙り込んでしまった。

 こういう時、どう返せば良いか。これだからコミュ障は・・・・・・

 その様子を見かねたのか、近くにいた村長が声を掛けてきた。

「手続きは終わったかね?」

「はい。この通りです」

 私は誇らしげにバッジを村長に見せる。

「セレジアも無事に貰えたかい?」

「はい!村長の御陰です」

「別にわしは何もしとらんよ」

 村長は恥ずかしそうに、ヒゲを弄り誤魔化す。

「最初お前は建物の中さえ入れず、たじろいでいたもんな・・・・・・」

「その話はしないで下さい!」

「まあまあ、君が成長してくれて良かった、ほんと」

 実は各自治体には輩出した冒険者の数とミッション処理数で予算が決まる。中央政府の役員が全員インパラジオ協会所属であるため、金融・行政はその協会に掌握されている。村長も予算を確保するため、『勇者』獲得に躍起になっているという訳だ。そして何より、勇者の中の勇者つまり魔王を倒す存在である『主人公』が輩出されれば、莫大な金が下りてくるという算段である。

 つまり、村長は予算確保の為に私達に声を掛けたということである。あまりにも可哀相とか、感情的な動機では無かったのである。

 そんな話を村長は得意げに話し、役場へ帰っていった。

 その後夜も更けてきたので今夜の泊まる場所についての話になった。

 ちなみに受付のロリコンババアによると、インパラジオ協会の制度に基づくと、1パーティにつき1部屋しか貸し出されない。どうかしているとしか言いようが無い。まあ、ラッキーといばラッキーだが・・・・・・

「いやいやいや。いくら何でも相部屋は流石にない、ですよね?」

 私がセレジアに話を振る。だがセレジアは俯いたまま考え込んでいる。

「いや、これはこれでありだ」

「何故ですか?」

「フフ、いや、簡単な話だよ明智君。夜な夜なアンタをこのムチで・・・・・・フフフ」

「その背筋も凍るような不気味な笑いはやめて下さい」

「ハハ、興奮が、収まらないや」

 そう言うとセレジアは私の首根っこを掴み、宿泊部屋へと連れ出した。

 壁はタンポポの花があしらわれたいかにもファンタジーな壁紙があしらわれ、中にはお粗末な木で出来たシングルベットが4つ。トイレと風呂がついている。

 窓際にはTVが備え付けられ、部屋の中央にはこれまた木で出来た円卓とイス4つが配置されていた。

 その素晴らしい部屋に着くなり、セレジアは私をベッドに寝かせ。両肩を鷲掴みにする。

「ど、どうしたんですか!一体!私が一体何をしたって言うんですか!」

「・・・・・・嬉しかった」

「え?」

 意外な答えに驚き戸惑う私。

「アタシとパーティ組んでくれるって言ってくれた時、本当に嬉しかったんだから!」

 といいつつ私をムチで叩く。

「はうっ!でも、この村に結構長くいらしたんですよね?そういう話は無かったんですか?」

「あったわ。でも・・・・・・全部断られたわ」

「もしかして、その今手に持っている物が原因で?」

「まあ、それも一理あるわ。でも、それだけが原因じゃないの」

「それは認めるんですね。私はそれしか思いつかないのですが」

「アンタから見ればそれしか無いかも知れないけどね。実はパーティを組むにもバランスっていうのがあってね。アタシやアンタみたいな勇者を名乗っている奴はごまんと居るの。実力も相当な物をもっている人がね。私の実力なんて、中ぐらいに入れば良い方だし、本当はそんなに強くないのよ」

 セレジアは私から体を離し、私の足下の近くに腰掛ける。

「そんな・・・・・・セレジアさん十分強いですよ!今日その実力見せてくれたじゃないですか!」

「アレはまあ、確かにアタシが勝ったけど、アンタで苦戦している様じゃだめなの!」

「確かにウブの素人を瞬殺出来ないなんてアレですね」

 その瞬間、ムチが飛ぶ。しかしタイミングが予測出来たので、私はすかさずベッドを転がりそれを避けた。

「結局そういうことなのよね」

 セレジアは唇を噛み締める。

「これは単純に私の特技なだけです」

 私は上体を起こし、言い放つ。

「そういえばセレジアさんって、私と一緒で異世界から来たんですよね?」

「そうだけど?」

「何かやられていたんですか?」

「剣道を少しね。いいところまで行ったんだけど・・・・・・報われなかったから途中で諦めちゃった」

「それで何もかも嫌になって引きこもっちゃった感じですか?」

「ハハハ。それだけで引きこもれるならまだ良いよ」

「え?何があったんですか?」

「さあ?また後で教えてあげ、る!」

 そう威勢良く宣った後、突然服を脱ぎだした。まだ上着だけか・・・・・・

「ちょっと!い、い、いきなり何ですか!!!」

 反射的に手で眼前を覆う。隙間があるが、体裁を取り繕うには打って付け。

「アンタ、女慣れしてないと見た」

「そりゃそうですよ!ずっと引きこもってたんですから」

「そうなの?アタシと同じね!」

 脱いだ服が私に投げつけられる。フローラルの香りがする。柔軟剤はホールドか。

「と、とりあえず、服着て下さい!」

「やだ。シャワー浴びたい。良いでしょ」

「良いですけど、そういうのは脱衣所でやって下さい!!!」


 こうして、初めての夜は賑やかに更けていった。



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