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青春18勇者  作者: 天川 榎
第4章:機械都市 セインテール
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第54話~臭い物にはフタをしろ!~

 ベルゼの頭の光が指し示したものを頼りに、再び冒険の旅に出ることを決めた一行。旅の準備を整えるため、一旦ネムの家で今後について話し合うことにした。

 ネムに導かれた裏道に入れば、表通りとは訳が違い、そこら中の建物から黒く煤けた排気ガスを浴びて、体が汚れてしまった。

「嘘だろ・・・・・・」

 サイジは咳き込みながら、早く道を抜けようと我先に駆けだした。

「ああ~だめだって。その先は」

 ネムが何か言いかけたが、時既に遅し。サイジは見事に川へ落ちてしまった。

「その川、下水流れてるから気をつけてね」

「その前に止めるとか無いのかよ!」

 既に下水の川にダイビングしてしまったサイジから、嘆きの叫びが湧き上がる。

「だって、うきうきで走ってる姿をみたら中々言い出せなくて」

 サイジを見るネムの目は、さながら小動物を愛でるような眼差しだ。

「ちょっと、見守ってないで助けなさいよ」

 セレジアがすかさずサイジに手を伸ばす。地獄に垂らされた蜘蛛の糸の如く必死に手にすがり寄り、川から這い上がった。言わずもがな、サイジの体は下水の腐臭に染め変えられている。

「全く、ちゃんと前見て歩きなさいよ」

「しょうがないだろ、煙たかったんだから」

 セレジアも例に漏れず体中が煤けている。きっと煙の臭いで鼻の感覚が麻痺してしまったのであろう、サイジの腐臭には全く反応がなかった。

「まあ、とりあえずウチでシャワー浴びなよ」

 ようやくネムにも罪悪感という概念が芽生えてきたのか、少ししょげた顔を覗かせた。


 やっとの思いでネムの家に帰る。様々な地獄を味わった一行は、玄関にたどり着くや否や特大の溜息をついた。

「やっと着いたよ・・・・・・」

 サイジがぼやいたのも束の間、ネムが口を開く。

「さ~て、シャワーでも浴びてすっきりしようかな~」

 ネムがシャワールームに駆け込もうとしていたのに、いち早く反応したのはセレジアだった。

「ちょっと待って。順番が違うでしょ」

 セレジアがネムの肩に手を掛け、その場に引き留める。

「え?なんで?」

「どう考えてもサイジが一番最初でしょ?アンタが川へ突き落としたようなもんだし」

「なんでサイジばっかりエコヒイキするのさ!まさか、セレジアってサイジのこと・・・・・・」

 セレジアは一瞬で茹でたタコのように紅潮し、ネムに掴み掛かる。

「ななななにを言ってるのアンタ!そ、そんな訳ないでしょ!!」

「ほら~動揺してる~」

 セレジアの額から黒い汗がしたたり落ちている。唇が小刻みに震えている。ネムはその様子を面白がってセレジアの頬を掴み、伸ばしたり縮ませたりしてからかっている。

 さすがにその光景に見かねて、サイジがネムとセレジアの間に割って入る。

「もうやめなよ。セレジアが嫌がってるだろ?」

「うゆぐっえおうお?」

 セレジアが何か言おうとしているが、何を言っているかがさっぱり分からない。

「もういい飽きた。わたし先はいりま~す」

 つまんでいた頬を離し、ネムは一瞬の隙を突いてシャワールームに駆け込んでしまった。

「あ~!抜け駆けするな!!」

 しかし時既に遅し、シャワールームには鍵か掛けられており、中に入る事はできなくなっていた。

「残念でした~」

「こら!開けなさい!」

 金属製のドアを必死で叩いても、破られる訳も無く抵抗むなしくネムにシャワーは先行されてしまった。

「まあ、待ってればいずれ入れるからしばらく辛抱しよう」

 サイジは興奮が収まらないセレジアの手を取り、気を落ち着かせようと試みる。だが、サイジは気づいていなかった。この行為は今やセレジアには逆効果に働くことを。

「ちょ、何?へ?」

 セレジアもサイジに手を取られ、正気では居られなくなる。それもそのはず、今この空間はサイジとセレジアの二人っきりであるのだ。

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