第53話~ハゲた頭はダイヤモンドの輝き~
「ちょっと!それ知ってるなら先に言ってよ!」
「ごめん。逆に魔王関係ならこっちの方が良い情報仕入れられるんじゃ無いかと思ってさ~」
ネムが舌を出し、頭を自ら撫でて照れ笑いを浮かべる。
「分かったよ、じゃあ市長に面会しよう。ネムはこの街のお偉い人には顔が利くんでしょ?」
「うん。この街で一番税金払ってるしね~」
「なんというブルジョアジー・・・・・・」
ということで、仕切り直して市庁舎に向かうこととなった。ネムが早速市長にアポイントメントを取り、面会が即承諾された。さすがは億万長者。
「ほら~!このセカイじゃ珍しい『携帯電話』だよ~」
ネムは自慢げに二人に見せびらかすが、いわゆるストレート型の古い携帯電話を模して作ったものと見られるので、あまり感動は起きなかった。
「へー」
「ちょっと!この携帯電話はこの街の住人なら持ってて当たり前の必需アイテムなんだから!しかもこれ設計して販売してるの私だから」
「へー、ぼろい商売だな」
段々会話をしているのが鬱陶しくなったサイジは、目線を合わせず上の空で適当に返答する。その様子にネムは苛立ちを覚え始める。
「あーそう。そんな態度取るなら市長に会わせてあ~げない」
ネムが携帯電話をポケットから取りだし、電話を掛けようとする。
「はいはい分かったから、すごいすごい!やっぱりネム様は天才なんですね」
「当然!」
機嫌を直したネムは、一人スキップで鼻歌交じりに先へ先へと進んで行ってしまった。
「はあ・・・・・・機嫌直ったらすぐこれだ」
「これからどうなるのかしら」
二人の悩みの種は増える一方である。
とっとと先へ急いでしまうネムを慌てて追いかけてようやくたどり着いた場所は、ネムの家に負けず劣らずの高層ビルだった。
正面の扉を開け、受付嬢にアポイントメントの内容を伝える。すると、案内用のロボットが奥からお出ましし、一行を導いてくれた。もちろんこのロボットは私が作ったとネムの自慢がおまけについた。
エレベータに乗せられ、当然のごとく最上階へ案内された。たどり着いたその場所は、日光を遮断した何やら怪しげな雰囲気を漂わせた部屋であった。
「うわ、なにこれ」
第一声にセレジアが口走る。
「ようこそネム様・・・・・・とそのご一行」
窓を見つめ街を眺めていたハゲの紳士服を着た中年男性が振り向きざまに話す。
「どうも」
「おやおや、勇者の方が来るとは珍しい。何年振りかな」
ハゲがサイジ達に近づき、手を取って二人と握手を交わす。
「私はこの街の市長、ベルゼだ。どうぞよろしく」
「どうも」
「ところで、私に何か聞きたいことがあるとか」
「はい。魔王のことについてなんですが」
サイジが話を切り出す。
「ほう、魔王のこと?」
「そうなんです。私たちの仲間が連れ去れてしまって、行方を追っているんです」
「なるほど」
ベルゼは再び窓の方を向き、独り呟いている。
「何か魔王の居場所とか、居場所が分からなければ手がかりだけでもいいんです」
セレジアが声を張り上げてサイジの言葉に付け足す。
「居場所か・・・・・・残念ながら居場所は分からん。だが手がかりならあるぞ」
そう言ってベルゼはズボンのポケットからタオルを取り出し、自らの頭を磨き始めた。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
物凄い形相でひたすらちから強く擦るベルゼ。
「ちょっと!何ふざけてるんですか!こっちは真剣なんです!」
セレジアがベルゼに詰め寄る。しかし、その擦る手を一向に緩める気配はない。
「もうすこし・・・・・・もう少しなんじゃ」
いよいよ摩擦熱で頭から湯気が出そうなところで、突然手を止めた。
「恐らく、魔王はここを通ってらっしゃる」
ベルゼの輝く頭に浮かんだのは、白い光の点であった。
「これで、何が分かるって言うんですか?」
「これは、こうすると、多分分かるんじゃないかな」
窓の方に光る頭を向ける。すると一筋の光が窓の向こうへと延びていった。
「この方角に魔王はいらっしゃる、はずじゃ」
「本当ですか?」
「おそらく、この方角は火山の街『ドンガマグ』の方じゃ。そっちに行けば何か分かるかもしれんの」
「「ありがとうございます!!」」
二人は先ほどまでの表情とは打って変わり、眩しい程の笑みを浮かべていた。