第52話~どうしましょうかこれから~
シャリオットとミツキが魔王城に消え去った後、気絶したセレジアをネムの家で介抱していた。
「ううっ・・・・・・」
ようやく目を覚ましたようだ。
「おはよう」
「あれ、ここは?」
「ネムの家だよ」
目を擦りつつセレジアはゆっくりと体を起こす。感覚を取り戻してきたのか、頭をさすり始めた。
「あれ、アタシいつの間に気絶してたの?」
「そうだよ。驚いたよ、いきなり気絶して倒れるんだもの」
「どれくらい寝てた」
「半日くらい?」
その言葉を聞き、セレジアは様相を変え取り乱し始めた。
「シャリオットは?」
サイジは浮かない顔をして、首を横に振る。
「どういうこと?ねえ」
セレジアがサイジに詰め寄る。
「ミツキと一緒に魔王城に帰っていった」
「なんで追いかけなかったの?!」
セレジアの声が部屋に響き渡る。反響音が耳を劈く。
「そりゃ、セ、セレジアが倒れちゃったから」
「アタシなんてほっといて、助けに行くべきじゃないの?」
「だって、助けないとまたムチで叩かれるような気がして」
「へえ・・・・・・」
セレジアは側にあった鞄を弄り始めた。
「いやいやいや!まだそんなに動いちゃダメだって!」
「おやおや?早速盛り合ってるんですかお二人さん」
騒ぎを聞きつけたネムが部屋に入ってきた。
「「盛り合ってないわ!!」」
綺麗な二人のユニゾンが部屋に心地よく響く。
「息ぴったりだね~」
「「ぴったりじゃない!!」」
いきり立っている二人を落ち着かせ、一息ついたところでネムが口を開く。
「結局魔王はどこに行ったんだろうね」
「さあ。そもそも同じセカイに居るのかすら分からないしね」
サイジが不満げに呟く。
「だったら、探すしかないんじゃないの?手掛かりでも何でも良いからさ」
セレジアがベットから飛び起き、仁王立ちで話す。
「でも、魔王の場所なんて知ってる人なんているのかな~?」
ネムがジーンズのポケットから板ガムを取り出し、口に放り込む。
「勇者案内所とかで聞いてみれば、もしかしたら知ってるかもよ」
セレジアが答える。サイジはその回答に首をかしげる。
「いや・・・・・・そんなにあっさり分かるものかな・・・・・・」
結局セレジアに押し切られる形で、街に繰り出す事となった。
「ところで、ネムってアタシ達の味方なの?アタシを介抱したり色々してくれてはいるけど」
「まあそうだね。あれほどの魔法使いは世の中には居ないしね。もっと色々な角度から見てみたいし。魔王を捕獲して解剖するまでは、みんなを手伝うよ」
「ああ、そう・・・・・・解剖、ね」
例によってこの街にあるインパラジオ協会の勇者案内所に向かった。やはり機械の街ということもあって勇者自体の数も少ないのか、無数の高層ビルの狭間にぽつんと木造立ての小屋が一つだけという質素な造りだった。
「ごめんください・・・・・・」
館内はとても清潔感が無く、日が差していないため陰気な感じが辺りを支配している。心なしかかび臭い。
「誰か、居ますか?」
セレジアが受付に近づき呼びかける。すると、受付の奥から足音が聞こえて来た。
「なんだい、うるさいなぁ」
受付嬢の幼女が現れた。昼寝をしていたのか目を擦っている。
「あの、聞きたいことがあるんですけど」
「何じゃ」
「魔王の居場所について何ですけど・・・・・・・」
「自分で探せぃ。じゃあな」
そう捨て台詞を残し、奥へ消えていった。
「ちょ、ちょっと!」
「まあ、あんまり当てにしない方がいいかもな。今の感じだと」
サイジがセレジアの肩に手を乗せ、慰めにかかる。
「全く、インパラジオ協会って何なのかしら!世界を救う気がないんじゃないの?」
「モンスターもここら辺は居ないし、居ても機械が何とかしちゃうしね~」
ネムが私の御陰といわんばかりに、鼻高々に話す。
「なるほどね。そりゃ街でもここでも、勇者が人っ子一人居ないわけだ」
セレジアが煤けた窓から空を儚げに見つめる。もう情報を得る伝は無いのだろうかと二人は思い込んでいた。だがそんな憂慮はつゆ知らず、ネムが新たな手段を提示してきた。
「もしかしたら、市長なら知ってるかも」
「嘘?!なんで?」
「ああ、なんだか市長、魔王と友達みたいよ」




