第05話~冒険には金が付き物~
「おめでとう!」
パーティが組まれた瞬間を見届けていた村長から惜しみない拍手をもらった。
「いや~、彼女じゃ無理かな~と思ってたんだけどね」
セレジアはそれを聞いて、顔が紅潮している。
「余計なこと言わないで下さい!」
セレジアの興奮が私にムチとなって伝わる。
「痛っ!」
「あら、普通のリアクションじゃない」
「もう慣れました」
さすがに何度も叩かれれば、感覚が麻痺する。慣れるのも考え物だが。
いくつかくだらない会話の応酬を続けた後、村長にある場所を紹介された。
「ここが、冒険者センターだ」
村長に指さし紹介されたのは、『冒険者センター』という摩訶不思議な物だった。
村長曰く、この施設がこの世界のあらゆる場所に点在し、私たちのような魔王討伐を目指す者に無料で貸し出されるものである。もちろん借りるにも条件があり、勇者及びそれに準ずる冒険者の資格を持つ者のみに限られている。
このセンターで出来ることは主に3つだ。
1つは、宿泊。周りの宿屋より格安で泊まることが可能だ。
2つ目は、報酬受け取り。各センター周辺での困り事や、魔王関連の討伐依頼がこのセンターに舞い込み、それを勇者達が解決し、その代わり報酬を得る。もちろん依頼の中身や達成度によって報酬額にばらつきがある。勇者達の主な収入源がこれになる。
そして最後は、物品売買である。勇者に必須な薬草や武器などがここで手に入る。
どれもこれも魅力的なサービスだが、実は勇者など職業のランク毎に提供されるものが差別化されている。つまり手練れにならなければ良い境遇を手に入れることは出来ないのだ。
もちろんランクは依頼をどれだけ熟したか、どれだけ戦闘で勝利を収めたかによって変わる。戦いで勝ちが続けば当然ランクが上がり、負けが続けばランクは下がる。現在最高ランクが50まで設定されている。
まずは利用出来る様になるには、協会に申請をしなければならない。このセンターを含め運営するその協会こそが『インパラジオ協会』である。
街には似つかぬコンクリートが剥き出しの3階建てのビルに入ると、正面に受付があった。
受付には猫耳を付けたお美しい幼女が席にドッカと腰掛け、偉ぶっていた。
「おまえらなんのようだ?」
「いや、勇者の登録の・・・・・・申請を、行いたいのですが」
私が挙動不審に幼女に近づくと、
「おい、それ以上ちかづくな!けーさつよぶぞ!」
そういって幼女が取り出したのは、杖であった。
「だから、申請したいだけだからあああああああああああああああああああああああ!!!!」
突然幼女が持っていた杖から光の玉が勢い良く飛び出し、私は見事出入り口に放り出された。
「ざまあみろ!これだからロリコンは・・・・・・」
「いやだから勇者とパーティの申請したいだけなんですが」
セレジアがすかさずフォローに入る。
「なんだ、そういうことならはやくいえ」
「いやいやそれはアンタがいきなりアイツの顔を見てすかさずロリコン呼ばわりしたのがいけないんでしょ」
「それはすまん。さいきんロリコンがおおいものでな」
そう幼女はぼやくと、指を鳴らす。すると突然幼女の周りに靄が発生し、瞬く間に老女に姿を変えた。
「何?変身魔法、だと?」
「そうじゃ。何か文句でもあるのかい?」
「いえ、驚きました。魔法にまだ慣れてないもので」
その時ようやく私は目を覚まし、目の前の受付嬢が老女に変わっているのに気づく。
「あれ、さっきの幼女は?」
「そこにいるわよ」
「え?」
「わしが幼女で無くて悪かったな」
そう悪態をつかれながらも、私たちは、無事に冒険者の申請を終えて、晴れて正式な資格者になった。