第46話~逃避行~
運転手の口から吐き出された言葉に一同愕然とした。
「ちょっと!それどういうこと?」
セレジアが前のめりになって運転手に問いかける。
「それって何も、魔法の構造を暴くって言って捕まえた魔法使いを解剖しちゃうって話よ」
もうそれ以上、運転手から二の句を告げることはなかった。
鎖につながれたまま、ネムの研究所へ連れて行かれた。
「ここでおとなしくしてろよ」
そう言われて入れられたのは、いかにも動物を閉じ込めておくのにうってつけの鉄格子の牢屋だった。その牢屋の中にはミツキの姿は無かった。
私たちは牢屋に押し込められ、鍵を閉められた。鉄の重低音が鳴り響き、衝撃で体が硬直する。
「ちょっと!ここから出しなさいよ!」
セレジアは必死に鉄格子を掴み揺するが、当然何の変化も起きない。
「そんなんで出してくれるわけないでしょ」
私がなだめに入ると、シャリオットが突然肩の辺りをモゾモゾと動かし始めた。
「どうしたの?」
「何を言っているのだ?鎖を外しているのだぞ?」
そう言うとシャリオットは肩を意図的に脱臼させ、鎖に捕らえられている手を眼前に持ってきた。そのタイミングを見計らい肩を元に戻し、両手首をひねり鎖を断ち切った。
「ほら、この通り」
千切れた鎖を私たちに見せてくる。
「いやいやいや、普通肩外すとか出来ないからね・・・・・・」
私も試しに肩をはずそうと試みるがもちろん上手くいく訳がなく、その場でコソコソ怪しい動きを見せるだけで終わった。
「全くこれだから素人は・・・・・・ちょっとしたコツがあるんだ」
そう言って、シャリオットは私の両肩を掴む。
「待ってくれ、な、何かイヤな予感が・・・・・・肩外す前に鎖を切ってくれないかな?」
「大丈夫!肩外すのと鎖切るのはそんな大差ないからさ」
シャリオットは満面の笑みを浮かべ、勢いよく肩を外側に引っ張る。
「待て待て待て、これくらい自分で、グギャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
私の肩はシャリオットの物凄い力のモーメントを受け、未体験の角度に曲がった。肩から凄まじい、針を無数に刺されたような痛みが走る。
「大丈夫大丈夫。直ぐ終わるからさ」
「早く!早く戻して!」
怪訝な顔を見せるシャリオットは仕方ないなと愚痴をこぼしながら私の肩を再び掴み、元の位置へ戻す。
「アグッ」
今まで口に出した事の無いような擬音が漏れる。
「じゃあお前はここでおとなしくしてるんだな。我が輩はセレジアと共にミツキを救い出すから心配無きよう」
シャリオットはそう私に告げると、セレジアの鎖を手刀で断ち、さながら王様と姫のように手を取り立ち上がらせる。既に力を制御する物は取り払われているわけであるから、檻などタダのオブジェに過ぎない。シャリオットはあっさりと鉄の格子を拳で軽く粉々に破壊し、その場を立ち去った。




