第41話~魔法少女、家出少女に~
無事に仲直りも済み、泊まっていたテントに戻ってきた。だが、明らかに周囲の雰囲気に違和感を感じた。それを裏付けるかのように、テントの中が荒らされ、辺りに物が四散している状態だった。
「なにこれ・・・・・・」
セレジアはテントの惨状を見るやいなや、すぐさまミツキを探し始めた。私もそれに続くように探し始めた。テントの周辺は砂だらけの荒れ地で、草一つ生えていない。しかし、この辺りは風が吹かない無風地帯なので砂嵐が起こる心配は無い。それ故、砂に付けられた足跡は中々消えないのだ。
「足跡を探しましょう。まだそこまで遠くに逃げてない、はずだから」
セレジアは語尾を濁らせ俯いた。
「そうだ。我が輩は女の子の匂いなら何処までも追跡出来るぞ」
シャリオットは鼻をピクピクさせて、辺りを嗅ぎ始めた。
「そ、そう、さすが変態ね」
表情が暗くなっていたセレジアに、少し明るさが戻った。シャリオットはミツキの匂いを見つけたのか、導かれるようにテントの辺りを離れ、道の方へと近づいていった。
「おっ、あっ、おや、ここで匂いが途切れている」
シャリオットが指さした場所には、車輪の跡が克明に刻まれていた。その車輪の跡が真っ直ぐ道に沿って延びているのも確認できた。
「アタシ達がここにテントを張るまで、こんなの無かったわよね」
「ああ、もちろん」
元々ジャモリスカと今向かっているセインテールとの交易は全くといって良いほどないそうだ。ジャモリスカがほぼ未開の文明であること、そしてマギルカとの対立もあるため、この道路は勇者のような物好きな者しか使わないという。
「丁度アタシ達が喧嘩してテント飛び出して、戻って来る間にミツキを連れ去ったのかな」
「シャリオットもここで匂いが途切れているっていうなら、間違いないだろ」
ここで匂いが途切れているということは、ここでミツキが馬車か何かに乗せられ連れ去られたということを意味している。車輪の跡が何処へ続いているのかが分かれば、自ずと犯人の行き先が判明する。
「ねえ、アタシ達ってどっちから来たっけ」
「大きな森が見えるあそこから来たハズだ」
シャリオットは、道の先に見える森を指さした。確かにジャモリスカを発つ際に見覚えのある森だ。その森に向かって車輪の跡は延びているかというと、全くの真逆であった。
「とすると、ミツキはセインテールへ連れ去られた可能性が高いな」
「行きましょ。一分一秒待ってられないわ」
「か弱き乙女のピンチに紳士が駆けつけないことは言語道断。我が輩も一肌脱ごう」
そう言って、シャリオットはブーメランパンツをおもむろに脱ごうとする。
「そういう『脱ぐ』は必要ない!穿いてなさい!!」
セレジアがすかさずシャリオットの尻に鞭を入れる。
「ひゃぃぃっぃい!!!!」
いつもの調子に戻ったセレジアを見て、なぜだかほっとしている私がそこにはいた。
一行は早々にテントをたたみ、機械都市『セインテール』に我先にと走り出した。




