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青春18勇者  作者: 天川 榎
第1章:始まりの地 ラサマ
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第04話~コミュ力無い私でもパーティ組めますか?~

「いやお前じゃ無理だろ」

 ポニテ美女から早速罵倒される。

「そんなこと言われても、やってもないのに否定されると傷つきます」

「そういうナヨナヨしたところだ、よ!」

 今度はポニテ美女に、ブーツのヒールを尻にお見舞いされた。

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「もう同じ反応だから飽きた」

「え、そういう趣味の方だとてっきり」

 その文言を聞いた途端、後方から風を切る音がした。そう、彼女はこの一瞬に私に蹴りをお見舞いしようとしているのだ。私は今度こそ避けてやろうと、全神経を研ぎ澄ませ、体を縮ませた。すると、彼女の鮮やかな旋脚は空を切り、舌打ちだけが鳴り響いた。

「・・・・・・避けないでよ」

「いや、痛いのは嫌ですから」

 私には昔からの特技がある。それは『避ける』ことだ。ドッヂボールの際も最後まで残っているし、働くことからも避けてるし、人付き合いも避けている。存在感を消すことで相手から逃れることが出来るのだ。人に認知されないよう視界を避けて行動する。これが私の体に染みついた『才能』である。

「アンタ、格闘技とか武道とか、やったことある?」

 分が悪そうに、目付きを尖らせて私を見つめる。

「いえ無いです。引きこもりです」

「へぇー、そうとは思えない体裁きだったよ、さっきの」

 そう言って私に見せた顔は全くにこやかではない。冷笑だ。

「いやいや、偶然ですよ」

「そんな、謙遜は良いよ」

 ポニテ美女は腰に差していた木刀を抜き、中段の構えを取る。

「なら、試してみよっか?」

 余裕の笑みを浮かべ、先手必勝と言わんばかりに、私に襲いかかってきた。

 ポニテ美女は木刀を振り下ろそうとせずに、そのまま喉元を突いてこようとしてきた。無駄の無い動きに戸惑いを感じるも、私は柳のようにそれを受け流す。受け流した瞬間、ポニテ美女は私に攻撃を仕掛けることが体勢を整える為のラグが発生し、難しくなる。私はその隙を突こうと、木刀を顔面目がけ片手ながら振り下ろす。

 しかし、やはり手練れであったか、それは間一髪で防がれた。

「やっぱり、センスあるね、アンタ」

 表情からはすっかり余裕は感じ取れない。

「いや、だから偶然ですって」

 冷笑を浮かべる私。

「何かその顔、ムカツクんだよ、ね!!」

 その言葉を発した直後、またポニテ美女は私に急接近してきた。

 今度は脇腹に狙いを定め、体勢を低くし、斬りかかる。

 風圧を感じた刹那、私は距離を取ろうとポニテ美女から後ずさりで回避しようとした。

 だが、その動きを待っていたかのように、更にポニテ美女は間合いを詰め、突きの体勢に移行していた。

 まだ跳躍してから少しの時間しか経っていない為、体勢を変えようにも変えられない。このままやられるのを待つだけか・・・・・・

 そう思っていたが、ポニテ美女は先程と同様に、喉元に木刀を突きつけて、私に馬乗りにまたがり仰向けの状態で押さえつけられた。

「参ったか」

「いや、元々戦う気そんなにないですから」

「アンタの体は、そうとは言って無かった、ぞ!」

 腹いせか、私の脇腹を思いっ切り木刀で殴打した。

「あ゛あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 心地良い乾いた木の音が響き渡った。

「あ・・・・・・、あなたは何しにこの世界に来たんですか?私をいじめるためですか?」

「それもある」

「勘弁して下さい」

「うそ、冗談」

 先程とは打って変わって、はにかんだ笑みを浮かべている。

「アタシも、アンタと同じ。別の世界から来た」

「あ、そうなんですか。てっきりこの世界の住民かと」

「ハハハ、そうかもね。もうここに来て長いからね」

「どれ位経ったんですか?ここに来て」

「そうだね・・・・・・5年は経ったかな」

「5年ですか?!」

「そう。こんな感じで、村の護衛を生業にして生きてきた。ここじゃ暮らしていくのも一苦労だからね」

「元の世界には戻ろうとは思わなかったんですか?」

「それは、戻れることなら、戻りたいさ。でも、アタシ・・・・・・」

何故か、私には次に発する言葉が読み取れた。

「コミュしょ・・・・・・」

「やめろ!!!!言うな!!!!!!!!!」

 なんと、私と同じ穴のムジナだった。どおりで、言葉を発するより、ムチや何やらで叩くことでの意思表示が多いと思ったら、そういうことだったのか。

「なるほど。つまり今までパーティを組もうと思っても、それを伝えられず組むことが出来なかった」

「その通りだ」

「貴方の強さ位あればパーティに誘われることもあったんじゃないんですか?」

「いや、あったはあったが、全部断った。やっぱり人と組むのが怖いから」

「コミュ障ここに極まれりですね」

「言うな!!!!!!!」

 またムチでも飛んでくる!と身構えていたが、襲ってくること無く、右手が差し出された。

「ア、アタシ、セレジア。セレジア・ハインヴェルク。よろしく」

「え、突然なんですか」

「アンタなら、パーティ組んでも、やれそうな気がして。さっき戦って見ても、アタシが育てれば十分勇者になれると、思ったから」

 意外にも私の回避スキルを過剰評価してくれたのか。まあ、この機会逃したら、パーティなんて夢のまた夢になりそうだし、なんかこの人強そうだし、組んでおくか。

「分かりました。宜しくお願いします!」

 こうして二人は誓いの握手を交わし、幸か不幸かパーティを組むこととなった。



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