第38話~努力・友情・勝利的な何か~
「え?突然どうしたの?」
私の問いかけに呆気に取られた表情を浮かべるセレジア。
「いや、だから、剣術を教えてください」
「あれ?そんなキャラだったっけ?柄にも無い事すると体壊すよ~」
私の貧弱なボディを見て鼻で嘲笑う。
「・・・・・・から」
今にも消え入りそうな声で囁く。
「え?何?」
セレジアが気怠い目つきで私を見つめる。
「セレジアとミツキが、強くなってたからさ、私も強くなりたいって思ったから。ほら、シャリオットの時に、ミツキと組んで技を喰らわせてたでしょ。ああいう風、とはいかないけどに敵を抑え込めるようになりたいなって」
それを聞いてセレジアは笑いをこらえきれず吹き出す。
「どうしたの?いきなりそんなに真面目になっちゃって」
「だって、このまま使えない『主人公』なら居る意味無いかなって」
「そんなことないよ。アンタには『サンパリーツ』があるじゃない」
やはりそう言われるのかと身構えていた私は、嘲笑気味に口を開く。
「あの剣は気まぐれなんだ。いつ使えるのかも分からない、博打みたいなモノなんだ」
そんな私にセレジアは、私の両手を取り、私の眼を見つめて真剣な面持ちで言い放った。
「それならアタシ達がその剣が使えるようになるまで戦うよ」
「なんで?」
「決まってるよ。アタシ達パーティだもん」
その不意な言葉に、私は心が救われた。今まで独りで戦うことしか考えていなかった私には、青天の霹靂であった。そうだ、得意不得意を補ってこそ『パーティ』だ。
「もちろんアンタがその剣が無きゃ、ものすごく弱いことも知ってる」
するとセレジアは私の背後に回り、私と共に手を重ね合わせて『サンパリーツ』を握った。
「だから、独りで無理しないでみんなで強くなろう、ね!」
私に見せたその笑顔は、まるで天使のようだった。
セレジアに上手く丸め込まれたのかは正直良く分からないが、結果的に剣術を教われることになった。それと併せて、私とセレジア、ミツキと合同で連係プレーの練習も始めた。
「ミツキ、行くよ!」
「まかせて~」
セレジアの掛け声に、ミツキの間の抜けた応答が聞こえる。模擬戦ということで、相手はシャリオットに務めてもらった。
まずセレジアがシャリオットに斬りかかる。セレジアはわざとムチを大振りにし、シャリオットが攻撃を避けやすくする。丁度避けようと体重移動している際に、私が攻撃を加える。
バランスを崩したシャリオットに、ミツキの魔法が直撃する。動きが鈍れば、それだけ魔法攻撃が当たる確率が高くなるのだ。
「はふぃ!!!!!!!!!!!!!」
シャリオットがミツキの魔法を喰らい、絶頂に達している。
「よしっ!上手くいった」
セレジアは白い歯を見せ、ガッツポーズを決めた。
「サイジも剣に慣れてきたんじゃない?」
「セレジアの御陰だよ。ありがとう」
「そんな真正面から感謝されるなんて・・・・・・照れるな・・・・・・」
「なにイチャついてるんですかぁ~」
その光景を見て、ミツキが私に飛びついてきた。
「あっ!!隙あらばサイジといちゃつくんだから!人のこと言えないでしょ」
「あらぁ~?嫉妬ですかぁ?」
「うるさい!黙れ!!」
セレジアが激高し、ムチを取り出し始めた。
それを見たのかは分からないが、絶頂から戻ってきたシャリオットが体を起こし、こう言い放った。
「そのムチはミツキでは無く我が輩にお願いします。罵倒されながらのムチは最高に気持ちが良いので」
セレジアは満面の笑みを浮かべ、シャリオットが気絶するまでムチを喰らわせ続けた。