第37話~まだ頑張れる~
村長からシルクのパンツを貰い、村を後にする。
ジャモリスカから次の都市までは交通手段が無く、仕方なく一行は徒歩で移動する。
「結局何だったのかしらねあの祭り」
唐突にセレジアが口を開く。
「何で付き合わされたんだろうな・・・・・・」
私が俯き加減で呟くと。ミツキが背後から飛びついてきた。
首に腕が巻き付き、髪の毛のほんのり甘い女の子の香りが鼻腔をくすぐる。
「そんなのきまってます!勇者だからですぅ!」
「ちょっと、絡みつくな!重い!」
私は必死にミツキの腕を振り払おうとするが、逆に首を締め付けてくる。
挙げ句の果てにはスリーパーホールドのような状態になり、窒息寸前になる。
「え~ちょっとくらいいいじゃないですかぁ~」
ミツキが体を左右に振ってくる。揺れている遠心力を利用し、なんとか抱擁から脱出する。
「お嬢さん、我が輩の体であれば好きにしても」
満面の笑みでシャリオットが大手を広げて構える。
「それは無いです」
ミツキは珍しく真顔で拒否した。
閑話休題。シャリオットについての話題となった。
「シャリオットって元からあの村に住んでたの?」
私からそれとなく話しかける。
「いや、元は異世界だ」
「私もそうなんです」
「そうなのか?そうには見えないが・・・・・・」
シャリオットがこちらを疑っているようだ。
「信じてください!それで『勇者』になれる権利を得たんですから」
証拠とばかりに剣を見せびらかす。
「『勇者』とは、なんと可哀想に」
「え?シャリオットも『勇者』じゃないの?」
「我が輩は『勇者』ではなく、『領主』だ」
「『領主』?領主って何するの?」
「突然この世界にやってきて、土地を与えられた。その土地には元々農民も住んでいて、彼らから収穫量の10%を徴収して悠々自適に暮らしていたというわけだ」
「いいな~。『勇者』じゃ無くて『領主』になる権利が欲しかったな・・・・・・」
「まあ、我が輩には生まれ持った運と魅力があるから、仕方の無いことだ」
股間からミネラルウォーター入りのペットボトルを取り出し、それを飲み干す。
「運と魅力がない者であれば、実力で勝ち取れば良いだけのこと。悲観する必要は無いさ」
シャリオットは不敵な笑みを私に見せる。挑発しているのか。
私に実力すら無いことを見透かしての発言なのだろうか・・・・・・いや、きっとそうだろう。
私たちのパーティと一戦交えたのであれば、実力なぞ手に取るように分かるだろう。
それを分かった上でシャリオットは私に言葉を投げかけたのだ。
『お前はこのパーティに本当に必要なのか』、と。
シャリオットとセレジア、ミツキが居れば確かに戦いで一瞬で負けるなんて事は考えられない。シャリオットは既に相当な格闘技の手練れと推察されるし、セレジアとミツキは、見事なコンビネーション攻撃を既に会得している。
私は、回避することと、いつ使えるか分からない『サンパリーツ』だけだ。
・・・・・・最弱だ。このパーティで一番足手まといになっているのは私だ。
通常時でも十分戦える力を、剣技を身につけなければならない。でも誰がそれを知っているのか?
いや、良く思い出せ。最初の村で会った事を。『彼女』は剣を使っていたのではないか?
その夜、私は勇気を振り絞ってセレジアに嘆願する。
「お願いです。剣を私に・・・・・・教えてください」