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青春18勇者  作者: 天川 榎
第3章:魅惑の森 ジャモリスカ
32/75

第32話~イケメンはかく語りき~

 一行は敵の本拠地に向けて進軍を始めた。しかし、一行にはこれと言った防具はもちろん無いので、相手の攻撃が当たれば即死も免れない。

「本当にこれで大丈夫なのか?」

 私が思わず弱音を吐いた。すると、ミツキが私の肩を叩いた。

「だいじょ~ぶ!なんとかなるって」

 ミツキが根拠のない自信を見せつけてくる。

「それが一番怖いっていってるのに」

 セレジアは舌打ちをしてミツキを睨み付ける。

「そう言っている奴からやられていくのは物語のセオリーだよね」

「あと、この戦争が終わったら結婚するんだとか言ってる奴とかね」

「そうそう」

「軽口きいてないで、前見ろ、前!」

 既に空からは無数の石つぶてが降り注ぎ始めている。私の頬にもそれが擦れ、血がにじむ。

「痛っ・・・・・・」

「ほら、言わんこっちゃ無い」

 セレジアがすかさず傷薬を出す。

「ありがとう。優しい時もあるんだな、セレジア」

「『時もある』は余計よ」

 そうぼやくと背中に蹴りを入れられた。傷薬の意味無いじゃないですかセレジアさん。

「だいじょうぶですかぁ~」

 その惨状を目撃してしまったミツキが私の元に駆け寄る。

「だ、大丈夫だから」

 苦虫を噛み潰したような形相で言い放つ。

「だいじょうぶじゃなさそうだよ、ほら、背中みせて」

 ミツキはおもむろに私の背中に触れ始める。ほのかな手のぬくもりが皮膚を伝う。

「これぐらいいつもの事だから、放っておけば勝手に治るからさ」

「だめだよ~こんなにくっきり足跡がついてるのに、強がり言っちゃだめ!」

 ミツキはそう口を尖らせ叱ると、セレジアによってつけられた靴の痕に手をかざし、詠唱を始めた。

「あれ、魔法書は使わないの?」

「この程度の魔法なら暗記してるから大丈夫だよぉ」

 昔はいちいち魔法書を取り出してたどたどしく唱えていたのに、いつの間に覚えたんだミツキ。

いわゆる見えないところで人知れず努力するタイプなのか?こんなチャランポランな喋り方からは全く想像出来なかった。

「そうか、ミツキはミツキなりに頑張ってるのか」

 私は一体どんな努力をしただろうか。偶然手に入った何か特殊能力を持つ剣に操られ、自分に酔ってるんじゃ無いのか?

 まあ、今のところはこれさえあれば無敵かな?ミツキには悪いけど、私にはツキがある。これだけの能力を手にする幸運がある。私はそれ自体が武器かもしれない。


 そうこうしているうちに、敵の本拠地が間近に迫ってきた。

 本拠地といっても、木の枝や葉で簡易的に陣を張っているだけで、到底籠城戦には向いていない。

 兵士も隠れる素振りを見せず、鼻くそをほじりながらマンキニ一丁で突っ立っている。

「おいおい、本当に戦うつもりあるのかよ」

 思わず私は呟いてしまった。

「何か作戦があるとかじゃない?油断させて来た敵に集中砲火を浴びせるとか」

 セレジアは私の背中に隠れて耳元で話しかけてくる。

「きっと戦いたくないんじゃないんですかぁ~?武器もたないひとには攻めづらいですしぃ」

 私の横に突っ立っているミツキは、おもむろにポシェットから手鏡と化粧道具を取り出し、メイクをし始めた。

「アンタ、もしかして今までスッピンで出歩いてたの?」

「ちがいますぅ~ナチュラルメイクですぅ」

「ナチュラルメイクでその顔とは・・・・・・どんなやつ使ってるの?」

 セレジアがミツキに近寄り、化粧用具を漁り始める。

「これいいよぉ~UVカットも入ってるし」

「お前ら・・・・・・ここ戦場だぞ?」

「だいじょうだよぉ~アンタがなんとかしてくれるでしょ~」

 セレジアがミツキがいつもやっているような舐めた口調で、体をくねらせぶりっこポーズを決めてきた。

「ミツキの真似をするな腹が立つ」

「ちょっとぉ~それってどういうことですかぁ~?」

 ミツキがすかさず反論する。

「そろそろその喋り方改善した方がいいんじゃ無い?」

「え~かわいくないですかぁ~てへぺろ」

「だから、そういう仕草がいちいちイラつくんだって」

「フォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」

「だからそういう・・・・・・フォ?」

 セレジアでも無い、ミツキでも無い、全く異なる声が頭上から聞こえてきた。

空を見上げるとそこには、筋骨隆々の銀色のマンキニに身を包んだイケメンが、木の上から飛び出してきた。

「ひ、ひゃああああああああ?!!」

 セレジアに向かってイケメンが飛んでくる。少ない布地をはためかせ、爽やかな笑顔を浮かべ、急速に近づく。とっさにセレジアは後ずさりをしたが、風に流されたのか、イケメンがそのままセレジアが移動した方向に進路が変わった。

「ちょっと!!ついてこないで!!!!」

「こんにちは、紳士淑女の諸君。ご機嫌いかがかな?」

 セレジアの頭上に、イケメンが綺麗に着地を決める。

「我が輩はシャリオット。以後お見知りおきを」

「ちょっと!早く頭から降りて!!」

 セレジアがシャリオットの足首を捕らえようとする。しかしシャリオットはそれに見向きもせず、セレジアの頭から目にも止まらぬ早さで飛び降りる。

「いけない、レディの頭に乗ってしまうなんて、紳士失格ですね。ソーリー」

 するとシャリオットはマンキニのもっこり部分から、真っ赤なバラの花を一輪取り出した。

「ひいいいっっ!!汚い!!どこから出してきてんのよ!!」

「我が輩のバラが汚れているとでもいうのかね、貴女は」

 シャリオットはセレジアに猛烈にバラの受け取りを拒否されると、途端に虎の目つきに変わり、四つん這いのスタイルで身構え始めた。

「それならば・・・・・・貴女に本当の愛の形というものをお教えしましょう」

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