第30話~変態勇者~
「マンキニぃ?」
三人が思わず耳を疑った。
「そうじゃ、マンキニじゃ」
村長はおもむろに私の股間をまさぐろうと近づいてくる。
「そんなのが、なんで秘密兵器なんですか」
いやらしい目つきで忍び寄る村長を、私は即座に距離を取った。
「臭いが強烈なのじゃ、半径1メートル以内の人間を気絶させる程のな」
三人は必死に『お前が言うな』という言葉を喉の奥で押し殺した。
「なんなのそれ・・・・・・何年穿いてるのよそのマンキニ」
「もらってからじゃ。奴らは一度もマンキニを与えられてから、替えてはおらんのじゃ」
「戦えないよ、そんな奴らと」
思わず嘆息が漏れる。同時に、私の息が臭くないのを同時に確認する。
「というより、貴方たちはどうなの?まさか・・・・・・」
「なぜ分かった?」
三人の顔が見る見るうちに蒼白になった。
「ちょっと~ふけつぅ~」
「信じられない」
「そんなもんだとは思ってたけどね」
「わしらはそもそも服を替える習慣がないのじゃ」
その言葉を聞き、三人はその場を脱兎のごとく立ち去った。
結局ろくな作戦も立てずに門の前まで来てしまった三人は、格好もブーメランパンツとビキニに着替え、臨戦態勢を整えた。
「本当にこれで戦えっていうの?」
セレジアは限りなく紐に近いビキニに動揺を隠せない。
「ちょっとこれ、むねが・・・・・・きついよぉ」
ハート柄のビキニに身を包んだミツキの胸は、その余りの布の小ささに今にもはち切れんばかりだ。
「それ、替えてもらった方がいいんじゃないの?」
「え~なんかぁ~それはそれでもったいないきがするぅ」
「ノーブラになっても知らんぞ」
「そうこうしているうちに、敵が来たみたいよ」
遂にマンキニ軍が現れた。
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!』
「来やがった」
「構えろ!!」
こちら側の軍勢も臨戦態勢を整え、続々と隊員が銃を構える。
「撃て!!」
ブーメランパンツ軍が、マンキニ軍に対し、先制攻撃を加えた。放たれた無数の弾丸が、マンキニを引き裂いていく。
「うわぁああ!裸になっちまったよぉ……」
裸にひん剥かれたマンキニ軍勢は、そそくさと自陣に撤退していった。
「これって、私たちが居なくても勝てるんじゃないの?」
事実、私たち3人は何の攻撃もしていない。既に武力の差も歴然である。
「いえ、油断してはなりませんぞ。奴らも『勇者』を召し抱えているという噂があるのじゃ」
「いやいや、勇者が居ても、近代兵器で一瞬じゃないですか」
「それがじゃな……強力な魔法を使い、近代兵器を無力化出来るというのじゃ」
ミツキがその言葉に反応を示す。
「それって、もしかして勇者ヘタイーンですか?」
「おや、よくご存じで」
「あたしのいたマギルカでは有名な魔法も使える勇者さんでしたが、余りの変態ぶりにマギルカを追放になったんです」
「なんだよそれ、どんなことしたんだよ勇者ヘタイーン」
私が半笑いで尋ねる。
「どうやら小さい女の子に『一緒に遊ぼう』と近づき、泣き出した途端、涙をペロペロなめて恍惚な表情を浮かべて去っていくということをしていたんですよ」
「うわあ」
「死んだほうがいいわねロリコン」
「……まあ、その変態勇者ヘタイーンを倒せば、とりあえず侵攻の障壁が無くなるということですね」
「その通りじゃ」
「よし、じゃあそのロリコン変態鬼畜野郎をブッ飛ばそう!今すぐ腸ぶちまけてランチだ!」
セレジアの目つきが獲物を狩るハンターの目に変わった。
「そうだな、PTAの敵は私たちの敵!燃やし尽くそう!」
「「「おーー!!」」」
こうして変態勇者を討伐するという方針で、三人は団結した。