第03話~ライバル、現る~
独房から追い出された私は、強制的に町の修練場に連れて行かれた。
「つかぬことをお聞きしますが、この世界は何なんですか?」
「魔王大元帥が世界を統べつつある、暗黒の世界だ」
ヒゲ親父が質問に答えてくれたが、言ってる意味が分からない。ただ、最初この世界に入る前に見た『勇者』という文言と、先程の囲まれていた人々の格好を見るに、何となく察しはついたが、納得は出来ていない。
「つまり、魔王っていう奴が皆さんを苦しめているんですね?」
「大元帥を付けなさい!殺されますよ」
面倒くさいな。別にどこから聞いている訳でもないだろうし。
「・・・・・・魔王大元帥とやらが、この世界を支配しているってことですねー」
「その通り」
その瞬間金髪ポニーテールのメガネ美女から、ご褒美のムチが容赦なく臀部に与えられる。
心地良い、空気を切る音が鳴り響き、私の体に熱く燃え上がる痛みがほとばしる。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
私は、ポニテ美女をにらみつける。
「今、とってもいい話してたのに!なんてことを!」
「あなたのそのアホ面を見てると、このムチが疼いて疼いてしょうがないんです」
ポニテ美女は、悦楽の笑みを浮かべ、恍惚に浸っている。
「はあ、そういう趣味ならそこの人に・・・・・・」
私がヒゲ親父を指さそうとすると、その手に容赦なくムチが入れられる。
「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「村長さんに失礼です。謝りなさい」
「すいません」
「なあに、気にしてないよ。セレジアの良いところさ。悪いものは罰する、みたいなさ」
この金髪メガネ、セレジアっていうのか。へぇー。
ヒゲ親父、もとい村長が咳払いをし、話を続ける。
「話が逸れたが、君には主人公になる為の訓練をしなけれなならない」
「そうでしたね。でも何で私が主人公にならなくちゃならないんですか?」
「それは、そういえば話していなかったな」
村長によると、この世界は無数の勇者が存在し、魔王大元帥を倒しうる「主人公」の座を争い、勇者同士で戦いが起こっているという。気になるのが、魔王大元帥の手下はどうしているのかというと、大量の勇者によって絶滅寸前に追いやられているという。あと残っているのは、各地区の本拠地と魔王の住処のみであるという。
「それじゃ、私が主人公にならなくても世界救われちゃうじゃないですか」
「いや、それがね、魔王を倒した奴しか、元の世界に戻れないんだってさ」
な、なんだってー!!!!
「じゃあ、現実に帰れるのって1人しかいないんじゃないですか?それ以外の奴は帰れないってことですよね?」
その言葉を聞き村長はパツパツの短パンジーンズの左ポケットから、おもむろに何かパンフレットのような物を取り出した。
「いや、実は魔王を一人で倒すのはさすがにいくら鍛えた所で無理だから、チームを組んで倒すことが認められている」
村長が取り出した『魔王大元帥印の世界案内閻魔帳』によると、次のような討伐ルールが定められている。
よい子のための討伐の掟
1、我が輩を倒すことにより、元の世界に帰還する権利が与えられる。
2、我が輩を倒すのは一人でもパーティ戦でもよい。ただし、パーティを組むのは4人までとする。
3、我が輩を倒せば、自動的に誰かが魔王の称号を引き継ぐ。倒した者が名乗ればその者が、名乗らなければ、この世界の住人から無作為に選ばれる。
4、我が輩に挑戦するには、まず各地区のボスを倒し、実力を示すことを条件とする。
5、万が一討伐に失敗した、もしくはこの世界で命潰える場合、それが元の世界に反映される。
なんてことだ。私にそんなパーティ組むだけのコミュ力は、無い。地獄だ。人と会話することに恐怖を感じているのに。今までは必要に駆られて話せたけど。
いや、逆に考えろ。パーティを組んで強くなれさえすれば、この世界からオサラバ出来るんだ。
ここが踏ん張りどころだ。勇者なんだ、勇気を出せ!
「私、絶対勝ちます。魔王に勝って、このクソみたいな世界から脱出してみせます!」