第29話~ジャングルの覇者~
何とか場は落ち着いたが、余りにも悲惨な状態になったので、ドラゴン退治で得た金の一部で、インパラジオ協会の受付の改修費を出すことにし、その日は部屋に帰った。
翌朝、私たち三人はドアのノックの音で目が覚めた。
「大変だ!大変だ!」
ドアの外から野太い声の音が、ドアを揺さぶる振動と共に伝わり、体を眠りから覚まさせた。
「なんだよ朝から騒々しい」
私は寝ぼけ眼を擦りながらベットから体を起こし、ヨタヨタ歩きでドアまで歩き、開いた。すると、待ってましたとばかりにドアを強引に押し開け、部屋に入ってきた。私はその反動で床に押し倒された。
「いってぇ」
「すいません」
「朝から何の用?」
「奴らが、・・・・・・奴らが攻めてきた」
「奴ら?」
「マ、マンキニ族だよ!こっちの村に奇襲を仕掛けてきやがったんだ!!!」
「今、奴らはどこに居るんだ?」
「ちょうど村の門で足止めしてる。早く助けてくれ!このままじゃ持たない」
「分かった。40秒で支度するから、建物の前で待ってろ」
「うっす」
村の若者はおとなしく部屋から出て行った。
「ちょっと、朝からなんなの」
セレジアがようやく目を覚ました。布団からこっそり顔を出してこちらの様子を窺っている。
「なんかマンキニ族が攻めてきたってさ」
「え?それホント?」
訝かしげな目でセレジアは私を見つめてくる。
「ホント、のはず」
「はず、って何よ」
「いや、村の住人が突然入ってきて、そいつからの又聞きだからさ」
その言葉に嘆息し、舌打ちする。
「分かったわ、とりあえず外の様子を見に行きましょ」
セレジアは気怠そうに上体を起こし、外に出る支度を始めた。ミツキは相変わらずこんな状況なのに、まだ夢の中だ。
見かねたセレジアは、ミツキの布団を引っぺがし、頬を往復ビンタし始めた。
「いつまで寝てるのミツキ!いつもいつもこういうときにアンタはもう・・・・・・」
「にゃ、にゃんにゃー」
ミツキは招きネコのポーズを取り、寝ぼけているのかネコの振りをしている。
「ネコの振りしてもダメ!早く起きなさい!」
「なんか、セレジアってお母さんみたいだな」
「うるさい!」
「にゃー」
今度はミツキはセレジアに抱きつこうとしてきた。セレジアはミツキの頭を手で押さえつけ、近づかないよう必死に制止させようとしている。
「いい加減にしなさい!!!」
「いいじゃないかにゃー」
それに乗じて私もネコになってセレジアに近づく。
「そうにゃーわるくないにゃー」
「アンタ、一体なにしてるの?」
「別になにもしてないにゃー」
セレジアに問答無用でムチを打たれた。ミツキも同様に、清々しいまでの破裂音と共に最高の目覚めをお届けした。
朝っぱらからボケ倒した後、建物を出て、村の若者と共に前線基地に移動した。既に、門の前におびただしい数のマンキニ族が押し寄せていた。
「ホントに居たんだ、マンキニ族・・・・・・」
「わしが嘘をつくとでもおもったかい?」
村長が私にそっと語りかける。歯茎が腐っているのか、とても息がくさい。
「はは、そ、そうですよね、村長であらせられる方が嘘をつくハズがないですよねグボッ」
臭いに耐えられなくなり、むせてしまった。
「だいじょうぶですかな?」
村長は善意からか私に手を差し伸べてくる。
「だ、だいじょブブゲボッ」
先ほどからの様子を見かねたセレジアが私に近づいてくる。当然村長の息が届く範囲に入る事になる。
「ホントに大丈夫?・・・・・・って臭っ!!!」
やはり我慢ならず、叫びを上げてしまった。
「おや?すまぬ、夕べはフライドオニオンだったのでな」
「多分そういう問題じゃないと思います」
すかさず私がツッコミを入れる。
「とりあえず、本題を話しましょう」
現在の状況としては、マンキニ族が門の前まで押し寄せてきている。勢力はばらけておらず、1カ所にまとまっており、軍勢はおよそ200人。
武器は弓と投石、そして槍。聞くからに、練度が低くあまり命中確率は高くないようだ。
相手のボスの名前は、ドン・マンキニ。黄金のマンキニを穿いているという。
一方、こちらの軍勢は500人。武器も銃に剣、大砲など、近代兵器が揃い踏みだ。
「ならこちらが勝つのは火を見るより明らかじゃないですか」
「いや、アイツらには秘策があるのじゃ」
そう、奴らにはとっておきの秘密兵器がある。それは・・・・・・
「脱ぎたてのマンキニじゃ」