第26話~疑問は尽きないボスの件~
村長の譲位宣言に呆気に取られた一同は興奮冷めやらぬ中、従者にインパラジオ協会が取り仕切る宿屋を紹介され、そこで一泊することとなった。
ジャングルの中の宿なので、てっきり葉っぱと木の枝で出来た、原始的な宿なんだろうなと勝手に妄想していたが、ここは例外のようで、都会にあるような洋風のホテル仕様になっている。これはこれで周辺から浮いているので困る。
宿の部屋にたどり着き、今までの緊張が解け、私から会話の口火を切った。
「やばいよ、勢いだけで言っちゃったよ」
私は、ふと考えた。戦いに勝利すれば村長の座を戴くことは確約できた。しかし、その村長は誰がやるのだ?私がやるのか?いやいやいや、無理だろこんな引きこもりに政治とかそういうのは無理だから!第一ろくにコミュニケーション取れないのに生きている事すら奇跡みたいな私に、そんな大役は無理だろ絶対!
「アンタ、本当に村長やるつもりなの?」
「いや・・・・・・やれないでしょ」
セレジアが嘲笑する。
「ならあたしがやるぅ!」
ミツキが勢いよく右手を挙げる。
「いや、それは無いわ」
セレジアはミツキの手を無理矢理下げさせる。
「どうしようか、ほんと。これから旅も続くし、ここに留まるわけにはいかないし」
私は頭を掻きむしり、地にひれ伏す。
「ならいっそ、村長にそのまま続けてもらうってのは?」
セレジアが切り出す。
「まあ、それも考えたんだけど、それって『ボスを倒した』ってことにはならないんじゃないかな、と思って」
「確かに、『ボスを倒す』っていう定義からは、もしかしたら外れるかもしれないわね」
「参ったな・・・・・・こんなケースが存在するなんて、聞いてないよ」
その言葉に手がかりを得たのか、セレジアの表情が明るくなる。
「そうよ、聞いてみればいいのよ。インパラジオ協会に!」
「ああ、そういえば」
すっかり忘れていた、勇者(自称)には頼れる存在、インパラジオ協会。ここなら魔王攻略についてなら、情報を把握しているハズだ。
「もう待ってられないよ!聞きにいこう!」
セレジアが私の手を取り、部屋から引きずり出そうとする。
「いてててて!引っ張るなって!!」
「アンタがダラダラしてるからでしょ」
肩の辺りに痛みが蓄積する。右腕が引き千切れそうな感覚に苛まれる。
「わたしもいっしょにひっぱりますぅ!!」
ミツキがセレジア側に加勢し、さらに痛みが増す。
「分かった分かった。分かったから、行こう、一緒に」
正直人に尋ねることが苦手である私は、あまり乗る気では無かったが、二人に半ば強制的に部屋から引きずり出され、インパラジオ協会の窓口に強制連行されることとなった。