第24話~正装戦争~
門を無事にくぐり抜けた3人は、そのまま衛兵の指示に従い、村長の下へ半強制的に連行された。
村長が居る部屋に入った瞬間、煌びやかなパンティーとブリーフの切れ端が村民によって宙に舞い上げられ、首にTバッグの紐をあつらえたネックレスを掛けられた。
「ようこそ勇者とその仲間」
美しい、その皺と弛みに溢れた魅力的なボディを携え、村長は姿を現した。もちろんブーメランパンツ一丁の姿だ。村長としての装飾品なのか、右手には黄金のトランクスが、左手には、銀色のふんどしが握られている。
「どうも」
恥ずかしさを隠すように、私は頭をボリボリと掻きむしり、挨拶をする。
「何恥ずかしがってるのよアンタ」
セレジアのその姿を見られ、頭を軽く叩かれた。少しパンティーやらブリーフやらで冷静さを失っていた私は、なんとかセレジアの意図しないツッコミで冷静さを取り戻すことが出来た。
「ところで、私たちをここまで呼び寄せて、何のご用ですか?」
私からの問いに、わざとらしく間の抜けた声で、反応を示す。
「ああ、そうだった、そうだった」
そう言うと、村長は従者を呼び寄せ、『例の物を』と声を掛け、持ってこさせた。
「早速なんじゃが、あなた方に頼み事があるのじゃ」
従者からそれぞれ3人に地図が手渡された。村長の口から出てきたもの、それはこの村の置かれている状況、そしてまさに今起きている『戦争』についてであった。
かつてこの村は裸で暮らすことを義務付けていた。しかし10年前、近くの都市から貿易を申し込まれたという。その際にその都市から来た者がその大自然な姿に呆れ果て、大量の下着を無償で与えた。その摩訶不思議な『下着』という物体に狂喜乱舞し、三日三晩その都市から来た人たちと宴会をし続けたという。
最後にその素晴らしき訪問者に、ドリアンとくさやをその下着のお礼にと渡した。これがジャモリスカの「下着文化」の始まりであった。
その後も継続してその都市と貿易をしていたが、最近になって新たな都市が貿易に参加してきたという。
そのもう一つの都市が持ち込んだのは、もはや股間しか隠していない紐を肩に掛ける爽やか下着『マンキニ』であった。
この『マンキニ』が流入してきたことにより、村は二つに割れた。
『ブーメランパンツ・ビキニ』を正装とする下着保守派、『マンキニ・絆創膏』を正装とする過激派の二つに分かれ、頻繁に争いが起こるようになった。
「これがいわゆる『正装戦争』の事の始まりなのじゃ」
村長は口元を緩ませる事なく、今の村の凄惨な状況を一つ一つ語ってくれた。
しかし、私たち3人は余りにもこの下らない論争の火種に呆れ果て、何も耳には入ってこなかった。