第22話~次の街はどんな街?~
新市長になった団長に見送られた三人は、無事に馬車を調達し、『ジャモリスカ』に向かうこととなった。
もちろん乗り物酔いになり、馬車なら半日あれば着く距離であったが、途中で一泊することとなった。
「・・・・・・乗り物酔いだけは、どうにもならないわね」
「ああ、魔法で何とかなればいいんだけどね」
「魔法じゃ乗り物酔いは何とかなりませんよぉ」
「肝心なときに使えないんだな、魔法って」
悪態を付きながら、口から胃から上ってきた何かが飛び出そうとしても、それを必死で飲み込みつつ無事に耐えきり、命からがら宿に辿り着いた。
宿は素朴な木造で2階建て。大分年期が入っているので所々が朽ちている。特に屋根はペンキがはげており、幽霊屋敷と見間違うような様相である。
「本当に、ここに泊まるの?」
「仕方無いだろ。この辺じゃ、ここぐらいしか宿が無いんだから」
「お化けこわいですぅ・・・・・・」
辺りも暗くなり、選択肢が無くなった三人は、渋々宿に入っていった。
宿に入り、無事部屋も借り、二階の一番奥の部屋へ入った。外見の印象通り、カーテンや照明、ベッドなど、ありとあらゆる装飾品が古ぼけて薄茶色に染まっていた。
「こんなところで寝るのぉ~いやだぁ~」
部屋に入って早々ミツキが駄々をこねる。
「仕方ないだろ、ここしか宿屋がこのあたりに無かったんだから」
「どうしても嫌なら、ミツキだけ野宿していいよ」
「それだけはかんべんしてください……」
ミツキは大人しくベッドに腰掛けた。
「ところで、『ジャモリスカ』ってどんな場所なの?」
セレジアは寝間着の用意をしながら、片手間に私に聞いてきた。
「そうだな・・・・・・」
そう言いつつ、先程まで読んでいたジャモリスカについての観光ガイドをセレジアに手渡す。
「それを読めば分かる。正直どうかなとは思ってるけど」
その言葉に一抹の不安を抱え、セレジアは恐る恐る観光ガイドを受け取り、中身を閲覧する。
「・・・・・・本当にこんな街に行かなきゃならないの?」
「え?どんなかんじなの?みせてみせてー」
セレジアの嘆息めいた言葉に興味をそそられたミツキは、読んでいた観光ガイドを奪い取り、内容を読 む。
しかし、それを読んだ瞬間、ミツキの手からスルリと観光ガイドが重力に負け、地に落ちた。
「な、なんなのこれ」
「そのまま読んだ通りだよ、これから行く街はそういう街なんだよ」
ミツキから転げ落ちた観光ガイドを拾いつつ、私が呟く。
「いくら街の掟とはいえ、あれは流石にアタシでも無理だ」
「まあ、実際に街に入ったらそうせざるを得ないんだろうな、きっと」
「街に行かない方法はないの?」
「それは無理だよ。避けては通れないさ」
「・・・・・・分かったわ。覚悟を決めるわ」
「ミツキは別にいいよ~」
二人の覚悟は決まったようだ。後は私だけか。
「私もあまり気は進まないけど、なんとか三人で乗り切ろう!」
「「「お~」」」
ジャモリスカに対する恐怖なのか、三人は自らを鼓舞していないとやっていられないのか、一晩中叫び続けた。