第19話~主人公(仮)の帰還~
「アンタ、いつの間にそんな物買ったの?」
セレジアは冷や水を浴びたような表情を浮かべる。
「買ってないよ、手に入れたんだよ」
私は誇らしげに、白く光る怪しい剣を掲げる。しかし、段々時間が経つにつれ、光を失っていく。そして遂には鈍色の普通の剣に戻ってしまった。
「これは・・・・・・伝説の剣じゃないか!何処で手に入れたんだ?」
団長が私に詰め寄ってくる。
「いや、まあ、なんというか、成り行きで」
「てか、アンタ戦いたくなくて逃げ隠れてたんじゃないの?」
半笑いのセレジアに詰め寄られる。なんとも情けない。
「まあ、それも成り行きで」
「キャー!!かっこいいですぅ!!」
ミツキは我慢出来なかったのか、セレジアをいらつかせたかったのか、私に抱きついてきた。
「や、やめろ!」
無理矢理私の体からミツキを引きはがす。その力を受け止めきれず、ミツキは地べたに女の子座りで着地する。
「全く、いい加減にして欲しいわよね」
セレジアがいつものように悪態をつく。
「ところで、ドラゴンはどうなったんですか?」
「アンタが斬ったんじゃない。憶えてないの?」
「はい、実は記憶があまりないんですよ」
「へぇ・・・・・・無意識のうちに倒しちゃったってわけ」
セレジアの表情が少し陰る。
「まあ、そういうことになっちゃいますね」
「羨ましいわ。アタシは幾ら鍛えてもこれっぽっちの力しかないから、ね!」
ここぞとばかりにセレジアは私のたわわに実った芳醇な桃に、ムチで叩き付ける。
「ぐぁああああああああああああああああああああああ!!!!」
セレジアは満足げな表情を浮かべ、私達を宿へと引き戻した。
部屋に着き、消えていた明かりを灯す。ドラゴンのせいで、部屋全体に煤の臭いが漂う。
「それで、これからどうするの?」
セレジアはベッドに腰掛け気怠そうに話す。
「この街のボスはアッサリ倒しちゃったみたいだし、次の街に行くか」
「せっかくだから、魔法を学んでこうよ!」
不意にミツキは魔法書を取り出し、得意げに掲げる。
「お前はもう十分学んだだろ」
「いやいや、中退しちゃったからさ・・・・・・」
「それじゃ、今度入っても中退すんじゃないの?」
「そんなことないよぅ・・・・・・」
ミツキはその場にうずくまり、涙を浮かべた。
「そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。事実なんだし」
全く励ましになっていない言葉をセレジアは掛ける。
「うぁああああああああああああああああん!!!」
「おいおい、落ち着け。事実は受け入れなきゃ、先に進まないぞ」
私は嘆息し、ミツキの肩に手を掛ける。
「うぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
もう耐えきれなくなったのか、スタコラサッサと部屋から出てってしまった。
「あ~あ、あんなこと言うから」
セレジアが、微笑を浮かべる。
「元々ミツキを追い込んだのはそっちだろ」
「まあそうだけどね」
結局その日、ミツキは部屋に戻って来ることは無かった。




