第13話~強盗集団『デン』~
「つ、つかぬことを伺いますが、セレジアという金髪の少女はおりますか?」
私は蛇に睨まれたカエルのように、震え上がっている。
「ハハハハハ!いたらどうするんだい?」
独眼の『デン』の頭と見られる男が、含み笑いで応える。
「・・・・・・」
「おい、ダンマリかよ!情けねぇな!」
男は私に近づき踵落としを食らわせようとする。しかし、その蹴りは大振りであったので、避けるのは私にとって容易だった。
「ちっ」
男の舌打ちが響く。
「あいにく、避けるのは得意なんでね」
「ああん?!ガキがナマ言ってんじゃねぇよ!お前らやっちまいな!!!!」
男の怒号と共に、子分と見られる団員が男の背後から飛び出してきた。彼らは揃いも揃って刃物や棍棒を携え、私達に襲いかかってくる。私は武器を残念ながら持ち合わせていない。攻撃を避け続け、誰かから奪うしか無い。
敵の軍勢はざっと見たところ、精々15~20人位だ。何とかなる。何とかしないといけない。
「この野郎ぉ!!!」
軍勢から私に襲いかかる。棍棒で思いっ切り振りかぶってきた。隙が有りすぎる。私はガラ空きになっていた脇腹を力一杯手刀で叩き、地面に平伏させた。
棍棒を奪い取り、一応は戦えるようになった。ミツキの様子が気になるが、依然として軍団に囲まれている。ミツキは確認できない。もしかすると、既に捕まっているのか?
一瞬の間を見逃さず、軍団から針の糸を通すようにすり抜け、ミツキを探す。
集団を抜けたら、いとも簡単にミツキが見つかった。ミツキは魔術書を取り出しアタフタしている。
「えっと・・・・・・こ、攻撃魔法、攻撃魔法は・・・・・・」
ミツキは必死でページを捲る。その手は緊張で震え、捲ることさえ覚束ない。
「オラァ!ブツブツ言ってないで大人しくしろ!」
団員の一人が、ミツキの髪を鷲掴みにする。
「ううっ、サイジさん・・・・・・助けて、ください・・・・・・」
呻き声にも似たものを聞き私は居ても立ってもいられなくなった。
折角パーティになれた3人だ。一緒に戦って、早くこんなクソみたいな世界を抜け出してやるんだ!
私の足は、その意思の力で軽やかに動く。羽でも生えたかのように、跳躍出来る。ミツキを取り囲む奴に、棍棒を食らわせる。相手は動揺していたのかその場で立ち竦み、頭に思いっ切りヒットさせ、地に伏せさせる。
ようやくミツキの下へ辿りつく。髪を掴んでいる奴にも棍棒をお見舞いしようとしたが、ものの見事に同じ棍棒で防がれる。
「おい、そんなんで俺と戦おうってか?」
「その手を退けろ!私の大切な・・・・・・仲間なんだ!!!」
私は直ぐさま第2撃に取りかかる。頭は防がれる。となると胴や足を狙おう。いや、ミツキを壁にされる。なら・・・・・・ミツキの髪を掴むその手を撃ち、その隙に追撃だ!!
少し体を屈ませ、胴狙いのフェイントをかます。団員はまんまと引っかかり、胴を防御する態勢に移行する。体を胴に寄せる姿勢になれば、掴んでいる手はガラ空きだ。
ミツキの髪を掴むその汚らわしい手に、力の限り振り切った棍棒を叩き付ける。
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
団員は叩かれた手をブルンブルンと振り払っている。
この隙を待っていた。私はすかさず、団員の局部に突きを食らわす。麻のズボンと見られる団員の情けない戦闘服は、ソレを守る役割を一切放棄し、団員は断末魔にも似た声を発し、気絶した。
その現場を見守ること無く、私はミツキの下へ駆け寄った。
「大丈夫か?」
その声に安心したのか、ミツキの頬に雨が降る。
「こ・・・・・・怖かった~~!!!」
「おい、泣いてる場合じゃないぞ!」
その通り、状況は全く変わっていない。また私達は団員に取り囲まれてしまった。
「良くも団長のタマにキズを・・・・・・絶対許さん!!!!!!」
え、さっきの団長だったの?
「待て!団長をヤルような奴だ!これ以上戦っても犠牲者が増えるだけだ」
団員達は団長を私が討ち取ったということで、慌てふためいている。
「とと・・・・・・・取りあえず、娘っこを返してやろうぜ、な、おめぇもそれでいいよな?」
私に示談を申し込んできた。
「もちろんです。元々私はそれを取り戻す為に来たんですから」
「誰が『取り戻す』ですって?」
突然、奥の扉が勢いを付けて開いた。
「アタシは、『戻ってあげ』に来たの」
私はその、屈託の無い笑顔で溢れたセレジアの姿を見た途端、足が勝手に動き出していた。そして、もうもしかしたら逢えないかも知れないという不安をかき消すように、私達は抱擁を交わした。
初めてのパーティの勝利は、再会の嬉し涙で飾られた。