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大型わんこ系イケメンって、どんなジャンル?

マガツは諦めが早いので、あんまりへこたれません。

まあいっか、が口癖かもしれない。


ちょっぴりズレてる主従が行く。




ど、どうしよう泣きたい。

でも泣いたらヘンだよね!?


「主、なにか御加減が?まさか主、俺に何か至らない点でも・・・」


私に対して忠犬のように「主」と付きまとっているのは、銀髪にアイスブルーの眼をしたイケメン騎士さんだ。

前回、森で助けたあの人である。

第一村人はっけーんなノリで助けてお家に連れてきたんだけれど、なんか凄い魔法使い扱いされました。

でも何を言っているのか分からなくて無表情を装いながらパニックになってると、混乱しすぎて口調もぶっきらぼうになっちゃって・・・「なにしたいのお前」みたいな事を言ったら、強くなりたいですとか言われた。


うん、よくわかんない。


でも初対面から思ったのは、このお兄さんはそう弱い騎士じゃないんだろうなーっていう、ちょっと見当違いなことだ。

・・・だってこのお兄さん超イケメン。

銀髪くらいなら映画とかで見るから分かるけど、青、それもアイスブルーみたいなすごく綺麗な目をして、更にイケメン。

紛う事なくイケメン。

それも凛々しい上に、中身まで騎士っぽいイケメンでした。


そんな相手が一般人なワケがない。


詳しいことを言ったら迷惑がかかるとかっていう大事な台詞をぽろっと零してたから、やっぱり王族とか、なんか凄い一族とか、とりあえず凄い人なんだろうっていうのは簡単に想像がついた。

ゲームとか漫画ではお決まりのアレである。

多分この人は主役か、王子様のポジションにいる人だ。

そう思った私はお願いしますと頼み込まれて断りきれなかった。

だって私NOとはいえない日本人気質ですからね!

威張ることではないが・・・。


で、「アレ」を使ってしまったのだ。


致死率99%くらい。

ただし、装着者のステータス大幅アップ!なお手製「寄生防具」を。

装着に耐えれば確実に魔王クラスにまでドーピング出来る素敵アイテムだけれど、適合率は限りなく低いソレを、騎士さんは装備してしまった。

左半身が動かないとか言ってるから、見せるだけ見せて、適当に誤魔化そっかな~とか呑気に思っていた。

だってこれ実用性ゼロと言っていい品物である。

覚悟完了!とかいってそのうち装備してみようかな、とノリで作った能力だけは超一級品の寄生防具は、ある意味呪われた防具扱いに近いものだった。

作った本人がそう思っていたのに、だ。

・・・当の騎士さんは気合と根性で右手のみを使って器用に装着しちゃって、寄生防具もノリノリで侵食してしまった。

してしまったのだ。


唸り声を上げ暴れる騎士さんに半泣きになりながらひたすらポーションをガブ飲みさせ、慣れない回復魔法を掛け続けること、七日七晩。


さりげなく回復魔法スキルの腕前が上がっちゃったり、新しく【極悪外道】とかいう不気味なスキルを得たりしつつ目が覚めたときには、左半身はがっちり銀色の鎧が覆い、右半身だけが生身な騎士さんが完成していました。

で、目が覚めるなり私のことを「主」呼ばわりして、ものすっごく懐いてきたのである。

慕うじゃなくてコレは懐くだと思う。


・・・このお兄さんどうしちゃったの!?


私がそう思っちゃっても無理はないだろう。

状態を見てみたら、寄生防具のせいかステータス欄がオープンされていた。

仲間申請もしていないのにステータス欄がオープンというのは在りえない事態で、よくよく目を凝らせば隷属という属性が付属されていた。


お陰でバッチリ素性も分かっちゃいました。


騎士さんのお名前はソリュート・ディヴァルヴァ・ゲルニク。

現、寄生防具【ウロボロス】装着者

年は24歳。

身長183cm(鎧でやや身長がプラスされている模様)

体重85kg(鎧で+α)

職業「失われし王刃族」でした。

・・・これ、王族だろ?

・・・・・アウトォォォオオオオ!!!!






ことの起こりは多分、いや間違いなく、私がアレを作ったせいなんだと思う。






この世界に来た私は一通り自分のスキルを試してみた。

使えるものの確認と、どういうことが出来るのかを確かめるためにだ。

生存率を上げるためにも衣食住に関わる事にはせっせと時間を割いた。

初日で寝る間も惜しんで畑を作ったり、三日くらい森を散策して牧場で飼える野良山羊(?)を捕まえたり、現実世界でもあんまりしなかった料理をしてみたり、錬金というスキルで何ができるのか試してみたり。


その中でもポーション類は錬金に含まれるらしくて、あれこれと試行錯誤した結果色々出来ました。


毒薬、媚薬、霊薬、回復薬、時々・・・若返り薬。

ちょっと天才かも知れないとか呑気に思ってました。

実際にはスキルのお陰だったんだけど。

で、錬金関連に魔術道具を作るという選択肢があったりした。


魔術道具、略して魔具作り。


これには大いに嵌った。

多分、五、六十年没頭したんじゃないかと思う。

いやもしかしたら百年単位になるのかもしれない。

この世界に来て、日の感覚が全く分からなくなった。

おなかが減るからご飯は食べるけど、三日四日は寝なくていいし、部屋から出ない引きこもり生活をしてたらすっかり時間の感覚をなくしてしまったのだ。

持ってきてたカレンダーなんてとっくの昔に使い終わっている。

でも不便はないしーと開き直って、私は昼も夜も魔具作りに没頭した。

手持ちの資材が足りなさそうだと思ったら森へ採取に行き、手ごろなものを見つけては手を加える。

半分を捻り出した魔力が構成し、もう半分は魔具への惜しみない愛で作られたソレは、我ながら最高傑作といえる代物になった。

そう。

完成したのは、単なる装備品ではななく【貴重品】(キーアイテム)に分類されるほどの評価を得た、寄生防具【ウロボロス】である。


・・・今私にまとわりついているのが、ソレなのだ。


少なくとも彼を構成している半分はウロボロスで間違いない。

動かないはずだった左半身は我ながら見事な装飾だと頷ける出来の銀の鎧に覆われており、顔に至っても左半分だけが器用に銀色の兜というか仮面のようなものが覆っている。

左目があるはずの場所には全てを塗りつぶしたような、ぽっかりとした暗闇。

その奥には赤い光が煌々と瞬いているのが見える。

多分、左半身がウロボロス。

残った生身の右半身が騎士さんのもので間違いないだろう。

私はそう思っていたので、彼をどう呼ぶべきかと悩んでしまった。


「なんと、呼べば・・・」

「我が主よ!今の俺は貴方が慈しみ育んで造り上げた【ウロボロス】そのものです。心置きなく我が名を御呼びください」


満面の笑みを浮かべる騎士さん。

左半分が鎧になってもイケメンはイケメンだった。

むしろ笑うとイケメン度が上がるな・・・って、な、何だとぉぉおお!?!?!???

思いっきり驚く私だったが、その声は口に出ていたらしく、騎士さん・・・改めウロボロスが目を瞬かせた。


「何か至らぬ点が御座いましたか?主よ」

「わ、わたし、主なの?」

「はい。我が半身を御造りに為られたのは主以外に他なりません。半身である「ウロボロス」()を造る間、寝食共にしていただいたあの生まれる前の幸福感は、我が魂にもきっちりと刻み込まれております」

「え、えええー・・・。ウロボロスは間違いなくわたしの最高傑作だけど、何で人間に?乗っ取ったの??」

「【ウロボロス】であった己は単なる一防具でした。如何に主が万能の力を与えて下さったとしても己自身は動けぬ鉄塊、糧となるモノがなければ己は動けぬまま。しかし、主のお役に立つのが道具として最高の誉。そして俺も貴方に恩返しをしたかった。その一念で晴れて【ウロボロス】(我ら)となったのです」


主褒めて!と言わんばかりに晴れて半分イケメン騎士になったウロボロスが見つめてくる。

あ、なんだろう・・・物凄くあのイケメンさんに悪いことをした気がしてきた。

口調がいつのまにか元の女口調になっちゃったけど、もう繕う気力もないからいいや・・・。

突っ込みいれてくる気配もないし。


「か、体を元の持ち主の騎士さんに返すとか・・・」

「ご安心ください主!既に魂レベルでの融合を果たしております」

「ほ、ほんとう?」

「こう言えば分かりやすいでしょうか・・・大いなる賢者様、俺は俺の意思でもって貴方に御仕えしたいのです。この鎧のモノと打ち解け、俺は改めて生まれ変わったのです。貴方様の使徒に!」


・・・う、うーわーーー。

感化されてる。

思いっきり感化されてるからソレ!!

にこにこと笑みを浮かべる右半分は生身の騎士さん。

鎧の顔は変わんないけど、鎧にも関わらず笑みを浮かべているであろう寄生防具の【ウロボロス】。

しくった。

思いっきりこれはしくじったんじゃないのかな、これ。

だってステータスの種族欄が人間から造魔を行ったり来たりしてる・・・し・・?

・・・あ、半人半造魔で落ち着いた。


「主よ、何も問題は無いのです」

「ない、のかなぁ」

「ありません」


あんまりにもきっぱりとウロボロスが言い切るので、まあいいか、と割り切ることにした。

だってほら、本人がいいっていってるし。

改めてウロボロスのステータスを見る。


ソリュート=ウロボロス

マガツ隷属

半人半造魔

創られし守護者(ガーディアン)

188cm95kg

24歳(生後3時間)


LV46


HP 6666/6666

MP 0/0

筋力 812

耐久 721

敏捷 666

魔力 666

知力 666

精神 666

器用 666

幸運 666

魅了 666


所持スキル

【物理無効】【魔法反射】【精神抵抗(大)】【攻撃力(大)】【自己再生(大)】【守護の誓い】【強化外骨格】【造魔化】【王家の血筋】


・・・これ、いいのかな。

これこそまさにチートってやつじゃないか?

多分、もともと騎士さんのステータスも高かったんだと思う。

筋力や耐久はそこに上乗せした、という形のようだ。

そして低かった部分をウロボロスが底上げしたのが、この「666」ってなってるステータス部分なんだろう。

MPが無いのはウロボロスと融合したからかな?

で、結局のところ、プラスマイナスした結果こうなったんだろう。

・・・でもさ、所持スキルが我ながら、作った本人が言うことじゃないけど、ちょっとチートっぽいよなぁ。


【物理無効】物理による攻撃を無効にする。このスキルでは神具クラスは無効化できない。

【魔法反射】全ての魔法は無効となり反射される。絶対なる魔法防御。回復魔法も反射の対象となる。

【精神抵抗(大)】精神に作用する攻撃に強くなる。あくまで抵抗レベル。

【攻撃力(大)】寄生防具の補助を受け、肉体の枷を解き放って攻撃できる。ただしHPを削るので注意。

【自己再生(大)】攻撃を受けても自己再生できる。

【守護の誓い】絶対的な忠誠と守護を誓ったものの証。守備についたときに自身のステータスを上げる。

【強化外骨格】寄生防具が外骨格となり、多少の損傷でも戦闘を続行する。退却は許されない。

【造魔化】ウロボロスに主導権を渡すことにより造魔化する。造魔なので不老。肉体的な老いもないので不死とも取れる。

【王家の血筋】ソリュートの体に流れる高貴な血筋により「※※」が行える。


物理無効は普通の冒険者や魔物相手には俺TUEEEEが出来るだろう。

でも、廃人クラスの冒険者なら神具クラスなんて当然持ってるものだ。

何せ私だって一つや二つくらいは拾ってある。

・・・魔法使いだから装備できないけど。

魔法反射だって【貫通】のスキルを持ってたら関係ないものだし、精神抵抗はあくまで抵抗するもの。

攻撃力大は自己再生があるから使えるスキルだけど、なければ自滅してしまうダメスキルになるところだった。

強化外骨格は使いどころが難しいスキルだし、守護の誓いはウロボロスが守護に回ったときだけだ。

まあ、絶対的な忠誠っていうのは嬉しいけど。

造魔化っていうのも、今の彼らは半分既にそんなものだし、王家の血筋に関しては詳細不明・・・。

うーん、思ったほど俺TUEEEじゃないし、チートでもないかなぁ。

ゲーム中盤までなら無双できるってトコだろうか。


「如何なされましたか主」

「いや、ウロボロスつよいなーって」

「・・・っ、お褒めいただき光栄です主よ!!」


鎧になっているはずの顔すらにやけている。

ああ本当に嬉しいんだなぁ。

ウロボロスだけど騎士さんで。

騎士さんだけどウロボロスで。

呼び方に困るけど、ウロボロスでいいっていってたし、呼ぶのはウロボロスでいいんだろうか?

中身については騎士さん(ソリュート)とうちの子(【ウロボロス】)で呼び分けておこう、こっそりと。


「じゃあ、えーっと・・・ウロボロス、今のきみって騎士さんでもあるんだよね?」

「ええ。今の俺は鎧であり、ヒトです。鎧はまだ殆ど自我がなかった為、融合したとはいえ変わったことと言えば今の俺には貴方を慕う心と、強靭な肉体を得たということでしょうか」


私の言葉を肯定するようウロボロスが頷く。

話が長くなると思ったらしく椅子を用意され、大人しく腰を下ろすことにする。

手際よく紅茶まで用意され、これは騎士さんの行動なのだろうか?と疑問に思った。

まあ騎士さんなんだろうが。

ずずっと啜った紅茶は香り高く、自分で入れたもの以上においしかった。

同じ茶葉と水のはずなんだが・・・こんなことも出来るとは、素の家事スキルが高そうだなぁ。


「この辺りって町とかあるの?」

「ここいらに大きな町はありません。ここは不帰の森。森の近くには時折迷い出た魔物を狩るために小さな村が点在していますが、街となると五日ほどは歩かねばなりません」

「・・・不帰の森?」


首を傾げる。

騎士さんは驚いたようだが、よろしければ、と簡単に説明してくれた。


「・・・ここは不帰の森といいまして、魔物の闊歩するヒトの近づかぬ森なのです。俺は逃げるために足を踏み入れましたが、正気なら誰もこんな深くにまで足を踏み入れない場所なのです主よ」

「普通は生きていられないから、かな?」

「はい。霧のようにも見える魔力の濃さから、人間は異常をきたし気が狂うか魔物となります。・・・主が牧場で育てているのも魔物です」

「うん、そんな気はしてた」

「そうでしたか、流石です主よ。とはいえ、他の輩と比べるでもなく、主はこの森に住めるほど力のあるお方。外でも主の手を煩わせるものはいないでしょう」


またしても流石です主よ、と褒められる。

プレイヤーとしては精々中の下、いやもしかすると下の上程度なのだが、それでも強い、んだろうか?

チロならともかく、マガツはまだLV10くらいなのに。

このレベルだって戦うんじゃなくて畑仕事とか魔具作りで上がったようなものだ。

MPと魔力以外は魔術師だからフツーレベルより貧弱なくらいなんだが・・・まあいっか。


「じゃあ、私は外に出ても生きていけるだけの強さがある、と?」

「勿論。ですが、もし主に何か起こったとしても、全身全霊でお守りいたします・・・我が君」


ああ、乙女時代に言われてみたかったな・・・その台詞。

まあ現実にこんなイケメンと出会ってたら近づこうとは思わないだろう。

だって絶対女同士の陰険なアレやらコレやらが発生しているに違いないのだ・・・恐ろしい。


しかしここはファンタジー。


多分このくらいの美形はごろごろしているのだろう。

ウロボロスが何があっても守って見せますと力説しているので、私は初めて外にいってみようかなと思った。

だってこんなイケメンがごろごろしてるかも、って思ったら、出てみなきゃ損でしょ損。

外見が変わろうが、人外になろうが、綺麗なものは綺麗だと思えるし、好きなものは好きなままだ。

ちょっとばかり私のことを最強だと勘違いしているウロボロスの色眼鏡を通して掛けられる言葉を除いたとしても、森レベルのモンスターなら手間取らない程度の力がある上、こうも強力なパートナーがいるんだからなんとかなるんだろう。

うん、HPとか防御力とかは完全にウロボロスが勝ってるしね。

・・・というかよくよく見なくても完璧にウロボロスは私よりステータスが上だし、ボディガードしてくれるってんなら問題ないね!


「外に行くならついてきてくれるよね?」

「当 然 で す」

「そ、そっか。じゃあ準備して外に行ってみようか!」


思ったより強く断言され、少しびびった。

でもそうと決まれば思い立ったが吉日。

今まで独り身生活だっただけあり、私のフットワークの軽さは見事なものだ。

ちゃちゃっと着替え、ポーチだけだと心もとないので収納の魔法の具合を試し、どこでも補充が出来るかチェックする。

収納の魔法はボックスと直結だから便利だ。

整頓するには流石にボックスに直接手を入れないといけないけど、出し入れだけならこれで十分。

一々長い呪文を唱えるのは面倒だが、そうそう中身をまるっと取り替えたりすることはないだろうし、ここからポーチに移せるなら自宅じゃなくても万全の準備が出来るってことだから安心だ。

ポーチの中身を確かめる。

ポーション良し。

お金良し。

武器防具良し。

・・・あ、あんまり良いの装備して身包みはがされると大変だからやっぱり中級の装備にしとこう。

ぱぱっと整えていると、ウロボロスがちょっと驚いていた。

よく見たらウロボロスは丸腰だ。

思い返してみれば森で倒れていた騎士さんも武器を持っていなかった気がする。

失くしたのかもしれない。


「あ、ウロボロスは武器を持ってる?」

「いえ。俺はあの時武器を無くしてしまっていて・・・」

「じゃあこれ」


取り出したのは氷で出来たかのような美しい装飾のクレイモア。

その名も「コールドペイン【凍れる痛み】」

きらきらと輝く氷の結晶やうっすらと霜の張った氷銀色の刀身は、今の銀という色が大半を占めるウロボロスにとても似合うだろう。


うん、思ったとおり騎士さんのアイスブルーの瞳によく似合っている。


上級にまでは届かないが切れ味(攻撃力)は中々なもので、斬りつけた際に高確率で凍らせてくれる。

その上、素早さをやや上げてくれるオマケつき。

通常は柄の部分だけで、大体三十センチほどの大きさである。

戦闘時や使い手が必要とした時に生じる氷の結晶で構成されている刃の部分は一、二メートル程だから、全長は一、五メートル。

結構大振りなクレイモアに分類されるだろう。

名前や見た目からして冷たそうな武器だが、全ての武器を出してチェックしてみたところ、使わないときは柄だけになってくれる便利な剣で特に冷たいとは思わなかった。

・・・寒さを感じるのが鈍くなったワケじゃなければ、特に障害はないだろう。

しかしそれを目にしたウロボロスは戸惑っていた。

気付かなかっただけで、実はコレ、冷たいんだろうか?


「こ、れを・・・いただいてよろしいのか?」

「これ以外がいい?」

「しかし、これは・・・国宝級では」

「いや単なる武器だから」

「・・・主が俺のためとおっしゃるのでしたら、ありがたく頂戴致します」


恭しく受け取るウロボロスに、この世界ってどうなってるんだろうと不思議に思う。

だってさっきのコールドペインだってちょっとイイ武器屋に売っている程度のものだ。

まあ、属性の追加効果があるお陰でそこそこお高いのだが。

それを国宝級とか・・・田舎なのかなぁ?とちょっと失礼なことを考える。

とはいえ、所変われば物価も変わるし、たまたまこの辺りには魔法効果が付いた武器類が少ないんだろうということにしておく。

そんなどうでもいいことを考えていると、腰に剣を装着し終えたウロボロスが私の傍に付き添った。


おお・・・銀色の鎧姿が素晴らしく格好いい。


だけど全体的に白っぽいというか銀色だ。

左目だけが赤いから、銀や白といった色の中だとどうしても左目に注目がいってしまいとても目立つ。

悪くは無い。

悪くは無いんだけど、青とか色の濃いマントがあればもっと銀色が映えるかも知れない。

よし決めた。

町に着いたら防具屋を見てマントを見繕ってあげよう。


「それじゃあ、いこうか。お家は配下に任せるから畑も牧場も大丈夫だろうし」

「よろしいのですか?主が丹精籠めた畑や牧場を・・・」

「たまに魔法で戻ればいいよ。折角ウロボロスと二人旅だし、道案内よろしく」

「はい主、俺にお任せください!」


あんまりにも嬉しそうなウロボロスに、ちょっとした観光旅行気分になりつつ私はその背中についていった。

初めて自分で見る外の世界はどんな風なのかなぁと、期待に胸を膨らませて。






騎士さんはアレです。

刷り込みされた雛のごとくマガツに主主いって付き添います。

ウロボロスがまだ幼い自我しかないので、その影響です。

世間知らずにも程があるマガツに騎士さんはちょっと不思議に思っているけど、その分俺は役に立てる!と喜んでたり。


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