第2話
「どう? 少しは勉強になった?」
「おう。勉強に集中し過ぎて、どっかの誰かが告白をすっぽかすぐらいにはな」
「……あのなぁ」
隣でニヤつく高広の顔が憎たらしいが情けない話、結局僕は終始先輩にまともな挨拶の一つも出来なかった。それもこれも、下校のチャイムが鳴ったと同時に高広が「やべ、今日は配達があるんだっけ!」とか言い出して慌てて片付け、そのままの勢いで図書室を出ていったせいである。
「じゃあ、俺は配達があるから先行くわ。また明日な」
「うん、ばいば~い」
「じゃあな」
小走りで校門を駆け抜けていく親友を見送ると、僕と鈴宮の二人っきりで下校することとなった。黄昏の差しこんだオレンジ色の校舎を後にしながらゆっくりと、どちらかともなく歩き出す。
「黒羽里先輩って、本当に綺麗な人だよね」
「そうだな。……綺麗過ぎて、迂闊に近寄れないぐらい」
「それは樹クンの問題だと思うけどねぇ。黒羽里先輩に告白する人って、結構多いんだよ?」
「そりゃあんだけ綺麗な人だから……」
「今まで告白された人数およそ二十四人。一年生七人、二年生五人、残りの十二人は三年生だったかな」
流石ウワサ好きの新聞部員。そんな情報まで掴んでいるのか。
「会える時間残り少ないんだからさ、早く告白しちゃいなよ。もしかしたら、もしかするかもよ?」
「……僕が誰かに告白して、成功した試しはないぞ?」
「それはソレ、これはコレ」
「他人事だからって勝手言ってくれるなぁ」
ちなみに鈴宮とも高広同様幼稚園からの付き合いで家もご近所同士。こうして一緒に帰ること自体も珍しくはない。前に一度付き合ってるんじゃないかって聞かれたけど、その時は二人して即答で否定した。少なくとも、僕は鈴宮とそういう関係にはなりたくない。別に彼女に魅力が無いとかそういうわけじゃなくて、こう……何て言えばいいのか難しいけど、親しい友達、で止めておきたいのだ。
と、ここで鈴宮の上目遣いな視線に気づく。
「今回のテスト、上手くいきそう?」
「どうだろ……英語が苦手だからあとで復習しておくけど」
「頑張って、平均点以上は取らなきゃね」
「わかってるってば」
たまには高得点を取って二人を驚かせてやるんだ。……と意気込んではみたものの、実はまだ不安な部分が残っていたことを思い出す。
「そうだ。数学のところで質問があるんだけど」
「ん、教えてしんぜよう。どこどこ?」
「ありがと。えっと、ノートに書いたこの…………ぇ……? あ、あれ?」
いくら鞄に手を突っ込んでも、右手は空を掴むばかりで肝心のノートが見当たらない。教科書の間も丹念に探してみたが何も挟まってない。いくら探しても、ノートの『ノ』の字も見つからなかった。
「あららぁ……図書室に置いてきたね樹クン?」
「机の上に忘れたのかな……うわぁどうしよ。下校時刻とっくに過ぎてるし……」
「なら急いで取ってきなよ。もしかしたら、まだ先輩が残ってるかもしれないよ?」
「せ、先輩は関係ないってのに」
「ほらほら行った行った。夜になったら図書室の幽霊がノートを隠しちゃうかもよ?」
「笑えない冗談だなぁ……それ」
……仕方ない。
僕は鈴宮に別れを告げると元来た道を全力で走り出した。期末試験が近いというのに、真面目に勉強したノートを置いて帰ってしまうとはこれまた情けない。
大慌てで昇降口に駆け込むと幸い鍵は掛かっておらず、今から帰ろうとする数人の生徒の姿も見つけた。この分なら図書室もギリギリ開いているかもしれない。
「まだ間に合うはず。最悪、先生からマスターキーでも借りるさ」
靴を履き替え、第二図書室がある三階へと階段を一気に駆け上る。窓の向こうでは、いよいよ宵闇が差し迫ってきている。蛍光灯で照らされた廊下がいつにも増して不気味に見えるのは、さっき聞いた幽霊の話のせいだろうか。そんなものいるわけないのに。
そのまま踊り場を抜け三階に到着。本来は三年生が使っているフロアだけど、何故か今は人の気配が全く感じられない。もう全員下校したということだろうか。
「っと。そんなことより、早く図書室に行かないと」
夜の帳が落ちてしまえば窓の外はあっという間に真っ暗だ。帰りが遅くなっては親に迷惑を掛けるし勉強する時間も少なくなってしまう。どうか鍵が開けっぱなしでありますように。小さく祈りながら走り出すこと数分、開きかかった第二図書室の扉が視界に入った。よし、と小さくガッツポーズ。そして、安心した僕の目の前を突然、白い影が過ぎった。
「…………え?」
立ち止り、思わず我が目を疑った。
第二図書室の前の廊下に、白い人型の影がふわりふわりと尾を引くようにして消えていく。あれは、煙? いや、煙だったら火災報知機が黙っちゃいないだろう。じゃあ、あれは何だ? 今僕が見たものは、一体何なんだ? おおよその見当が付いているくせに、僕はその可能性を頭から否定していた。
「……た、質の悪い悪戯だ。そうに、決まってる」
先刻聞いた噂話が、突然頭の中でリフレインし始める。第二図書室には、白い髪の少女の幽霊が出る。好きな男の子に見捨てられた少女は、夜な夜な徘徊して誰かを連れ去ろうと……
ごくり、と自分が唾を飲み込む音でさえ吃驚しそうになる。かたかたと震える右手をどうにか戸口に掴ませ、僕は思い切って扉を開け放った。
「……ッ」
古びた本の匂いと、僅かに差しこむ夜光。
ただ薄暗いだけの第二図書室には今しがた見かけた白い影など、文字通り影も形も無かった。僕はホッと胸をなで下ろす。さっきのはやっぱり見間違いだ。もしかしたら、勉強のし過ぎで疲れていたのかもしれない。ノートを取って帰ったら今日は早めに休もう。そう肝に命じながら電気のスイッチを探して押しこむ。白い蛍光灯の光が図書室を静かに照らし……たかと思うと、何故か突然フッと消えてしまった。故障だろうか?
「暗くて見づらいけど、別に何にも見えないわけじゃないさ」
ちなみに、この独り言は怖いのを我慢して強がっているだけである。とはいえ、勉強していた席に向かえば必然的にノートは見つかるはずなのだから特に問題は無いはずだ。僕はそのまま確固たる足取りで堂々と暗闇の図書室を歩いていった。
「……あった」
案の定、放課後の努力の結晶は机の上に無造作に放置されていた。二度目の安堵の息を漏らし、ノートを鞄に詰め込んで踵を返した、その瞬間。
「……見ツケタ」
背後から突然響いた、少女の声。
今この場所には僕一人しかいないはずなのに響いた、誰かの声。
いつの間にか現れた背後の気配に気づき、僕の足はピタリと床に張り付いてしまったかのように止まる。
振り返るべきか、振り返らざるべきか。
迷う僕の背中に依然として声が投げかけられた。
「もしかして、コワいのか? くす、くすくす……」
挑発的な声が僕を嘲笑う。
振り返るな、これは相手の作戦だ。きっと、そうやって挑発に乗ったところを襲いかかるに決まっている。ならば、僕が取るべき行動はただ一つ。そのまま振り返らず一直線に図書室の外へ――
「あぁ、そうか。憧れの先輩に告白する勇気もないチキンじゃ、この私に振り返る勇気もないわけだな」
「だ、誰がチキンだ!? …………ッあ」
つい条件反射でツッコんでしまい、同時にくるりと身体を百八十度ターン。僕の視線のその先には、白髪の少女がふわふわと宙に浮かんでいた。
「う、うわあああぁッ!?」
未知の恐怖と困惑に駆られ、僕は弾かれるようにして後退り、その拍子で思わず尻もちをついてしまった。
「あらあら失礼ね。レディを見て腰を抜かすなんて」
「ど、どどどど……どうなって……!? 違、キミが、あの、ゆ、ゆゆゆ」
「せっかく素質のある子を見つけたのに、まさかこぉんなビビリだなんてね」
くすくすと笑う白髪の少女。驚き戸惑いつつも、不思議と僕は彼女から目が離せないでいた。
身の丈ほどはある白い髪は処女雪のように白く、異国の海のように澄んだ群青の瞳は僕を射抜くようにして見つめている。僕と同じ学校指定のブレザーに、スカートからは白磁のように透き通った御御足を覗かせている。何処か人間離れした美少女……いや、幽霊だから事実人間離れしている。妙に思考が冷めているのは、彼女の姿に思わず見惚れてしまっていたからだろうか。
「初めまして」
スカートの裾を持ち上げ優雅に挨拶する少女に、僕は……ただただ無言を返すのみだった。すると、少女の端正な顔がくしゃ、と小さく歪む。
「もう。私がせっかく挨拶してるのに、君はだんまりなの?」
「いやあの、だってその……」
「私が、幽霊だから?」
こくこくと頷くので精一杯だった。そもそも、今こうやって幽霊と対峙しているという次点で頭がおかしくなりそうなのに、まさか彼女は今の僕がまともに会話出来る状況にあるとでも思っているのだろうか。
「ふむ……それは困ったわね。では、少し余興と洒落込みましょうか」
「よ、余興……ですか?」
「うむ」
すると、白髪の少女はブレザーのポケットから何かを取り出し、僕たちが勉強していた席にふわりと着地した。人差し指で机をちょんちょんと示し、
「君も」
「あぁ、ハイ」
言われるがまま僕も席に着く。彼女は机の上に、不思議な紋様が描かれた銀色のカードを裏向きにしたままV字型に並べ始めた。何となく見覚えのあるカードだ。トランプとは違う、確か……
「タロットカード……ですか?」
「そうよ」
やや薄く平べったいV字型のようにカードを七枚並べ終えると、残ったカードの内三枚をV字の中央上部に並べる。彼女の手には残ったカードが握られている。
「もっともオーソドックスな、フォーチュン・オラクルというタイプの占い方よ。……ま、今はこのカタチにあまり意味は無いのだけれど」
「……? どういうことですか?」
「私の予想が正しければ、君はあるカードを引くわ」
「あるカードって、ここにあるのは全部カードですよね?」
「……存外しょうもないことを気にするのね」
「ぅえ!? いや、あの、ゴメンなさい……」
背筋が凍りつくような視線を一身に受け止め、僕は何だか申し訳なくなって俯いてしまう。彼女はフンと鼻を鳴らし仕切り直す。
「さ、好きなカードを一枚選んでごらんなさいな」
「……」
どうしてこんなことに付き合っているのだろう。さっさと帰って勉強の続き……というか、僕は生きて帰れるのだろうか。目の前には、好きな男の子の代わりに誰かを連れ去ってしまうと噂の少女がいるというのに。
「ほら、早くなさい」
「……はい」
とにかく、今はカードを引くしかない。意を決した僕はV字型に並べられたカードのど真ん中に、勢いよく手を伸ばした。指先がカードに触れようとしたその時、トクン、と右手が脈打つ感触に襲われ一瞬カードを取ることに躊躇してしまった。
「え、今……の?」
僅かに視線を彼女に向けると、うっすらと笑みを浮かべていた。どうぞ? とでも言いたげな視線に促された僕はそのままカードを一枚、引いた。
「……」
カードというよりかはプレートのような、少々の厚みと重量感を感じさせるカードには、天秤を手にした西洋の騎士が描かれており、カード上部にはローマ数字でXIと表記されている。
「えっと……」
タロットカードの存在こそ知っていたものの、カードの意味することや絵柄から推測される未来や運勢などはさっぱりわからない。僕が応えを求めるような視線を彼女に向けると、ニヤリ、と口の端をつり上げた。
「大アルカナ11番目のカード、『Justice』」
「正義……ですか」
まるで物語の主人公のような引きの強さ……なのだろうか。僕が疑問符を浮かべていると、彼女は簡単にカードの説明をしてくれた。
「正位置では『公正さ』や『誠意』を、逆位置なら『不正』や『不道徳』と……それから『一方的な恋』を示すわ」
『一方的な』の部分に僕の心臓がギクリと一つ跳ねる。
「……そ、それってつまり」
「脈ナシ。さっさと諦めて別の女でも探した方が賢明というわけ」
くすくすと意地悪く笑う少女を見、僕はムッと顔をしかめる。初対面の人間にそう言った物言いはどうなのか。例え幽霊だとしても、少し失礼じゃないだろうか。……実を言うと、占いの結果に僕は若干凹んでいた。
「ま、それはどうでもいいの。今度は、君の力を見てみようじゃない」
「は、はぁ? 僕の力? いやあの、いきなり何の話ですか?」
「お誂え向きに……来たわ」
「え……?」
群青の瞳が僕の背後を鋭く見据えている。それに倣い僕が体を振り向かせて――息を呑んだ。
「な……!?」
第二図書室唯一の出入り口に、黒い靄を纏った人間のような何かがいた。人間のような、とは比喩でも何でもなくて、本当に人間のような形をした何かとした言いようがなかったからだ。カタチこそ人型ではあるものの、それが放つ異様過ぎる雰囲気は普通の人間のそれとは明らかに違う。いつの間に現れたのか、一体あれは何なのか。あれの目的は? 他の生徒は? 先生は? おおよそ今この状況下において何ら関係の無さそうな事柄まで、僕の脳裏を高速で過ぎっては消え、再び過ぎって消えていく。有体に言ってしまえば、パニック状態になっていた。
「な、何だよアレ!? アレも、キミの仲間か!?」
「まさか、むしろ逆。アレは敵だよ。恐らく偵察者だろう」
「偵察? いやあの、事情がさっぱり呑み込めないんですけど」
「では、カードを持って右手を前に掲げて御覧」
「こんな非常事態に何を言って――」
「――――ヤリナサイ」
背筋に氷の刀を突き付けられたかのような殺気、心根から震え上がってしまいそうな冷淡な声に僕は何も言い返せず竦んでしまった。多分、今何か反論したら確実に殺されていた……ような気がする。
僕は彼女の指示に従い、カードを握った右拳をまっすぐ突き出してみせた。
「次に、アルカナの名を呼ぶ」
「アルカナ……?」
「今君が引いたカードのことさ」
「正義……ですか」
「呼び方は自由だ。召喚とかコールとか、何でもいい。自分のアルカナを声で呼応させるの」
彼女の言ってることの意味がイマイチ分からない。そんなことをしてどうなるというのか。けれど僕は、彼女の言うとおり従い、即興で台詞を考えてみた。
「……応えろ、僕の“正義”!」
虚空に響く、渾身の決め台詞。厨二病と笑ってくれて構わない。今すぐにでも全身から火が出そうなほどに恥ずかしい台詞だが、これはあくまで彼女の言葉に従ったまでで、これで何も起こらなくても僕に責任は無い。断じて無い。
そして、事実何も起こらなかった。
依然として僕の背後には幽霊の少女が浮かび、目の前には黒い霧を纏った人型の何かが直立不動のまま。そして右手には金色の閃光が迸って――ッ!?
「う……わッ!? な、何だ!?」
「上手く顕現出来たようだな、朝日奈君」
僕の黒歴史になりかねないような恥ずかしい台詞に反応したかのようにカードは閃光を放ち、その形を徐々に変化させていく。手の平の上で、金色の光は細長い棒状に姿を伸ばしていき、その先端に幅広の刃のようなものが三度閃く。光は根元から少しずつ力を失っていくと、やがてその姿を露にした。優に二メートルはあろうかという長い柄に、先端には大きさの異なる三つの刃が夜光に反射して鈍く輝いている。それは、よくアンティークの甲冑が装備していそうな、槍と斧とを組み合わせた武器。
「斧 槍か。なるほど、騎士に相応しい得物じゃないか」
「ハルバード……?」
「呆けるなよ、アレが辛抱堪らんと叫んでいる」
「――ッ!」
ガッ、キィン――!
耳をつんざく甲高い金属音、弾け散る赤い火花。
ほぼ無意識のうちに、僕は斧槍の長い柄で黒い靄を纏った人型の攻撃を受け止めていた。どうして、動ける? 生まれて此の方、喧嘩なんてしたこともないし出来もしないような人間が、突然襲いかかられて何故反応できる? 頭の中で疑問が渦巻く僕に、少女は凛と声を張り上げる。
「今は深く考えず、イメージしてご覧」
「い、イメージってさ……!?」
「簡単だ。少し踊ればいい。まずは……払え」
彼女の言うとおり、斧槍を力任せに大きく振り回すと襲いかかってきた人型を払い除ける。大きく後退した人型は、その手に何処からともなく黒い剣を携えると再度突進を仕掛けてきた。
「薙いで、打ち降ろせ」
一言一句、彼女の言葉通りに体が勝手に動き、斧槍を斜めに薙いで剣を弾く。間髪いれず、薙いだ勢いを利用して体を回転させ、のけ反った人型の体に斧刃を上段から一気に打ち降ろす。一切の躊躇なく振り下ろされた一撃が人型の頭部に直撃すると、ガゴン、とドラム缶を叩いたようなくぐもった音が響いた。
「な、何で体が勝手に」
「今は考えるなと言っている。流れに身を任せ、自分の中の力を把握なさい」
強烈に叩きつけたのにも拘らず、なおも動き続ける人型の攻撃。しかし攻撃が来るたび、自分の体が勝手に動いて攻撃をいとも容易く往なしていく。上段から斬りかかられれば、斧槍を横に薙いで弾き、刺突が来れば半歩身をずらして回避、後すぐさま反撃に転じる。自分の体が自分のものではないような不可思議な感覚は、しかし何故か違和感と認識することは無かった。
「さて、そろそろいいだろう。……貫け」
人型が何か唸り声のようなものをあげながら跳躍し、上段に大きく振りかぶって愚直なまでに突っ込んでくる。僕は自分でも驚くほど冷静に、斧槍の柄を両手で握りしめ直すと、体が自然と人型の方へと駆けだしていた。相手の攻撃が当たるとは思わない。ただ、自分の頭の中で人型を貫くイメージだけが鮮明に出来上がっていて、そしてイメージは僅か数秒後に現実のものとなった。
『ゴォッ?! ……ウ、ウゴ……ググ……ッ』
黒い靄を纏った人型は僕の突き出した斧槍の先端部にあっさりと貫かれ、断末魔の呻き声を上げた後静かに霧散してしまった。
人型が消えたのと同時、その場にヘタレ込む僕の背後から、ぱちぱちぱちとひどく場違いな拍手が聞こえてきた。
「ん、合格だ。それだけの力があるなら、私も心強いな」
「……訳が、わかりませんよ。これ、一体何なんですか?」
「慌てなくても、全部説明するよ。朝日奈樹君」
一度たりとも名乗ってもいないはずなのに、僕の名前を平然と呼ぶ彼女。驚愕と困惑とがない交ぜになった表情を浮かべる僕を見て、白髪の少女は何かを思い出したかのようにポンと手を打った。
「あぁ、自己紹介が遅れたな。私は萩月 真優。ご覧の通り、第二図書室で噂の幽霊で占星術師さ」
悠然と微笑みかける、白髪の幽霊少女。
この邂逅を境に僕は、僕の平凡すぎる日常と別れを告げることとなった。
序章第2話、お待たせ(?)しました。
今作は出来上がった文章を何度も何度も推敲しているため、投稿スペースがかなり遅れてます。
……それでも誤字が見つかっちゃったりするんですけどね;
次回更新は、来週の木曜日辺りを目処にしております。
では、待て次回。