表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

マイペース



「改めまして、久世浩也です。こんな恰好で申し訳ありません。今日はバイトの面接に伺いました」


 相手がいかにラフな格好であっても、形式は守るべきだろう。俺は自己紹介を始める。


「ああ、こりゃどうも。ボクの方こそこんな恰好で失礼いたします。大橋かなえです」


 見た目の割に常識はある人のようだった。予想以上にまっとうなあいさつが得られた。


「さっそく今回のバイトの件なんですが……」


 俺が切りだすと、大橋と名乗った面接官は片手をあげてそれを遮った。急に本題に入りすぎただろうか?


「本題の前に、久世さんお腹すいてません?」


「えっ? いやそうでもないですが」


 今朝は2限からだったので、遅めの朝食を講義室でとった。だからまだそれほど腹はすいていない。


「そうですか。でも残念。ボクはお腹がすいてしまったので、本題の前に食事をとらせてもらいます」


 前言撤回。この人、おかしいわ……。




 大橋と名乗った女性はまったりとコーヒーを飲みながら、クロワッサンとサラダのランチセットをパクついている。俺はというと所在なく体面に座っているしかない。


「食べます?」


 唐突に向かいに座っている女性からお誘いを受けるが、見ず知らずの女性のランチセットを誘いに乗って食べるバカなどいるはずもない。

 ランチセットを食べ終え、椅子に深くかけながら、つまようじで歯をシーハー始めた面接官を前に、俺は我慢できず声をかける。


「あの、バイトの件なんですけど!!」


「ふえっ!?」


 俺が声をかけると、驚ききってキョトンとした顔をして見せる面接官。

 コイツ、今俺のこと忘れていやがったな……。

 

 内心では相手のマイペースさに怒りがこみ上げてくるものの、それを無理やり押さえ込んで、俺はひきつりそうな営業スマイルで言う。


「そろそろバイトの業務内容の方……」


「合格です!!」


「はい?」


「ですから合格です。久世さん完璧です。ぜひバイトとして雇われてください!!」


 ちょっと待て、だからなにがどうなって、その前に業務内容とか、俺の拒否権とか!!

 完全に相手のペースに惑わされて、俺は目を白黒させた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ