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怪しい仕事


 …ワンコール、ツーコール。


 講義終了後の昼休み、決心が鈍らないうちにとかけた電話。


 …6回目、7回目とコール音は続く。


 何だ?おかしいな?電話番号を間違えただろうか?

 普通ならアルバイトの受付などは、個人営業でもない限りすぐさま応答があるはずだ。5万5千円という破格の日給から見ても、事業主は金のある企業だと思ったのだが…。


 …ガチャッ。


「はいはい?どちらさま?」


 まさかバイト募集の受付対応に、第一声で砕けた口調で、「どちらさま?」と言われるとは思わなかった。一瞬あぜんとしそうになるがなんとか瞬時に体制を立て直して答える。


「私、久世浩也と申します。今週の求人情報誌『ark』の紹介を見まして電話させていただいたのですが…」


「ああっ、どうもどうも。アルバイト希望の方でしたか。これは失礼しました」


「いえ、こちらで紹介されているバイトについて、業務内容などについてお聞きしたいのですが、担当の方をお願いできますか?」


 電話口の声は若い女性のもので、とてもアルバイトの担当者とは思えなかったのでそう聞くと、


「担当者?ああ、ボクですボク。えっと、業務内容ですか?ちょっと説明がめんどくさいな…うん。それじゃあきりもいいし…」


 電話口の向こうでぶつぶつと呟いている。

 今までのところ、このアルバイト担当を名乗る女への好感度、すなわち、このアルバイトに対する好感度は著しく下がっていた。


「うん。それじゃあ久世さん。あなた市内の方ですか?もしそれだったら、これからお時間があるようなら、実際にお会いしていろいろ説明したいと思うので、大針駅の前の喫茶店、『ポアロン』にこれませんか?」


ポアロン。知っている名前だった。大学から自転車で20分といったところだろうか。

 しかし、これまでの対応と会話で、やすやすと喫茶店まで出向くバカもいないだろう。せめてこれぐらいは聞かなければ。


「えっと、実際にあって話を聞く前にこれだけは聞いておきたいんですけど…」


「なんですか?」


「情報誌に書いてあった、日給5万5千円って本当ですか?」


「ええ、本当ですよ~。出来高次第でもっと上がるかもしれません。5万5千円は底値ですかね?」


「今すぐ行きます!!20分ほどかかるかもしれませんが待っていてください!!」


「あっ、はい。それじゃあお先にお待ちしてますね」




 勢いで返事をしてしまった…。

 金の亡者と言われても仕方がない。だって日給5万5千円どころか、それ以上が見込めるなんてなかなかあるもんじゃない。


 確かに危険はあるかもしれない。宗教かもしれない。犯罪すれすれの仕事かもしれない。

 でも、それでもこの金額は魅力的だった。

 それに、覚悟さえ決めればきっと大体のことはなんとかなるものだ。俺は自分自身にそう言い聞かせて、自転車にまたがった。


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