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第27話:裏庭の温泉計画と、至福の湯上がりモフモフ

「……よし。ここに魔力水を引き込んで、精霊石でぬくぬくに温めれば完璧だな」


 お昼休みの穏やかな太陽の下、俺は裏庭の開けた敷地で、スコップを片手に設計図を広げていた。

 先日の水嫌いなバブル・クーンのケアをきっかけに、俺の職人脳はある素晴らしいアイデアを思いついていたんだ。それは、水が苦手な魔獣でも思わずうっとりと浸かってしまうような、ハーブの香る『ペット用ぬくぬく温泉』をDIYすることだった。


「マスター、温泉を掘るんですかぁ!? それはもう、絶対に気持ちいいですぅ!」


 メリンがふかふかのウールを弾ませて大喜びし、カルラも「それなら、湯上がりにぴったりなひんやりハーブジュースを用意しなくちゃね」と優しく微笑む。

 受付カウンターから出てきたフィオも、金の狐耳をピコピコと忙しなく動かしながら、「温泉付きのペットホテルなんて王都初ですよ! これはまた予約が爆発しちゃいます!」と、すでに天才的な計算を頭の中で始めていた。


 ◇


「ちょっとレント! アンタだけでそんな楽しそうなもの作らないでよ! あたしたちも手伝ってあげるわ!」


 門の影から覗いていたシャロンが、顔を真っ赤にしながらポニーテールを揺らして裏庭へ入ってきた。

 クゥマも「穴掘りならオレのパワーの出番だクマ!」と、自慢の熊耳をピンと立たせて、丸太のような腕でガシガシと地面を掘り進めていく。


「べ、別にアンタと一緒に一緒のお風呂に入りたい(混浴の約束)とか、そんなハレンチな理由じゃないんだからね! ウチの毎日監視員の仕事として、安全性をチェックしてあげるだけよ!」


 シャロンは顔を耳まで真っ赤に染めて、フンスとツンツンした言い訳をまくし立てる。

 あの日以来、レントのゴッドハンドを無意識に求婚と捉え、ほぼ婚約状態だと勘違いしている二人は、一緒に温泉を作るというあまりにも情熱的なイベントに乙女心を激しく悶絶させていたのだ。


 俺の創造クラフトと、クゥマの怪力、そしてみんなの手仕事により、裏庭にはハーブの香る見事な岩風呂――『極上ペット温泉・アルカディアの湯』が瞬く間に完成した。


 ◇


「ふぅ……。お湯加減も、精霊石の温度調節もばっちりだな。みんな、お疲れ様!」


 完成したぬくぬく温泉には、ハーブ水と魔力水が絶妙に調合され、極上の湯気が立ち上っていた。

 試しにお留守番中のチビ・グリフォンやパタパタ・フェレットをそっとお湯に入れてみると、二匹とも一瞬で「ピィ……❤」「ふにゃぁ……っ」と目をハートにしてお湯にぷかぷかと浮かび、だらしなく蕩け去ってしまった。


 大成功だ。最高の温泉が完成し、プロの職人としての俺のテンションは限界突破していた。ブラッシングの熱が冷めやらない俺のギラギラとしたプロの目が、作業を終えて湯気の中で放心状態になっていたシャロンとクゥマを正確に捉える。


「……ああっ! シャロンさんに、クゥマさん! 大変だ!」


「ひゃっ!? だ、だから急に大声出さないでってば!」


 俺はギラギラとした純粋すぎる職人の目を輝かせ、特製クシを構え直して二人にじりじりと迫る。


「大変だ二人とも! 連日の温泉DIY(穴掘り労)のせいで、シャロンさん、肩の筋肉が過去最高にガチガチになって、自慢のポニーテールが悲鳴を上げている! クゥマさんも、腕を使いすぎて手首の関節が歪んで背中の剛毛の絡まりが限界を突破しているよ! 職人として放っておけない、今すぐ俺のクシで、温泉上がりの最高美に整えさせてくれ!」


「いやぁぁ! だから来ないでって言ってるでしょ! 一緒に温泉(混浴の罠)を完成させた直後に、そんな真剣な湯上がりプロポーズみたいな目で見つめられたら、あたしの野生の理性が……っ、仕来りが発動して本当に毎日お世話になっちゃうじゃないのよぉぉ!」


 シャロンは顔を耳まで真っ赤に染めて後ずさるが、レントの放つ圧倒的な職人オーラ(快感の予感)に身体がすくんで escape(逃げる)できない。


「ク, クシの誘惑が湯気の中で情熱的すぎるクマ……! だ、ダメクマ、ここでヘタレ込んで声を漏らしたら本当に嫁入りになっちゃうクマ……うぅぅ❤」


 クゥマもブラシで必死に防御の構えをとるが、本能はすでに快感の予感に震えていた。


「マスター、ストーーーーップですぅ!!」


 ズサアアアアッ!

 そこへ、驚異的な反応速度で割り込んできたメリンが、湯上がり用に新調したばかりの巨大なふかふかバスタオルを俺との間にバッと広げて物理的なウールの壁を作った。


「シャロンちゃん、クゥマちゃん! ぬくぬく温泉の前でうちのマスターに変な仕来りを押し付けないで、命が惜しければ早くお帰りくださいぃ!」


「そうです! 温泉のどさくさに紛れた混浴求婚は禁止です! マスター、あいつらは湯気が上がったのをいいことに毎日通っている、ただの常連ツンデレです! ほら、大人しく私の尻尾をモフモフして目を覚ましてください!」


 フィオが俺の右腕にガシッと抱きついて強力なブレーキをかけ、カルラが笑顔のまま「お風呂上がりはめっ、よ❤」とライバル二人を笑顔の圧力で押し戻していく。


「待ってくれみんな! 俺はただプロとして、彼女たちの毛並みを温泉上がりの国宝級に磨き上げたいだけなんだ! 職人のこだわりを邪魔しないでくれー!」


「ダメなものはダメですぅー!」


 結局、俺の職人魂の暴走は三人の完璧な連携によって阻止され、俺はズルズルと居間の奥へ引きずられていくのだった。


「も、もう何なのよあのマスターはぁぁ……! でも、あたしたちのために最高のぬくぬく温泉を作ってくれて、すごく格好よくて……うぅぅ!」

「オレ、この温泉で毎日レントにお世話されたいクマ……❤」


 引き離された後も、顔の赤みを湯気と手で必死に仰ぎながら、完成したばかりの極上温泉を見つめてツンデレな勘違いをさらに深めるシャロンとクゥマ。

 みんなの愛情と手仕事で『特製ぬくぬく温泉』が加わったペットホテル『アルカディア』には、今日もモフモフの癒やしと、賑やかで可愛い修羅場の声がどこまでものどかに響き渡るのだった。


お読みいただき、ありがとうございます!

みんなでワイワイ力を合わせた裏庭の『特製ぬくぬく温泉』が見事に完成!

お留守番の魔獣たちもぷかぷかと浮かんで蕩け去る、最高のペットスパエリアへと進化を遂げました。


共同作業を経て、ますます「混浴・新婚生活」的なツンデレ勘違いを拗らせていくシャロンたちと、それを超スピードで阻止するメイン3人の、いつもの賑やかで温かいアットホームコメディをお届けしました。


次回、新しくなった温泉付きホテルに、あの「隣国のロイヤルお得意様(エリザベス王女&ギルバート隊長)」が、月イチの定期メンテナンスのために再び大挙してやってくることに……!?


続きを楽しみにしていただける方は、ぜひブックマークや評価での応援をよろしくお願いいたします!


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