91 第8の国の災厄5
その時、異世界の太陽で異変が起きた。
広大な表面のある場所で、炎が急に燃えさかり、宇宙に向かって長く立ち上がった。
そして、それは炎の熱竜になった。
熱竜は異世界のある場所に向かって、大量の熱線を放出しながら飛んできた。
それはウォーター川流域、ジョージ公国だった。
公国の中心都市マーゴにいたクラリスは、最大の脅威がやって来ることにすぐに気がついた。
「危ない。空の上から燃えさかるものがやって来る。」
彼女は自分の最大の魔力を使い、ジョージ公国中の人間と魔族に、強い警報を発した。
「みなさん!!! 早く建物の中に避難してください!!! 」
クラリス、アーサー、メイ、メイナードの4人は、石造りの大きな建物の中に避難した。
すると、空を覆うほどの巨大な熱竜が姿を現わした。
ジョージ公国中の気温が上昇した。
クラリスが言った。
「災厄がこの国の空の上にやって来ました。巨大な熱竜です。きっとウォーター川の大量の水が目当てなのでしょう。」
建物の中でアーサーが言った。
「クラリスさん。私の足に飛行魔術をかけてください。そして、空に現われた熱竜の元に転移させてください。私があの熱竜と戦います。」
「アーサー王子様。私も一緒に行きます。熱からお体を守るサポートに回ります。」
メイナードも言った。
「クラリス様。私にも飛行魔術をおかけください。私も王子様をサポートします。」
最後にクラリスはメイに言った。
「メイは、戦いで受けるダメージ回復のために、ヒール魔術の準備をして待機してください。」
「はい。お嬢様。」
3人は気温がかなり高くなっている外に出た。
「それでは、アーサー王子様、メイナードさん。準備はいいですね。お2人の体を最大の冷気で作った
甲冑で守ります。それでも、かなり熱いですが。ご勘弁を。」
その時、3人のすぐそばに瞬間転移した者がいた。
ザラだった。
「姉様。今は休戦です。私も戦いに行きたいのですが、やはり世界最高の剣を使う英雄と世界最高の槍使いのサポートをしましょう。」
「そうですね。ザラ、私と力を合わせてお2人の体をできる限り低い冷気と、最高に早く飛ぶことのできる飛行で守りましょう。」
クラリスとザラが魔術で作った冷気に甲冑で守られたアーサーとメイナードが、空に飛び上がった。
空の高い場所まで飛び上がり、アーサーとメイナードは熱竜のすぐ前の場所に静止した。
「アーサー王子様。熱竜のすぐそばにいるのに全く熱くありませんね。」
「クラリスさんとザラさんの魔力は強いのですね。メイナード、行きますよ。」
「王子様。どのような戦法で戦いましょうか。」
メイナードの問いに、アーサーは微笑んで答えた。
「子供の頃、家庭教師のショウに教えてもらいました。『巨大な敵に出会ったら、自分の力を信じて、何も考えずに、全力を尽くせ、勇気を出せ!!! 』」
「えっ!!! ‥‥確かにそのとおりです。」
2人の剣と槍が、熱竜に向かって攻撃を開始した。
熱竜は尾と口から熱線を放出して攻撃してきたが、2人は最速の飛行で避けることができた。
アーサーが言った。
「メイナード。熱竜の尾の動きが邪魔じゃまです。尾が動くために重要な箇所を徹底的に槍で突いてください。私は首を一瞬で切ってしまいましょう。」
「王子様。すばらしい戦法です。帰ったらショウ様に自慢しましょう。」
そう言うとメイナードは熱竜の尾の動きと同調して動き始めた。
その動きを見ていると、神経の中心となっている場所がわかった。
そして、熱竜の尾に向かって彼の槍が動いた。
短い波の突きは連続速射、長い波の突きは体ごと強く動く大砲‥‥
何千、何万回、そして一瞬メイナードは後方の長い空間をジャンプして距離を作った。
その後、槍を高く上げて、そして最大の力で振り下ろした。
槍は強いバネのようにしなって、先端の刃が熱竜の尾を目がけて叩きつけられた。
尾は神経系統を完全に破壊されて、完全に動きを止めた。
(ワイバーン様、あなたほどの槍の技ではありませんが。英雄を助けることができました。)
全力を全て出し切ったメイナードは、少しずつゆっくりと降下した。
「メイナード。ありがとう。後は私が―― 」
アーサーは熱竜の口から放出される熱線を交わしながら、首を一閃するタイミングを狙った。
しかし、なかなか良いタイミングは巡ってこなかった。
何回も何回もトライした。
そして最後に、わずかなギリギリのタイミングの瞬間がやってきた。
アーサーは全力の力で熱竜に向かって飛び、その首に剣を一閃させた。
(鋭く、鋭く。スジャール様の剣のように、どんなに固い物であっても我が剣は一閃する。)
しかし、熱竜の熱線もアーサーの体全体を包んだ。
それを見ていたクラリスが自分の残りの魔力を使って詠唱した。
「シェアー‥‥ 」
アーサーの剣が首に一閃した熱竜は、消滅した。
しかし、アーサーの体は熱線を浴び、まる焦げになって落下した。
同じように、アーサーが浴びた熱線の半分を浴びたクラリスも、まる焦げになってその場に倒れた。
それを見ていたザラはとても驚いた。
「姉様。熱竜の熱線の効力を半減したとしても、かなりのものなのですよ。お2人とも死んでしまったとしてもなんの不思議もありません。私の魔力はもう少ないのですよ―― 」
ザラは大粒の涙を流しながら、ヒール魔術をかけはじめた。
しかし、戦いのため多くの魔力を使っていたので、すぐに魔力切れになった。
「ザラ様。御心配なく。」
メイが全力で、クラリスとアーサーに向かってヒール魔術をかけ始めた。
やがて、クラリスとアーサーは熱線を浴びたダメージから回復し、意識を取り戻した。
それに気がついた泣き顔のザラが言った。
「姉様。よかった。それにしても驚くような決断でした。」
「驚きましたか。でも考えずにすぐに決断したのですよ。私にとっては普通の当たり前の結論です。」
「はい。姉様にとって英雄様は、それほど大切な存在なのですね。」
「ザラ。きっと、あなたにもそのような方が必ずできる。私の素敵な妹にふさわしい方が―
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