88 第8の国の災厄2
暗黒騎士の甲冑を着ているザラは、剣を抜いた。
「お姉様が一番不得意の分野で戦わせてもらいます。」
「そうですか。良いですよ。――ウィッチ・スウォード―― 」
「剣をお持ちなんですか。それでは遠慮なく。」
そう言った途端、ザラは光のような速さで剣を振り始めた。
それに対してクラリスは、最短のコースで剣を振り、それを防いだ。
何千何万回続いた。
‥‥‥‥
最後にはザラがじれて、後ろに飛び距離をとった。
「お姉様は、いつの間に剣を習われたのですか。」
「特に習ってはいません。ただ、私はいつも英雄が世界最高の剣士として戦う姿をそばで見ています。さらに直接見なくても、その方とは強く心が結ばれていますから、戦った光景は私の心の中に流れ込んでいます。」
「真実に至る魔眼ですね! 現在や過去に起きた出来事を見ることができ、そして自分でも再現できるという究極の力ですね。でも問題ありませんよ。お姉様、本気を出していただけませんか! 」
「仕方がありません。」
そうクラリスが言った瞬間、ザラが突然攻撃を再びしかけ、突きを入れてきた。
突然の目に見えない一撃でクラリスは避けたが、ほほを少しかすった。
真っ白いそのほほに赤い血が流れたが、彼女が右手で触るとヒール魔術で消えてしまった。
「ザラ。今はほんとうに不意を突かれました。鋭い一撃でしたね。私のほほを傷つけることができるのは、あなたしかいません。すばらしい剣技です。」
「‥‥‥‥私の最高の一撃でした。お姉様の心の準備が整っていない時ではないと、体に触れることはできないと思っていました。千載一遇のチャンスでしたが残念です。」
ザラはとても落胆したような表情を見せたが、すぐにリカバリーした。
「それならば、何回も何回繰り返し、またチャンスを作れば良いのですね!!! 」
再びザラは嵐のように剣を振り始めた。
今度は手加減せず、力を目一杯入れた一撃一撃が続いた。
その攻撃を防ぐために、クラリスも自分の剣を目一杯力を入れて振り続けた。
闘技場のような空間では、メイナードが伝説の槍使いワイバーンと対峙していた。
ワイバーンが言った。
「現世の最高の槍使い殿。失礼ですが、お名前をお聞かせ願いたい。」
「メイナードと申します。」
「メイナード殿ですか、私が良く知っている構えですね。体の中の気の巡りもよく知っています‥‥‥‥まさかとは思いますが家名も教えていただけますか。」
「マクベーンです。ゴード王国ゴガン州の出身です。」
「ゴガンのマクベーン―― 失礼した。それでは参ろう。」
ワイバーンが伝説の鋭い槍の攻撃をしかけてきた。
それは、メイナードが今まで見たことのない動きとスピードだった。
メイナードはなんとか防ぐのに精一杯だった。
「メイナード殿。すばらしい動きをしているな。初見で私の槍の攻撃にここまで対応したのは、対戦者の中で貴殿が最初だ。さらに上げますよ。」
歴史上最高の槍使いは、最高の表情になり、ゾーンに入った。
なぜだがわからないが、メイナードの心と体もそれに引きずられ、ゾーンに入った。
ワイバーンは様々な槍の攻撃を見せた。
短い波の突きは連続速射、長い波の突きは体ごと強く動く大砲‥‥
いつしか、メイナードも反射的にワイバーンと同じ攻撃をしていた。
それはどれくらい続いたのだろう、一瞬ワイバーンは後方の長い距離をジャンプした。
ワイバーンは言った。
「そうです。そうです。あなたは私以上の槍使いになるでしょう。最後に特別な攻撃をしますよ。それを知っている者はこの世にはいません。見た者は全て死んでしますから。」
そう言うと、ワイバーンはメイナード目がけて鋭く近づいた。
槍を高く上げて、そして最大の力で振り下ろした。
槍は強いバネのようにしなって、先端の刃がメイナード目がけて叩きつけられた。
正確には少しずらされていた。
すさまじい勢いの矢先はメイナードの甲冑をかすった。
甲冑が摩擦熱でとても熱くなっていた。
「ワイバーン様。今、槍を振り下ろす場所をわざと‥‥‥‥‥‥ 」
ワイバーンはニッコリと微笑んでいた。
「今、確かに伝授しました。私以上の槍使いになって、英雄の偉業を助けてあげてください。美しき心を映す世界の守護者の魔女様が災厄を知り退けることができるよう祈っております。」
英霊であるワイバーンは少しづつ、美しい光りの多数の玉になって消えて行った。
「メイナード・マクベーン。ワイバーン・マクベーンが誇る子孫。もう存在する必要は既に無い。」
クラリスとザラの戦いは激しく長く続き、いつ終わりが来るのかわからないほどだった。
そのうち、2人が戦う町の廃墟のような広場の片隅に異変があった。
四葉のクローバが生えて白い花が咲き始め、そのうちその数がだんだん増加してきた。
やがて四葉のクローバーは繁茂し、クラリスとザラが動けないほどになった。
クラリスが言った。
「ザラ。これではもう動けません。一端、ここで休戦にしませんか。」
「仕方がないですね。それにしても、これは魔女の国にいる『あの人』の仕業ですね。」
「『あの人』という言い方は止めなさい。母様です。真実に至る魔女、魔女の国の女王クリスタです。私達を苦労して産んでいただいた母様です。」
「知りません。お姉様。今は休戦することに同意します。ただし、別の場所で行われている英雄様の戦いは別ですよ。魔眼で見るためのヒントです。時間軸を工夫しました。」
そう言うと、ザラはクラリスの前から消えた。
「時間軸を工夫したのか。そうすると、私の心がどうしても捕らわれてしまう時間より過去ね。たぶん、アーサー王子様と出会った前の時間のどこかの空間に違いないわ。」
クラリスの美しい青い瞳が星のように輝いた。
しばらくして、彼女は見つけた。
「わかった! この時間のこの場所ね。アーサメイナードメイナードさんは大丈夫かしら。過去の英霊達と対峙しているようみたい。」
クラリスの魔眼は時間の最初から事実を映した。
「メイナードさんが、伝説の槍使いのワイバーンの子孫だったとは、この出会いはとてもすばらしい出会いでよかった。それから、アーサー王子様は‥‥‥‥‥‥‥‥えっ!!!! 」
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