85 第7の国の災厄10
クラリスは十分に準備し、カン王国の人々に魔術をかけるため、心の中に鏡を転送させた。
鏡は最高に喜んだ記憶と最高の芸術を映し出し、人々は人間に戻ることができた。
しかし、あまり魔力を使い過ぎた影響で、彼女は深い眠りに入った。
皇帝シンの配慮で、自然豊かな山岳地帯の中にある皇帝の別荘でクラリスは眠り静養した。
深い睡眠に落ちている彼女の意識に呼び掛ける声がした。
「クラリス、クラリス、クラリス、クラリス‥‥‥‥ 」
彼女の意識は少し呼び覚まされた。そして、夢の中に視野ができた。
最初はボーッとした視界の中に椅子を2つそろえたテーブルが見えた。
1人の女性が座ったいた。
「だれ‥‥ 」
少しずつ視野がはっきりし、やがて――
「母様!!! 」
年齢がほとんど変らないような、自分とそっくりの顔や背格好だった。
母親のクリスタは、深い優しさを包んだ笑顔を彼女に見せていた。
そして手招きして、テーブルに着くよう導いた。
「クラリス。がんばりましたね。もう7つの災厄を防ぎ7か国を守りました。あなたはほんとうによくやりました。私の自慢の娘です。」
「いえいえ。私だけではなく、アーサー王子様、メイ、メイナードさんが困難な状況にあっても常にそばにいてサポートしくれるからできたのです。」
「そうですね。とてつもない困難は、絶対に1人の力では乗り越えることができません。残り3つの災厄が残っていますが、みなさんと力を合わせて立ち向かってください。」
「母様。よくわからないことがあるので、お聞きして良いですか。」
「なんですか。」
「カンの国に7番目の災厄をもたらした暗黒騎士、飛躍のマルコのことです。人間にとって、想像をどこまでも伸ばして飛躍することはとても大切な心の動きです。それがなぜ、暗黒騎士に? 」
「飛躍して考えることは大切です。人間の文明を発展させてきたと言っても過言ではありません。しかし、飛躍は必ず努力を伴わなければなりません。しかも、血みどろになるような苦難に耐えて―― 」
「はい。母様の言われるとおりです。」
「血みどろになるような苦難、絶え間ない努力、それを長い時間、何回も繰り返すことが必要なのです。そしてようやく、飛躍をもたらすため運命の神が微笑むのです。」
「マルコは別の道を選んだのでしょうか。いや、きっと魔王アスモデウスに選ばされたと言った方が正しいのですね。」
その世界に、海洋都市ベネがあった。マルコはその都市で代々海洋貿易を営んでいた。
彼はさまざま情報を集め、それを分析して値段の安い地方から品を仕入れ、値段の高い地方に売りさばき大もうけをしていた。
彼の家に古くから伝えられた、貿易に必要な準備をいつも怠らなかった。
準備はほんとうに大変で、みんながぐっすり眠る深夜ですら眠ることはできなかった。
ある日の深夜、疲れがたまり過ぎて彼は眠ってしまった。
朝になった。いつものとおり、船長が彼に貿易の手順を危機に来た。
「オーナー、今からどこに行って何を仕入れますか。」
少しの遠慮もなく船長が家に入り彼の部屋のドアを開けた勢いで、眼が覚めた。
実は何の検討も完了していなかった。しかし、まじめな彼には正直に言えなかった。
しかも、連日の疲労で正しい判断ができなかった。
「う――ん。そうだな、カナー諸島まで行って果物を仕入れ、大都市国家に売りさばいてきてくれ。」
「はいわかりました。ただ、港でみんなが言っています。あそからへんの島々は最近ハリケーンに襲われて、売れるような果物が品薄になっているようですよ。だから高い。」
「大丈夫さ。私はそこを狙おうとしてるのさ。特に今最高においしいファイアーフルーツ、世界中どこの地方の人々にも好まれている。今が品薄状態だったら、何倍の値段でも売りさばくことが確実さ。」
「わかりました。」
船長は港に向い船を出した。
3か月が過ぎた。
マルコの船が港に戻ってきた。
船長がオーナーの家に来た。
いつもは、家の中の船長の部屋までづけづけと入ってくるのに、今度は違った。
トン、トン、トン、トン
だれだろうと思い、マルコは家のドアを開けた。
そこには、とても険しい顔をした船長がいた。彼は1枚の紙切れをもっていた。
「オーナー。私はあなたの船長を止めさせていただきます。」
そう言うと、何かの紙切れをマルコに無理矢理渡して、急いで逃げるように去って行った。
マルコがそれを見ると、ドラゴンフルーツ買掛金の手形だった。
それは驚くほど高額で、マルコの全財産の十倍だった。
「なに! こんなに高いのか! で、手形を落す売上げはどうなったんだ!!! 」
マルコは急いで外に出て船長を追い、必死に探した。
しかし、どこを探してもいなかった。その後、マルコは自分の船に行った。
船に上がると驚くべきことがわかった。
大量の山積みされたファイアーフルーツが売れないでそこにあった。
「え――――っ! 」
マルコは心臓のあたりを押さえて、その場に倒れそうになった。
「だいじょうぶか。」
友人の船主に抱き留められた。
「マルコ。大災難だったな。事前に、慎重に情報を分析するお前が、なんでカナー諸島のファイアーフルーツに手を出したんだ。」
「ハリケーンに襲われたから品薄で、世界的に人気がある果物だから高額で売れると思ったのに―― 」
「知らなかったのか。ウォーターフルーツが大量に入っているんだよ。」
「ウォーターフルーツ! ファイヤーフルーツより数段おいしいけど、収穫数が少なく高額で売上げにつながらないのではないか? 」
「それが、ウォーターフルーツの収穫数を何倍にもする栽培方法を考えられたんだ。出回る数が飛躍的に伸びて、しかも段違いにおいしい。今やファイヤーフルーツは商売の対象にならないくらい安い―― 」
「そうか、それで意気込んでカナリー諸島に向かい、ファイヤーフルーツの仕入れに向かった船長はだまされて、高額でもいいと買いまくったのか‥‥‥‥ 」
‥‥‥‥‥‥‥‥
誰もいないマルコの部屋の机の上に、乱雑に積まれた資料があった。
その何段目から下に少しはみ出している資料があった。
題名が見えた‥‥ウォーターフルーツの飛躍的な生産量の拡大‥
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