表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/89

8 王子は扉の外に放置された

 1日中馬で進み、アーサー王子と騎士メイナードはランカスター公爵の城に到着しようとしていた。




 既に伝書鳩で知らせてあったので、城の前にはランカスター公爵を先頭に多くの家臣達がアーサーを出迎え、長い行列が出来ていた。




 アーサ-は無意識に、その行列の中にクラリスがいないか探していた。


 しかし、公爵の御令嬢とおぼしき服装の娘はいたがクラリスはいなかった。




「王子様。御自身の領地に赴任されて早々、兵糧や武器の不足に対処しなければならないとは大変でございます。十分ではないと思いますが、我が領地から御用立ていたします。」




「公爵、感謝します。必ず後日返却します。御自身が率いる軍は武器に留まらず、甲冑や軍服にまで最大の工夫がされていますね。それに兵糧も、食べると力がでそうなものばかりでしたね。」




「そこまで詳細に観察されるとはさすがでございます。超人的な王子様の感覚やお考えは、普通の人間の何倍も早く深い。ただ、私が心配なのは王子様はいつもとてもお疲れになられていますね。」




「はい。正直に言うと、私のほんとうの姿はとても弱い人間なのです。もろく傷つきやすく、いつもいつも、心が折れそうな所で留まっているような感じなのです。気がつくと、心はぼろぼろです。」




「王子様。どうでしょうか。御領地にすぐに御帰還なされず、せめて1日だけでも我が城で御休息ください。敵国の侵入はすぐにはありません。情報収集のため潜入させている者達から報告を受けています。」




「はい。お言葉にあまえさせていただきます。あの……ク」


 アーサーがそう言いかけた時、2人の着飾った娘が王子の前に進み出ておじぎをした。




「ランカスター公爵の長女パトリシアでございます。殿下、お見知りおきを。」


「次女のエレノアでございます。お目にかかれて身に余る光栄でございます。」




「御丁寧な御挨拶ありがとうございます。公爵の御令嬢はお美しい方ばかりですね。確か……ク」




 ランカスター公爵は、2人の姉の前でその名前が出てはまずいので、急いで言葉をさえぎった。


「さあさあ。王子様、私の城の中には不思議な物がいっぱいありますよ。御自由に散策してください。」




 公爵はなぜかアーサ-の目の前で、右方向をさっと指さした。


「わかりました。それでは見せていただきます。」




「私もおとも致します。」


 アーサーの後ろに控えていた騎士メイナードが言った。




「私の城の中は安全ですから、おともの方は不要ですよ。王子様、お一人でぶらぶらするのも気晴らしには良いでしょう。騎士殿、別室でお茶でも飲みながら、私と武術の話をしてお待ちしましょう。」




 メイナードがアーサーに聞いた。


「王子様。それでよろしいでしょうか。」




 自分を警護する緊張から解き放してあげようと考えたアーサーはうなづいた。








 公爵が指さした方向にアーサーは歩き始めた。


 いつものくせで、無意識に石畳の上を早歩きをしていた。




(いけない。いけない。今日は何もしなくてもいいのだから、ゆっくり歩かなければ。)


 しばらく歩くと、城の中というのに木々や花々が目立ってきた。




 そして、アーサーは意外な物を見た。




「丸太小屋???――――」








 その日の朝、ランカスター公爵の3女クラリスの起床は遅くなってしまった。


 実は侍女のメイとともに3日間留守をしていて、昨日の夜遅く帰ってきたばかりだった。




 遠方の山岳地帯へ出かけて、薬草の採取をしてきたのだった。


 ベッドで熟睡していたクラリスは、メイの声で起された。




「お嬢様。起きてください。もう太陽が相当高く昇っていますよ。」




「う――――ん。あっ、寝過ぎてしまった! 」




 クラリスは急いで体を起し、顔を洗い服装を着替えて遅い朝食をとっていた。


 すると、彼女は魔力で丸太小屋周辺で《《あること》》を感知した。




「えっ! なんでいるの? 」




 そして、急いで出入口に走っていき、扉を開けた。




 すると、そこには背が高い訪問者が立っていた。


 金色のくせが強い髪の毛、目が大きい美しい顔だった。




「アーサー王子様。なんで、ここにいらっしゃるのですか??? 」




 彼も丸太小屋から、黒髪で美しい青い瞳に優しさをたたえた美しい娘が出てきたことに驚いた。




「クラリスさん。どうしてそこから出てきたのですか??? 」




 クラリスは、いつも楽しいことを考えつく名人だった。




「王子様。私は父親や姉達から迫害され、このような場所で住んでいます。」




「えっ。そうなんですか!!! 今から抗議に行ってきます!!! 」


 アーサーは歩いてきた方向に、体の向きを変えて走りだそうとした。




「うそ。うそ。うそで――――す。」


 彼の意外な反応に大変驚いたクラリスは必死で止めた。




「うそでよかった。私は大変驚きました。怒りで心臓が壊れると思いました。」




「すいませんでした。王子様。それでは私の質問にもお答えいただきますか。なんで、ここにいらっしゃるのですか?」




「実は、クラリス様の姉上であるパトリシア様との婚約が決定しましたので、ランカスター公爵家にごあいさつに来たのです。」




 それを聞いた途端、クラリスは全くの無表情になった。




 そして《《無言のまま振り返って》》、丸太小屋の中に戻り扉を閉めた。




 バタン




「えっ…………」




 アーサー王子は1人、そこに残された。

 そして、かなりの時間放置された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ