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79 第7の国の災厄4

 アーサー達は、檻の中に入れられていた約3千人の住民達を解放した。




 帝都セイトから派遣されていた役人達はあわてて逃げて行った。




 千花草のにおいで神経がまひした牢獄の番人達は。牢の中に運び込まれた。




 アーサー達4人とコウメイは、会議室で今後の対応を話し合った。




 クラリスは魔眼で、獣人に変身している番人達の体を調査した。




「やっぱり、体の最小単位の段階では人間の要素が獣人のものと戦っています。どんなに暗黒騎士の魔力が強いとしても、人間と魔族の境を簡単に越えることができないと思います。」




「クラリスさん。人間と魔族、2つの種族の境はなんで決まっているのでしょうか。それとも、誰が決めているのでしょうか。」




「世界のことわりを決めるのは神です。人間を魔族にしてしまうのは神でしか行うことができません。」




「それでは、マルコが行っていることは、どのような魔術なんでしょうか。」




「魔族の組成物を人間の体に入れて変身させているということですが、ほんとうにそれは何でしょうか。」




 クラリスが自分の疑問を話した時、そばで話しを聞いていたコウメイが言った。




「この町の住民達が魔族に変ることを半ば強制された時、それを断固として拒否し一旦は逃げることに成功した男がいます。その男が飲むことを強要された魔族の組成物を持っています。」




「その方は今、どこにいらっしゃるのですか? 」




「幸運にも、この牢獄の中にいるはずです。」








 やがて、その男が会議室に入ってきた。




 コウメイが言った。




「ハンさん。お願いがあるのですが。前にこっそり私に教えてくれた、魔族に変るため国の役人から渡された物はまだ持っていますか。」




「はい。人間を魔族に変えてしまう気味の悪い物ですが、何しろ見かけが非常にきれいで、なかなか捨てることができません。御城主様、いけないことでしたでしょうか。」




「いいえ違います。お願いですが、その物をこの机の上に置いて私達に見せていただけますか。」




「お安い御用です。」




 ハンはふところから小さな何かを取り出し、机の上に置いた。




 それは、水色に輝く宝石のようだった。




「あっ! これは! 」




 見た瞬間、クラリスが非常に驚いた。




 彼女の魔眼が強く光った。




「魔石です。いや、もう少し正確に言うと魔族の体を魔族の中心の魔石の中に集約させたものです。ですから、生きています。たぶん、元の位置に戻せます。」




 クラリスは詠唱を始めた。




「生き物の体は定められた場所で構成される。体は体、核は核、本来あるべき位置に戻れ。」




 すると、みんなが見ている机の上で驚くべきことがおきた。




 水色に輝く宝石のようなものを水色の煙のようなものが包んだ。




 それは最後にはどろどろとした流動体になった。




 一匹のスライムが現われ、クラリスに向かってお礼をしたように見えた。




「大丈夫です。このスライムに害はありません。悪しき心を映す世界にあるスライムの居住地で、いきなり全てを魔石の中に固められ連れて来られたそうです。」




 正義感の強いメイナードが言った。




「すると、マルコとかいう暗黒騎士は生きている魔族を魔石に集約して固め、それを人間に飲ませて魔族のようにしているのですね。魔族も犠牲者ですね。」




「そうです。体の中心から放出される魔族の魔力のおかげで、人間の体も魔力のようになっています。同時に、生きているけど何もできない魔族も体の中にいるのです。」




 コウメイが聞いた。




「クラリス様。この町の住民約3千人が魔族のようになっています。魔石に集約された魔族を体の中から出すことができれば、元に戻ることができるのですね。」




「人間と魔族がそれぞれ生きているのに、一つに同化しています。‥‥‥‥どうやれば、それぞれの命に悪い影響なく分離することができるのか、大変な問題です。」




 考え込んでいたクラリスが、別の問題を感じ取った。




「みなさん。緊急の問題が発生しました。この町に大軍がやってきます。1日ほどで着く距離です。」




 コウメイが言った。




「クラリス様。それは帝都セイトからやってきた国軍ですね。この牢獄の状況が早馬で連絡されたようですね。いったい、どれくらいの人数ですか。」




「はい。約5万人です。」




「そうですか。では私が迎えることにしましょう。」




 心配してアーサーが聞いた。




「コウメイ先生。大丈夫ですか。」




「大丈夫です。昔教えたことのある優秀な生徒に、カッコいいところを見せますよ。」




「この町の守備隊は何人ですか。」




「全て私に従ってこの牢獄に入っていましたが今は出ています。500人です。」




「えっ!!! 」




 コウメイは微笑んだ。




 その顔を見ると、軍勢の差に何も問題がないように見えた。




 しかし、100倍だった。




「私もメイナードと一緒に、加わります。」




「英雄と世界最高の槍使いが加わっていただけるのですね。よかった。少し自信が出てきた。」




 コウメイはおどけた顔で、心臓のあたりをなで回した。








 コウメイの軍はみんな優秀な者ばかりだった。




 偵察に出ていた者が正確に調査したことを報告した。




「コウメイ様。皇帝シンが自ら5万人を率いています。この町の反乱を討伐するのではなく、地方を視察するためだとおふれが出ています。」




「皇帝のお心の中はだいたいわかります。私がお向かいに行きましょう。」




 城門の前にコウメイは出た。




 アーサーとメイナードも同行した。




 やがて、町に通ずる街道に入り切れないほどの国軍が進軍してきた。




 見ただけで相手を圧倒するかのように、さまざまなドラゴンをモチーフにした旗がたなびいていた。








 1人の豪華な甲冑を着た騎馬武者が2人の体の大きな獣人に守られながら前に進んできていた。




 皇帝シンだった。




「コウメイよ。私はその顔を見ると、心がもっとも安らかになる。教えてほしい。人間を魔族にすることは是か非か? 」




 問われたコウメイは、すぐに即答した。




「皇帝陛下のお考えはどうであろうとも、私の考えを申し上げます。非です。私事のために公の進むべき方向をねじ曲げてはなりません。」




「予想どおりだな‥‥‥‥ 」

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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