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75 第6の国の災厄6

 美しき心を映す世界のはるかな昔の守護者、リサの苦労は実った。




 自分の心を牢獄にして、最愛の恋人の心に巣くっていた暗黒騎士ゴードンを閉じ込めていた。




 そして閉じ込めながら、長い年月をかけて暗黒騎士にたくさんの鎖をはめて力を奪った。




 しかし、自分の心の世界の大部分を魔王に使われ、魔族が好きなように利用できる世界にされた。




 だが最後には、自分の子孫であるクラリスがリサの元に現われ、自分の心を消滅させた。




 その結果、その世界も消滅した。




 そこに捕らわれていた多くの人々は、本来自分がいるべき世界に帰った。




 そのまま残ったのは、四葉のクローバーが生い茂り、きれいな泉が湧いている頂上がある山だけだった。








 山の頂上から降りてきたクラリスにアーサーが声をかけた。




「どうでした。頂上には何かありましたか。」




「頂上には、はるかなる昔に生きた美しき心を映す世界の守護者の魔女と、その最愛の恋人が眠っていました。さっきまで私達がいた世界はやはり、その魔女の心の中でした。」




「お嬢様。魔女の心は消滅したのですか。」




「はい、魔女リサさんの強い願いで、私が協力して消滅させました。その結果、その中に無理矢理送り込まれていた人々も、本来、自分達がいるべき国々に戻っているはずです。」




「暗黒騎士ゴードンはどうなったのですか。リサさんが心の世界を作らなければならなかった理由は、暗黒騎士が最愛の恋人の心に巣くってしまったからでした。」




「歴代最強の魔女のリサさんが長い年月をかけて、暗黒騎士に何重もの魔術の鎖をかけて恋人の心から引き離し、暗黒騎士としての力を使えないようにしました。問題はありません。」




 アーサーがほっとしたような口調で話した。




「今回転送された世界に存在した幻想の国に送り込まれていた人々は救われたのですね。よかった。」




 メイが言った。




「これで、防ぐべき世界の災厄もあと4か国ですね。お嬢様とアーサー王子様を、私とメイナードさんでお支えしますから、必ずやり遂げることができるはずです。」




 メイナードが不安そうな声で言った。




「ほんのわずかな、ちょっとした不安です。いままで6か国を巡った戦いで、いったどれくらいの時間が経っているのでしょうか。」




 クラリスが笑いながら言った。




「メイナードさん。知らないうちに恋人のフレイヤさんが年を取り、おばあさんになっていることなどありません。現実世界の時間でいうと、半年くらいしか経っていません。」




「すいません。不謹慎なことを聞いてしまいました。でも安心しました。」








 永久に暗い、悪しき心を映す世界の王宮で、魔王アスモデウスは6番目の災厄が消滅したことを感じた。




「はるか昔から、魔族のために密かに作られた世界が消えたか。ただ、作られた経緯があまりよくないから、無くなるべくして無くなったとも思えるがな―― 」




 魔王はそう言った後、あわてて口をふさいだ。




「いけない。いけない。悪しき心を映す世界の守護者として、過去の魔王が行ったことを、ある意味では否定してしまった。これも、災厄が6つも破られ、残り4つになった影響か‥‥ 」








 クラリス達4人は、白い花を咲かせた四葉のクローバーが美しく咲く山の中腹で、転移魔法陣に入った。




 そして、ある場所の転移した。




 すると、驚くべきことに、そこは魔族の世界だった。




「ここは? 人間界ですね。姿を隠しましょう。クラリスさんお願いします。」




 アーサーの言葉にすぐにクラリスが反応した。




「真実に至る魔女を継ぐクラリスが命ずる。全ての光を吸い込むカーテンよ。私達の回りの空間を囲え。」




 4人の姿は完全に見えなくなっなった。




 建てられている家々などは、人間のために作られた町だった。




 しかし、町の中を歩いているのは、ゴブリン、スケルトン、スライムなどの下級魔族ばかりだった。




 クラリスが魔眼で探査した。




「この町に大勢の人間がいます。町のはずれ、比較的大きな建物です。これは牢獄です。会いましょう。」




 姿を消したままメイが大きなムナジロガラスになり、それに乗って空を飛び牢獄に向かった。




 そして、その屋上に降りた。




 屋上には獣人の警備兵が巡回していた。




「中級の魔族に変身できてよかったな。獣人は身体能力がすごい。さっき、この頂上から飛び降りてみたが全く問題無く地上に着地できた。兵士に最も適している力だ。」




「そうだ。そうだ。腹が空きすぎて肉類を多く食べなくてはいけないのだけど。肉は十分に配給されるから全く問題ないな。」




「何も知らない一般住民は下級魔族にされてかわいそうだな。ゴブリン、スライム、スケルトンだ。その姿になっても人間の心を失わないのだから、かわいそうだな。」




 4人は大変なことを聞いた。




 アーサーが聞いた。




「クラリスさん。この牢獄の中には、何人くらいが収容されているのでしょうか。」




「ざっと3千人ほどです。たぶん、この町の住民の半数になるでしょう。」




「なんとかみなさんを救いたいのですが。まず事情を聞いてみましょう。」




 4人は牢獄の中に侵入した。




「アーサー王子様。牢獄はほとんど複数を収容する大きさですが、中に一つだけ1人だけを収容している牢獄があります。」




「そこに向かいましょう。そのように収容されているのは、たぶん特別な人なんでしょう。」




 クラリスの魔眼に従い、4人は独房に近づいた。




 その独房に近づくと、中に閉じ込められている人の姿が見えた。




「コウメイ先生!!! 」




 アーサーが驚いて言った。








 彼が昔会ったことのある印象深い人物だった。




 家庭教師だったショウから紹介された。




「この者はゴード王国からかなり東にあるカンという国の者で、私の学友です。学友ですが、その才能は私の何倍もあります。そして、誰もが見習うべき美しい心を持っています。」

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