74 第6の国の災厄5
クラリス達4人が待っている部屋に食事が運ばれてきた。
食事を給仕している人々は、無表情にたんたんと料理を並べていた。
メイがこっそりとクラリスに告げた。
「ここは現実世界と隔離されているとすると、私達のような来訪者はほとんどいないはずです。料理を出してもてなす経験は全くないはずですが‥…」
「そうですね。しかし、みなさん礼儀正しくしっかりしています。今、出されている料理もとてもきれいで美味しそうです。」
料理が全てセットされた後、長老が再び姿を見せた。
「みなさま、村の中で作ったもので、お口に合うかどうか心配です。それでも精一杯のものです。どうぞ、お召し上がりください。」
クラリスがこっそり、他の3人に合図した。
(食べても大丈夫です。毒は、入っていません。)
4人は食事を始めた。
アーサーが長老に聞いた。
「すばらしい料理です。昔からの伝統料理ですか。」
「いいえ。私達にそよ風が教えてくれるのです。この村の北へ行った場所に山があり、そこから時々優しい風が吹いてきます。気持ちのよいその風にあたると、私達は何かの知識を得ることができます。」
「その山には何があるのでしょうか。」
「聖なる山として、近寄ってはならないと法典に書かれています。」
次の日になった。
4人は話し合って、そよ風が吹いてくる山に登ることにした。
クラリスが魔眼で見ると、周囲が結界に囲まれていた。
小さな穴が開いており、そこからそよ風が吹いていた。
「そよ風に当ってみました。すると、その風は美しき心を映す世界で吹く風とほとんど同じでした。この世界を助けるヒントがあるような気がします。」
ムナジロガラスになったメイに乗って空を飛んで行くことも考えた。
しかし、中でコウモリのような魔族に襲われる危険性もあるので、歩いて山を登った。
木や草が何も生えていない、岩石に覆われた山だった。
中腹まで登ると、結界壁に行く手を阻まれた。
クラリスが魔眼で調査した。
「この高さの周囲を結界壁が作られています。かなり古い物で、この世界が作られたのと同時の年代の物です。しかし不思議なことに、私にはこの結界の構築魔術を理解できます。」
そして、裏側に回り込むと確かに小さな穴があった。
そこから優しい風が吹き出していた。
近づいて見ると、4人はさらに驚いた。
その穴から葉っぱを1枚生やした四つ葉のクローバーの茎が出ていた。
クラリスは全てを理解し深くおじぎをして、その葉に触った。
すると不思議なことが起きた。
四つ葉のクローバーの茎が次々に枝分かれし、四つ葉を次々につけ、小さな穴から結界を壊した。
白い花が一杯咲いた。
「私が呼ばれています。」
そう言ったクラリスにアーサーが聞いた。
「大丈夫ですか。」
「問題ありません。ひいひいおばあちゃんと話してきます。」
クラリスは結果で囲まれていた中に入った。
四つ葉のクローバーが咲き乱れている中に水の音が聞こえた。
彼女が近づくと泉があり、きれいな水が湧いていて透明だった。
さらに近づくと、泉の中に2人の人影が横たわっていた。
クラリスが大変驚くほど、横たわる1人の女性は自分とそっくりだった。
そして、もう1人の男性は思いやりのありそうな理知的な男性だった。
女性と男性の2人は手をしっかり握り合っていた。
あまり美しい光景だったのでクラリスは見とれていたが、彼女は話しかけられた。
「こんにちは。あなたは私の子孫、美しき心を映す世界を今守っている守護者ですね。」
「ここまで入り込んでしまって、申し訳ありません。」
「いえいえ。全く問題ありません。もう、何年になるのかしら。あなたが来るのを待ってしました。」
「リサさん。私は今の守護者クラリスです。魔王が作る災厄と戦っています。この世界も災厄から救いたいのです。10万人くらいの人々が住んでいます。」
「私が殺せない暗黒騎士ゴードンを閉じ込めるため、自分の心を無感情にしてその中にアルバーノの心もいっしょに閉じ込めました。私の大切な気持ちと一緒に‥‥‥‥
‥‥‥‥私の魔力はそれだけで尽きてしましました。この結界を作るだけで精一杯。結界の外の私の心の世界は、魔王が自分に都合の良い世界に作り替えてしまったようです。警戒すべきでした。」
「リサさんの立場になったら、私も同じことをしたでしょう。」
「クラリスさん。あなたは大変な魔力を持っていますね。私の心を消滅させてください。この世界に連れて来られた人々は真実の因果のみちびきで、自分達がいるべき国々に帰ることができます。」
「リサさんとアルバーノさんの心はどうなるのですか? 」
「ふふふふ もう十分に長い年月、語り合うことができました。消滅しても悔いはありません。」
「ほんとうに、お2人はお似合いのカップルだったのですね。」
「私達を消滅させれば、この世界が消え、ここにいる10万人の時間が幸せになれます。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥はい。わかりました。」
「クラリスさん。あなたは私と似ている心を持っていますね。傷つきやすいから注意してください。ところで、あなたを愛し守ってくれる人はいるのですか。」
「はい。」
「そう。それならば安心。」
クラリスは詠唱を始めた。
リサもその詠唱に合わせて詠唱した。
「――――消滅せよ。」
「――――消滅せよ。」
全てが終わった後、クライスは山を下りようとした。
すると――
「おい。おい。おい。」
彼女を誰かが呼んだ。
「なんですか。」
「いにしえの最強暗黒騎士ゴードンだ。このままにしておくと、この世界に災いをもたらすぞ。」
「勝手にやってください。ただ、あなたはもう何もできません。最強の魔法使いのリサさんがたくさんの年月、あなたに何重にも魔術をかけて永久の鎖をかけています。」
「それでは、いつの日か、今の魔王に話しかけるわ。」
「まだ話すことはできるのですね。それでは、そこにも私がしっかり鎖をかけます。私のひいひいおばあちゃんの素敵な恋をじゃましたお邪魔虫、永遠に静かにしてください!!! 」
両手で最強の魔術印を結び、クラリスは最強の鎖をかけた。
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