73 第6の国の災厄4
心と体も疲れ切ってぼろぼろのリサは熟睡していた。
恋人のアルバーノがそばにいることで、彼女は夢の中で大きな安らぎの中にいた。
しかし、アルバーノの体には洗い流されなかった暗黒騎士ゴードンのわずかな血がついていた。
彼の右腕に―― 見ただけではほとんどわからないくらいの少量の血だった。
次の朝、リサは正午になるまで眠っていた。
そして目を覚ましたが、部屋に中にアルバーノはいなかった。
「アルバーノ? どうしたのかしら? 」
テーブルの上にメモが残されていた。
(‥‥仕事に行きます。朝食‥‥昼食はテーブルの上にあります。よかったら‥‥ )
アルバーノは腕の良い鍛冶師だった。
そして、数多くの騎士から剣を打つことを頼まれていた。
若いながらも名人と言われ、近年、彼の国の軍隊が強くなった理由の一つとされていた。
切れ味だけではなく、できる限り素早く剣を振ることができるように工夫していた。
その日、騎士団長から注文されていた剣ができあがったので、納めるため王宮に行った。
「アルバーノ。できたのか、名人と言われ世界中に名前が知られつつあるそちに、剣を打ってもらえるなんて、最高にうれしい。」
「騎士団長様。納品が遅くなり誠に申し訳ありません。しかし、私の今まで打った剣の中で最高級の物ができました。どうぞ御確認ください。」
アルバーノは右手で剣を持ち、騎士団長に渡そうとした時、異変が起きた。
騎士団長が剣を受け取ろうとしたのに、アルバーノは手を離そうとしなかった。
「はははは―― 私に渡したくないほど、最高の剣を打ったのか! 」
しかし、アルバーノは騎士団長以上の異常な力で剣をしっかり握っていた。
そして、彼は顔を上げて騎士団長と目があった。
暗い顔、深い闇に落ちていくような瞳で冷たく騎士団長を見つめた。
ついにアルバーノは騎士団長の手をふりほどいた。
剣が一閃せんした。
「美味しいわ。 」
アルバーノの家で、リサは彼が作った朝食を食べていた。
すると、家の前が騒がしくなった。国軍の兵士が大声で避難を叫んでいた。
「逃げるんだ! 今すぐ逃げるんだ! ここにもうすぐ魔王の家臣の暗黒騎士が来る。」
「えっ!!! 暗黒騎士って、ゴードンを倒したばかりなのに!!! 」
リサは急いで外に出て、幅の広いメインストリートの真ん中に立った。
大勢が急いで待避しているのに、若い女の子がそこに立っていることに国軍の兵士は驚いた。
「きみ。何をしているんだ。早く逃げなさい。」
「暗黒騎士が出現したのですか? 」
「そうだ。騎士団長の屋敷に突然現われた。打ったばかりの剣を振り回している。ものすごい強さだ。騎士団長他、もう何人の騎士が命を落している。」
「打ったばかりの剣!!! 」
「そうだ。暗黒騎士は我が国最高の鍛冶師アルバーノだ。刀を打つ神がかりの技術は、やつが暗黒騎士だったからに違いない。」
リサはその場に崩れ落ちそうになるのを必死にこらえた。
(どうして、どうして、こんなことに―― )
自分に残っている力を振り絞って体中の魔力を発現させた。
彼女の青色の瞳の魔眼が輝いた。
リサは、幅広いメインストリートに1人で立たなくてはいけなかった。
「私は美しき心を映す世界の守護者―― 」
やがて、メインストリートの向こう側に人影が現われた。
リサにはすぐわかった。
魔王の魔力、悪しき心を映す世界のエネルギーをやどす暗黒騎士そのものだった。
黒い甲冑に体を包んだアルバーノが歩いてきた。
暗い顔、深い闇に落ちていくような瞳で冷たくリサを見つめた。
彼女にはすぐにわかった。
怒りの炎が燃え盛った。
「ゴードン!!! アルバーノに何をしたのです!!! 」
へらへら笑いながら答えた。
「リサさん。招待状はあなたがくれたのですよ。魔王様が私に魔術をかけて、自分の血の一滴一滴に隠れることができるようにする。後は、すばらしい体を手に入れるだけです―― 」
絶望がリサを突き落とした。
彼女はその場に固まって動けなくなった。
何もできないと思った。
その時、残っているアルバーノの心が彼女に伝わった。
(リサ‥ がんばって‥ ぼくの体でもいいから魔術で滅ぼして‥ )
(あなたの命も奪ってしまうわ‥ 私に残るのは世界最高のこれまで誰も感じたことない絶望だけ‥ )
(リサ‥ この暗黒騎士がこれからたくさんの人々を苦しめ‥ ぼくの心は永遠に痛めつけられる‥ )
(わ か り ま し た ‥ )
「ゴードン。私はあなたを決して許しません。」
そして、彼女は詠唱した。
「美しき心を映す世界よ。私は守護者として、私の心を犠牲にします。この国を私の心に閉じ込めよ。絶望を感じないように全ての感情を否定できるように‥‥ 」
最後に彼女は右手で四葉のクローバーを空中に描き、それを自ら手で切った。
「私の心を犠牲に、暗黒騎士ゴードンを滅ぼす。」
美しい青に瞳にたくさんの涙をためたクラリスは、話し終えた。
「この国はリサさんの心の中に違いありません。美しき心を映す世界の守護者として最大限の魔術でした。しかし、その後、狡猾な魔王に利用されたのでしょう。たぶんですが‥‥
‥‥私達の世界から人間をさらって、この隔絶された空間に10万人もの人間を閉じ込める。その人々の以前の記憶を消し、だんだん無感情にする。」
「人間を襲わせる世界ですか! 」
「たとえが不適切かもしれませんが、戦闘訓練のための世界です。さらに、話すことも汚らわしいのですが、さきほどのコウモリのような魔族は血を吸っていました。食糧庫です。」
アーサーが強い口調で言った。
「この国は、現実世界の国とは違います。しかし、魔族が自由なことをできます。護衛も旧式の武器しか持っていませんでした。人間が魔族に全て変ってしまう国の一つです。絶対に助けなければなりません。」
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