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7 王子は辺境領地を経営する3

 アーサー王子はようやく意味を理解した。



 とても優しい口調で話し始めた。



「フレイヤさん。すぐにお帰りになられて全く問題ありません。お父上のロードリック市長の方には、私からきちんと説明します。お気を使わせてほんとうにすいません。」




 そして、細やかな感覚で相手を思いやることができる王子は、フレイヤの心の底も感じとれた。




「早く、大切に思われている方にお顔を見せてあげてください。」




「…………」




「私は、フレイヤさんがお帰りになられても、絶対に気を悪くするようなことはありません。コンラッド王家の名誉にかけて近います。」




「アーサー王子様、ありがとうございます。」


 泣きそうな顔をしたフレイヤは、アーサにおじぎをして出て行った。








 次の日の朝、アーサーは市長の館を出て領主の館に向かった。


 館を出る時に、市長が厳しい顔をしながらアーサーに聞いた。




「王子様。昨晩はほんとうによかったのですか。おもてなしせず、御無礼ではなかったのですか。」




「はい。だいじょうぶですよ。気になさらないでください。」




 アーサー王子の一行は、州都ハイデのメインストリートを歩き、領主の館に向かった。


 やがて館にたどり着くと、門の前にかなり大きな体の騎士がひざまづいて待っていた。




「王子様。誰だかわかりませんが、門の前で王子様を待っている者がいるようです。」


 真っ先に気がついた相談役のショウがアーサに報告した。




「敵意はなさそうです。事情を聞いてみましょう。近づいても問題ないでしょう。」


 アーサー達は馬を進めて門の前で立ち止まった。




 ショウがひざまづいている騎士にたずねた。




「そこにひざまづいている騎士殿、ここにいらっしゃるのはこのたびゴガン州の領主として赴任なされたゴード王国第3王子アーサ様でいらっしゃる。何か申し出たいことがあるのでしょうか。」




「おそれながら、アーサー王子に切なる願いを申し上げたいのです。私はメイナードと申し、この州都ハイデの近くに荘園をもっております騎士でございます。」




 それを聞いてアーサは想い出した。


 敵国が侵入してきた今回の戦いで、勇敢に先駆けをして戦った騎士がいた。




 その騎士は長槍をたくみに使い、優れた技で敵の勢いを大幅に削減させた。




 よく見ると、ひざまづいている騎士の横には極めて長い槍が置かれていた。




「騎士メイナード、遠慮はいりません。おっしゃってください。」


 アーサーはメイナードが願いを申し出ることを許した。




「はい。ありがとうございます。私が今までこの槍を使い強さをみがいてきたのは、英雄につかえ偉業の達成を支える礎いしずえになりたいからです。是非、私を御家来のはじにお加えください。」




「わかりました。今から、我が配下に加わってください。」


 アーサーはすぐに了承した。




「えっ! 」


 それには、メイナードの方が大変驚き感動した。




「すぐに御了承をいただき、これ以上の喜びはありません。」




「我が国で最も優れた武人の名誉は、最大限に重んじなければなりません。これからも危ないことがあったら私を救ってください。」




「王子様からいただいた名誉に応え、これから永遠に全力を尽くしてお仕えします。重ね重ね、王子様からいただきました深い心づかいに感謝申しあげます。」




 アーサー王子とメイナードのやりとりの様子を、遠くの方から見ていた娘がいた。


 フレイヤだった。




 アーサーはそのことにふと気がついて、全てを一瞬で悟り微笑んだ。








 それから、アーサー達は領主の館の中に入った。


 中は豪勢な作りだった。




「ショウ。この部屋に入ると、王宮にいるのではないかと錯覚してしまいますね。」




「はい。前線の領主の館には不要なものばかりです。逆に心配なのは、必要な物はあるのでしょうか。兵糧倉庫や武器庫を見て見ましょう。」




 それから兵糧倉庫を確認すると、備蓄されているものはほとんどなかった。


 武器庫も同じような状況だった。




「う――ん。これはいけないな。」


 アーサーは思わずうなってしまった。




「ショウ。私の配下の第3国軍の配備は1か月後ですね。」




「そうです。ですから、それまでには兵糧と武器をそろえなければなりません。王都イスタンにある国庫から分けていただき、第3国軍の配備と合わせて備蓄するのが普通ですが……」




「ただ1か月間、どうするかということですね…… 領地を接しているランカスター公爵から必要最小限、貸していただきましょう。明日早々に私がお願いに行きます。ショウ、留守は任せました。」




「王子様。お一人でいかれるのですか。いかに王子様といえでもお一人で行かれるのは危ないです。何人か護衛をお連れください。」




「いいのです。現在の兵力は100人あまりですので、分散させたくありません。メイナード1人が一緒に行ってくれれば十分です。」




「そうですか。武芸の達人が2人いれば恐い物なしということですね。」








 翌日アーサー王子と騎士メイナードは、領地が隣のランカスター公爵の城に向けて出発した。


 メイナードが言った。




「王子様。私をたった1人の従者に選んでいただいてありがとうございました。」




「メイナードのような槍の達人の護衛があれば安心です。よろしくお願いします。」




「はい。」




「ランカスター公爵の城までは、馬で1日ほどかかりますね。あっ! お昼のことを忘れてしまった。途中で狩りか釣りをする時間もないし。」




「王子様、大丈夫ですよ。私が2人分のお弁当を持って参りました。」




「そうですか。ありがとうございます。もしかして、フレイヤさんが作ってくれたのですか?」




「すべてお見通しなのですね! 今日の朝、フレイヤが渡してくれました。王子様の分と合わせて2人分を作ってくれたのです。」

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