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68 第5の国の災厄5

 暗黒騎士ソウヤはそこに倒れた。




「クラリスさん。ヒール魔法で治してあげることはできますか。」




 クラリスは首を振った。




「アーサー王子様。ヒール魔法は、魔法をかける人の心に働きかけるものです。今、自分を刺した暗黒騎士のソウヤに魔術の効果が現われるかどうかは??? 」




「そうですか…… 」




「戦いの中でこのような結末を迎えてしまいました。どういう理由があったにせよ。魔族の国にするため強い人間から順に、魔族に殺させようとしたことは許されることではありません……




……ただ最後は、自分自身の考えや行ったことをとても反省されたのですね。それに、暗黒騎士になった悲しい理由があります。自信は全くありませんが、私は精一杯の力を尽くします。」




 クラリスは、ヒール魔法の詠唱に入った。








 ソウヤは、この世界の海洋にあるクレハ島を統治している騎士団の騎士の子供として生まれた。




 父親のライザは、騎士として剣さばき等に優れた素質を持ち、騎士団の中でも最強と呼ばれていた。




 彼もその素質を受け継ぎ、自分が知っていることを全て伝えようとする父親の元、ほんの小さな頃から習練に励んでいた。




 ある日のこと、魔族討伐に出かける英雄が自分のサポートを集めるため騎士団の島を訪問した。




 200人いるクレハ島の騎士全員が、大講堂に集められ英雄の説明を聞くことになった。




 英雄はまだ若者だが相当な剣の腕をもち、これまでも多くの魔族を討伐していた。




「お願いします。クレハ島の騎士達、私に協力してください。この島に近い大陸の海岸地方に、多くの竜人が住み着いてしまいました。竜人は繁殖力が強い。1年たったら海岸地方の大部分を支配するでしょう。」




 ライザが手を上げて質問した。




「英雄様。確か海岸地方はとても低い土地、たびたび浸水するので人間の居住地に適してしません。竜人がそこで繁殖しても全く問題ないでしょう。」




「あなたは、騎士団の中で最強と呼ばれているライザさんですね。失礼ですが、お考えは間違っています。たとえどのような土地であろうとも、この世界中の土地は神が人間に与えたものです。」




「まさか。神が人間と契約書を結んだりはしないでしょう。確認できないことは根拠になりません。竜人を討伐しようとなさっていますが、彼らも人間と同じように生きる権利があるのです。」




「お――――っ 」




 英雄が騎士団を引き連れ竜人の繁殖地を攻撃すれば、人間、竜人、双方に多数の犠牲が出る。




 ライザだけではなく、多くの騎士が英雄に反対していた。




 そのような空気を感じ取ったのか、英雄はある物をふところから出し騎士達に見せた。




「これは、教皇様の勅旨です。竜人討伐を私に御指示されています。この島の騎士団のみなさんも教皇様の聖なる教えを守る信者であると聞いていますが。これは聖なる戦いなのです。」








 最終的にクレハ島の騎士団は、英雄の味方としてサポートすることになった。




 戦いには、島から帆船に乗って出撃した。










 海岸地帯についた途端、竜人達が襲ってきた。




 英雄がライザに言った。




「どうですか。ライザさん。この竜人達は人間より知性が大変劣り、闘争本能しかないのですよ。こうやって、討伐して正解です。」




 最初―― 英雄と騎士団は竜人を次々と剣で斬り殺していった。




 しかし、竜人達の中で最初に戦いを挑んできたのは、年老いて弱っている者達ばかりだった。



 戦いの中でライザにはとても不思議に思うことがあった。




 戦いに挑み死んでいく、年老いた竜人達が穏やかな笑った顔をしていることだった。




(どうして? )




 やがて、その理由がはっきりとわかる時がやってくる。








 討って出てきた竜人がパッタリと途絶えた――――




 英雄が自信満々に誇らしそうに叫んで騎士達を鼓舞した。




「我々は勝ったぞ! これよりもっと内部に入り、竜人達の住居を焼き尽くして二度と住めないようにするのだ! 」




 その時、英雄と騎士達の前にとても小さな子供の竜人が姿を見せた。




 その子はこちらを精一杯威嚇いかくする顔でにらみつけた。




 そして一目散に奥に逃げていった。




 これには、英雄や騎士達が心の底から怒り、後を追いかけるように突撃した。




 ただ、ライザの心の中では何かが導き出され、そして大声で味方に告げた。




「だめです!!! これは計略です!!! 後を追って奥に進んではいけない。!!! 」




 ライザは精一杯味方を止めたが無駄だった。




 味方の突撃のかん声は、悲鳴に変った。




 奥に入り込んだ袋小路の空間で、英雄と騎士達は囲まれた。




 それは、若い竜人達で体の大きな強い集団だった。




 強い集団は、人間の剣とほとんど遜色がない竜の牙で作られた剣を振るってきた。




 そして切れ味十分の重い剣を人間の何倍も早く振り、英雄と騎士達に戦いをしかけてきた。




 たちまちのうちに、騎士達の半分が倒れ命を落した。




 英雄と残りの騎士達は、その場でこらえていたが、だんだんそれも危うくなった。








 竜人達の中でも特に背が高く体が大きい、竜人の長が英雄に戦いを挑んできた。




 長は英雄より桁違いに強く、自分の一族を守ろうとする責任感が強かった。




 だんだん英雄は押され、敗北が近づきつつあった。




 ところが、途中でその戦いに割って入り、長と対峙して一気討ちを始めた者がいた。




 ライザだった。




 彼は、竜人の長と対等に戦い始めた。




 竜人達はそれを見て驚いた。




「長と対等に戦える人間がいるのか!!! 」




 彼らはその戦いを見ようと熱中した。




 その結果、英雄と他の騎士達にかかっていた圧力が消えた。








 英雄が信じられないことを叫んだ。




「逃げろ。撤退だ。今のチャンスを逃すな―― 」






 騎士達はその指示に抵抗した。




「まだライザが戦っています。あの大きくて強そうな。あなたでもかなわなかった竜人と。」




「いいのだ。ライザは捨てろ。私と多くの騎士の命を助けたのだから、名誉の死を迎えるだろう。」




 竜人の長と戦いながら、ライザには英雄のその言葉が聞こえた。




(何が英雄だ。自分の名声のことしか考えない最低の人間………… )




 ライザがそう思った瞬間、竜人の長の重い剣で彼は切られた。




 そして永遠に意識を失った。

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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